“サウナの本場”から持ち帰ったもの「サウナヘヴン草加」の魅力③

2023年12月25日に埼玉県草加市にオープンした「サウナヘヴン草加」。

広いサウナ室は、多くのサウナ施設とはちょっと異なるレイアウト。さまざまな形状のベンチがあつらえられ、利用者が“自分の好きなスポット”、“異なるアツさの体感”をそれぞれ楽しめるつくりになっています。
また、水風呂や内・外気浴を楽しむエリアなど、店内の随所に利用客の快適さをイメージした工夫が! 

日本のさまざまな施設でサウナの心地よさを知り、さらにはサウナの母国=フィンランドで愛される公衆サウナをめぐったというオーナーや店長のこだわりが強く感じられる施設です。

そんな同店の魅力を深掘りすべく取材したシリーズ特集の最終回。3回目となる今回は、前回に続き店長の岡見知彦さんへのインタビューをお届けします。

テーマはずばり「サウナヘヴン草加」に込められた思い。実は岡見さんたちにはフィンランドの公衆サウナで“これを日本に持ち帰りたい”。そして“僕たちもこんなサウナを提供したい”と強く感じた出会いがあったそうです。果たしてそれは……?
(※「1回目」=前々回記事では豊富な写真とともにサウナ室、水風呂、休憩スペースなどの詳細&魅力を、「2回目」=前回記事では日本のサウナのみならずフィンランドのサウナを訪ねた経緯と得た気づきなどについて掲載しています。←未読の方は、ぜひあわせてお読みください)

目次

ヘルシンキ最古といわれる公衆サウナで感じた「大切なもの」

――岡見さんたちは、フィンランドの首都ヘルシンキ、そして「世界のサウナの中心地」とも称される第2の都市タンペレで数々の公衆サウナを訪ねて、あらためてフィンランド式公衆サウナの心地よさに魅せられたとのことでしたが。

「そうですね。やはり僕たちは、“蒸気浴”の気持ちよさが好きだったんだということを再確認させられました。そしてその秘密というか重要な要素として、換気の仕組み……給気(吸気)と排気について、フィンランド式サウナから多くを学ぼうと再認識。じっくり観察したり、資料になりそうな本もたくさん買い込んできました」

――現存するフィンランド最古の公衆サウナといわれる「ラヤポルッティ・サウナ」などの歴史のある施設から、新しいサウナ施設……おしゃれでアーバンな施設まで、さまざまなタイプの「街のサウナ」を訪ねられた。

「歴史があって、すごくローカルで、どちらかというと利用客の年齢層も高めの施設。逆に、若者がカジュアルに訪れる施設やラグジュアリーな最新鋭の施設。対極的な部分もありましたが、どちらのタイプの施設でも、人々とサウナがとても密接な関係にあることはまさに肌感覚で感じましたね。

そんな中で、渡航前からいちばん行きたかった公衆サウナが、ヘルシンキの『コティハルユ・サウナ』という施設だったんですが……実際に訪問したところ、やっぱり最高でした。個人的には最も印象に残っていますし“あぁ、こんなサウナを日本に持ち帰りたい”と心から思いましたから」

「コティハルユ・サウナ」
(写真=岡見さん提供)

――ヘルシンキに現存する最古の公衆サウナですね。「サウナヘヴン草加」の看板や店頭の雰囲気に、この「コティハルユ・サウナ」へのリスペクトを強く感じます。

「おっしゃる通りです(笑)。本当に“自分たちがやりたいのはこういうサウナだ”と。先ほども言った換気の仕組みみたいな“機能性”とともに、実は“精神性”みたいな部分でも、この施設には大きく影響を受けましたね」

「コティハルユ・サウナ」
(写真=岡見さん提供)

自分以外……誰かのためのロウリュと「kiitos!」=感謝の言葉

――“精神性”と言いますと……?

「比べるというわけではないですけど、ほかのどのサウナよりも、利用している人の“日常”に溶け込んでいる雰囲気が感じられたんですよね。そして何より感動したことがあるんです。このサウナでは、皆さん、サウナ室から出ていくときにストーブにロウリュをするんですね」

――はい。

「そうすると、そのロウリュに対して、みんな必ず『kiitos!』(キートス=「ありがとう」の意)って言うんですよね。サウナ室内にいる全員が必ず感謝を口にするんです。知り合いだろうが、知り合いじゃなかろうが。それを何回も目の当たりにして“いいなぁ……”ってちょっと感動しちゃったんです」

――サウナ室を出るときにロウリュをするというのは、フィンランドの他のサウナでも一般的なんですか?

「他では、僕は目にしませんでしたね。ここだけでした。この『コティハルユ・サウナ』はサウナ室がわりと大きめで。そして扉を入ってすぐのところに、やっぱり巨大なストーブがありまして。その先にコンクリート造りのベンチ=座面があって、そのひな段のさらに上にメゾネットの形でスペースがあるんです。

そこがいわゆる“熱気だまり”で多くの人がそこに座るんですが、その位置からはロウリュができないんですよ」

――はい。

「だから『コティハルユ・サウナ』では、ストーブの前を通る人……たとえば新しく入ってきた人がかけるか、サウナ室から出ていく人が水をかけるんですね」

――なるほど。構造上、座っている人は自分ではロウリュができない。

「そうなんです。それもあって、座っている人がみんな『キートス!』って言うのかなって。もうサウナ室を出ていくのに、残っている俺たちのために気持ちいい空間にしていってくれて……その感謝の『ありがとう』なんですよね」

――なるほど。素敵な習わしというか、素敵なカルチャーですね。

「はい。その価値観というか考え方が本当に素晴らしいなと思って、『サウナヘヴン草加』でも、サウナ室を出るときに“ほかの皆さんに向けてロウリュする”というスタイルを提案することにしました」

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