“サウナの本場”から持ち帰ったもの「サウナヘヴン草加」の魅力③

目次

自分の平穏のためにも、お互いを尊重し合う……「オマ・ラウハ」の精神って?

「また、これも素晴らしいことに、なんて言うか……みんなが同じ意識を共有している気がするんです。“お互いを尊重して、心地いい空間にしよう”みたいな意識を。

『コティハルユ・サウナ』では、すごく大きなラドルでロウリュを……およそ大ジョッキ1杯分くらいの水をかけるんですけど、そうすると“ジュワ〜ッ”って、かなりの量の蒸気が上がるんですね。

不思議なことに、ロウリュされる前までは、それぞれ近くの人と世間話とかを交わしていたとしても、蒸気が静かに上から降りてくると、みんな黙るんです。シ〜ンとする(笑)。で、そのロウリュがいったん落ち着くと、『それでさぁ……』みたいにまた喋りだすんですね。それもなんだか可愛らしいな、って思って」

――ふふっ。たしかに。

「同じ空間に居合わせた人たちが、自然に同じニュアンスというか空気感、価値観を共有しているんですよね。誰か一人がルールを作ったり、指示したり、施設が強制したりということもなく。ごく自然に。

実はフィンランドには『OMA RAUHA』(オマ・ラウハ)という言葉というか概念があるんです。“OMA”は“自分の”、“RAUHA”は“平穏”という意味なんですが、『自分が平穏』であるためにも、みんな『互いに平穏』であろう。つまり『お互いを尊重し合おう』といった考え方なんです」

――互いにやさしく、ハッピーになろう、みたいな。

「そうです。他者への“寛容さ”というか。他者を尊重したり、気にかけあうこと。フィンランドの社会に根付いているそんな概念が、サウナでも現れているのかな、って感じられたんですよね。

僕たちも『コティハルユ・サウナ』のサウナ室で、きっと地元の方たちから『見知らぬ顔だな』と思われたでしょうけど、いろいろ気にかけて話しかけてもらいました。サウナ室を出るとき、ちょっと緊張しながらロウリュをしたときも、もちろん笑顔で『キートス!』と言ってもらったし。

『ヤパニスタ?(日本人かい?)』と聞かれたときは嬉しかったですよ。(座面の)コンクリートが熱くて驚いていたときには、『そこにある木のスノコを尻の下に敷くんだよ』って、ジェスチャー混じりで優しく教えてもらったり」

――その考え方、発想を「サウナヘヴン草加」でも大切にしよう、と。

「はい。その精神性はぜひ日本に持ち帰りたいなと思いました。それで僕らも、店の入口=エントランスに大きく『OMA RAUHA』という言葉を掲げているんです」

この空間を持って帰りたい。僕らの店でも提供したい!

――ほかにも「サウナヘヴン草加」のさまざまなエリアで、この「コティハルユ・サウナ」だったり、フィンランド式公衆サウナの特徴というか魅力を感じます。たとえばロッカールームとか。

「コティハルユ・サウナ」にて
(写真=岡見さん提供)

「そうですね。『コティハルユ・サウナ』では、小窓のある受付を抜けると男女それぞれ更衣室へと進みます。そこからシャワーを浴びて、サウナ室へ入っていくというつくりです。

サウナ室でじっくり蒸気を浴びて汗をかいたら、シャワーで流して、その後、休憩をするんですが……受付を出て、お店の前で外気浴をするか、この更衣室で休憩をとるか。ロッカーの下部がベンチになっているので、そこに腰掛けて休んだり、雑談したりもするんですよ。

この、更衣室で人々が憩う姿もとても印象的で。これもまたいいなぁ、と」

上2点ともに「コティハルユ・サウナ」にて
(写真=岡見さん提供)

――更衣室もロッカーも。シンプルで機能的だけど、あたたかみがありますよね。

「はい。同じようにベンチ付きのロッカーを向かい合わせにレイアウトしたのも、まさしくフィンランドでのサウナに集う人々の関係性がすごく良かったからです。ああいう空間を僕たちも提供できたらと思ったんですよね」

1 2 3
シェアお願いいたします
  • URLをコピーしました!
目次