友野一希「スケートときどきサウナ」-第5回/最高の幕開け!? 「2023年はこんな1年に!」

2023年3月に行われる世界選手権への出場も決まった友野一希選手。見る者をぐいぐいと引きこんでいく豊かな表現力で、今年も世界中のフィギュアスケートファンを魅了してくれるはずです。

そんな友野選手、実は知る人ぞ知る“サウナ好き”でもあります。パフォーマンスと同様、ついつい聞き入ってしまう友野選手のサウナにまつわるトークを、毎月1回、お届けします!

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全日本選手権の表彰台は……サウナでの「悟り」の賜物かも!?

――あけましておめでとうございます!

「あけましておめでとうございます。毎月1回のサウナのトーク、僕にとってかなり楽しい時間なので、今年もどうぞよろしくお願いします!」

――そう言っていただけると、めちゃくちゃうれしいですね。こちらこそ、よろしくお願いいたします。というより、まずは12月の全日本選手権、ついに表彰台に上がられました。

「そうですね。スケーターとしてずっと大きな目標にしていたことのひとつだったので、僕自身、とてもうれしいです」

――演技の間もそうだったんですが、フリーを滑り終えてのキス・アンド・クライのとき……見ているこちらも思わず拳を握りしめていました(笑)。

「え~っ。そうなんですか(笑)。ありがとうございます! でも、僕自身は落ち着いていたというか。ちょっと失敗はあったけど、やり切ったなっていう感じのほうが強かったですね。だから『点数は後からついてくるもの』みたいな思いで、それよりは『がんばったな、耐えたな』みたいな、ある種の充実感でいっぱいだったというか……」

――耐えた。がんばった。

「そうですね。11月のNHK杯が終わってから全日本まで準備期間がしっかりあって、その間は……特に12月に入ってからは毎日、試合を想定した練習を行っていました。本当に毎日が試合だと思って自分を追い込んできたので、その充実感というか。ちょっとした“悟り”を開くくらいまで行きましたからね」

――試合を想定した練習というと?

「もう、最初に試合と同様に、リンクに着いてウォームアップをしたら6分間練習をして、ちょっとだけ時間をおいて曲をかけての4分間、という風に。本当に集中しての実戦想定で、という繰り返しです。そして、足りないところを見つけては課題を修正していく、っていう」

――「体に覚えさせる」というか、「覚えざるを得ないくらい」というような叩き込み方、追い込み方?

「そうですそうです」

――なんだか、聞いているだけで張り詰めた日々だったのではないかってイメージしてしまいます。

「でも、練習以外では逆に『ちゃんと日常を過ごそう』というか、思い詰めないようにしていました。だからサウナもちゃんと行っていましたよ(笑)」

――なんか、それを聞いてちょっと安心しました。

「12月は……『なにけん』(「なにわ健康ランド 湯~トピア」)に結構行ってました。サウナ好きの友人と、彼らの会社帰りの時間に待ち合わせたり、なんてこともしましたね」

――「なにけん」はどこがお気に入りポイントですか?

「去年もリニューアルをされたんですけど、『なにけん』はパワーアップぶりがすごいんですよ。メーンのサウナ室は、座る場所によって温度の違いが楽しめますし、湿度もあるからすごく気持ちいいし。あのバズーカみたいな熱波のサービスもめっちゃ好きなんで。ポジションどりとかを含めて、いろいろ組み合わせられるのがいいんですよね

でも僕は、そことは別の『メディテーションサウナ』というサウナ室の方がどちらかというと好みで、よく入ってました。セルフロウリュ()ができて、室内の明るさも抑えられているので、かなり集中もできますし」

(※ ストーブの上で熱くなったサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させること。その蒸気の熱さにより、体感温度も発汗効果も一気にUP)

――あ~、あのサウナ室も気持ちいいですね。

「リニューアルされて、僕的にもすごく好みのタイプだったので、めっちゃありがたいなって。アツい風が吹かせられるボタンがあるんですが、それは変わらずあるので、そこもうれしいポイント(笑)。かなりあのサウナ室に入り浸ってました」

――水風呂ももともと広いのがありましたが、そこもリニューアルでパワーアップしたって聞きました。

「そうなんです。深い水風呂が、もう一つできたんですよ。めっちゃ手作り感があるんですけど、水深が140cmくらいあるのかな。深いから全身がすぐにキュ~って引き締まります。そのあとに、あの横になれるスペースでふわ~って休憩をする。12月は、かなりお世話になりました(笑)。

あ、リニューアルでもうひとつサウナ室ができて、そこでは、僕はまだ受けていないんですがウィスキング()もできるらしいんです。それもやってみたいなって思ってます」

(※ 「ウィスキングマイスター」と呼ばれる施術師が、白樺やオークなどの枝葉を束ねた「ウィスク」(=ヴィヒタとも呼ぶ)で体を軽く叩いたり、押し付けたり、撫でることで体を芯からあたためるトリートメント)

――たしかに、めちゃくちゃパワーアップしてますね。すごい!

「あの、ブルーのアロハ調の……クセ強な館内着も好きですし、料金も高くないし、ご飯も美味しいですしね。『なにけん』、やっぱり好きです。

あとは、『大東洋』とか、近所の銭湯とか。淡々と『サ活』はしていました」

――練習で自分を追い込む分、逆にサウナで「解放」されていた、みたいな感じもあったんですか。

「はい。まさしく。やっぱり試合が近づいてくると、どうしてもプレッシャーというか、精神的にも余裕がなくなることもあるんですね。やはり『追い求めすぎてしまう』みたいなことって出てくるのかな、がんばればがんばるほど、理想は高くなっていくので。

実は今回も、全日本の1~2週間前くらいに、そういう意識が強くなってしまった時期があったんです。出来ているのに『なんか違うな、なんかダメだな』って思ってしまう日があって。『これはいけない!』って思って、次の日に1日完全にオフにした日がありました」

――もう練習を休もう、みたいに?

「はい。もうスパっとその日は休んで、やりたいことだけをしようと。買い物をしに行ったりして、最後はサウナにじっくり入りました。で、そのサウナにかなり救われたなっていうのが、今回、実感としてあるんです」

――救われた?

「はい。そのサウナは、ある銭湯のサウナなんですけど……。熱いサウナ室から出て、熱めの温泉の浴槽、45℃くらいのお湯にさらに浸かって、そのあと水風呂へ行くっていう、『超交代浴』をやってみたんです」

――なんか、追い込んでます(笑)。

「脳筋プレーでやってみました(笑)。もちろん、皆さんにはおススメしません(笑)。けど、それが良かったのかな。アツい、からのアツい、のあとの冷たい……。やっているうちに、なんだか、本当に“悟り”を開いた感じになったんです。

ジャンプもちゃんと綺麗に降りれているのに不安になってしまったりしていたモヤモヤが一気になくなって。無になったというか、開き直ったというか。

仮に失敗したとしても……それを怖がって不安になり過ぎるのは馬鹿馬鹿しいじゃないか、ってなれたんですよね」

――うわ~。すごい話です。「振り切る」のにサウナが大きな役割を果たしたんですね? でも、それも前提として「やれる練習はすべてやった」という努力があってこそ、ですよね。

「もちろんそうですが、でも、サウナに入るという行為がなければ、その心境には達せなかったかもしれないんで。大げさかもしれないですけど(笑)、ちょっとサウナに助けられたなっていうのはあります。

その『空白の1日』以来、調子がバーンって良くなって、そのコンディションで全日本に臨めたんで。メダルどうこうとか、点数どうこうとか、そういうものも含めて、マイナスの感情から助けてもらったという」

(次ページ:全日本選手権後から年明けまで……いい仲間とのサウナは最高)

いい仲間たちとのサウナは最高……「大東洋」で再確認しました!

――全日本選手権のあとは、どうされたんですか?

「『大東洋』さんへ行きました。あ、コレがそのときに撮った写真です」

――うわぁ、いい写真ですね。コレ。一緒にいらっしゃるのは島田高志郎選手と山本草太選手ですね。

「はい。3人で行きました。競技自体が終わった翌日も『メダリストオンアイス』があって、もう本当にヘトヘト、ふらっふらなんですが、『行こうか』って言って(笑)。互いの健闘をたたえ合いつつ、みんな倒れるようにととのいました(笑)」

――倒れるように(笑)。

「草太なんか、いつものように爆睡です(笑)。僕も高志郎もですけど、本当に心身ともに疲れのピークですから、ひょっとしたら健康的には良くないのかもしれないけど……やっぱり全員、やり切ってますからね。それぞれ、結果や演技の内容について思うことはあるんだろうけど、まずはやり切ったことをたたえ合う。そんな仲間がいて、本当に良かったなって思ってます」

――友野さんと山本選手は世界選手権、島田選手は四大陸選手権。3人とも、本当にがんばってほしいです。

「そうですね。草太もずっと一緒にがんばって来たから、世界選手権に選ばれて僕もうれしかったし、高志郎も初のチャンピオンシップスを勝ち取って、やっぱりこれもすごくうれしい。2人ともがんばってほしいし、もちろん僕も、今年の世界選手権でも……去年以上の演技をしたいなと思ってます」

最高の年越しサウナで明けた2023年。こんな1年にします!

――年末年始はゆっくりされたんですか?

「そうですね。はい。実は今年(2022~2023年)も、昨年(2021~2022年)に続いて『神戸サウナ』(「神戸サウナ&スパ」)で年越しをしました。今年はスケーター仲間が、すごくいっぱい集まってくれて!」

――ひょっとして、友野さんがみんなに呼びかけるというか、「サウナ年越し」を主催されたんですか?

「主催っていうワケじゃないですけど(笑)、2021~2022年の年越しが最高過ぎたので、『また行きたいな~』って言っていたら、太一(本田太一さん)が『いいね~』って、まず一緒に行くことになって。気が付いたら関西のスケーターがいっぱい一緒に行くことに!」

――すごい! 本当にお話を聞くたびに、いい仲間たちだなって思います。

「僕もそう思います(笑)。で、年越しのときに『サウナを愛でたい』(BS朝日)っていう番組あるじゃないですか? アレを見ながら、館内に居た多くの方々とも一緒にカウントダウンと乾杯をして。いやぁ、いい年越しでした!」

――いいですね。

「あの番組に支配人さん……総支配人さんですかね、津村さん(※津村浩彦総支配人)も出ていらっしゃったじゃないですか。その津村さんのはからいで、なんと『スマホをもってらっしゃる方、写真を撮りますよ』って、スタッフの方に撮っていただいたのがこれです」

――うお~っ、コレもいい写真ですね。「フィンランドサウナ」の前で、皆さんサイコーの笑顔です!

「特別の日だからって、撮ってくださいました。そういうホスピタリティーというか、心配りもうれしくて。津村さんは自らドリンクを配られたり、皆さんとの記念写真にも応じていらっしゃって、『アレ? 画面に映ってる人がココにもいる!』みたいな不思議な光景も面白かったです(笑)」

――「神戸サウナ」は、やっぱり最高ですね。そして皆さんの表情もいい!

「もう、本当に感動しましたし、『一生を神戸サウナに捧げてもいいな』って思いました(笑)。翌朝も早くから……いつ寝てるんだろうって思ったんですが、朝起きて、朝ご飯に行ったら、またそこでもめっちゃ笑顔ですでに接客されていて。一人一人に『今年もよろしくお願いします』って。お正月からすごくいい気分にさせていただきましたし、集まった全員で『来てよかった~』って言い合いましたね」

――この写真も素敵です。いわゆる「サウナ納め」と「サウナ初め」も、もう元日に済まされていた、と。さて、そうして明けた2023年は、どんな1年にしましょうか?
 
「あ、締めの質問っぽいですね(笑)。え~っと、今年は……やっぱり前に進み続ける1年にしたいですね。去年は全日本で表彰台に上ることができて、そういう結果としても『一歩くらいは前進できたかな』という思いはあります。
 
でも、まだまだどんどん、殻を破っていきたい。より登り続けるっていうのを目標にしたいなって思っています。止まることなく」
 
――具体的な試合としては、やはりまずは「世界選手権」?
 
「そうですね。まずはそこでもう1度、殻を破りたいですね。そのためにも、また練習やアイスショー……毎日をちゃんと。階段を一つ一つ踏みしめて前に進むだけです。
 
『世界選手権』を終えて、今シーズンが終わっても、次の目標に向けて進み続けたい。成長しながら、しっかり安定感も身に着けて、自分自身も応援してくださる方も、もうハラハラさせたくないなっていうふうに思います(笑)」
 
――スケーターとしての目標は了解いたしました。では、本当に最後の締めの質問ですが……サウナ好きとしては、2023年はどんな年に?
 
「あははっ。サウナ好きとしてですか? う~ん。これも『進み続ける』ですかね(笑)」
 
――「殻を破り続ける」でもいいかもしれないですね(笑)。全日本選手権の前に編み出した「超交代浴」のように、違う楽しみ方、入り方を見つけたり。
 
「そうかもしれない(笑)。でもまぁ、進むことによって、サウナがくれる『安心感』とか『安定』みたいなものに改めて気づかされる機会になるかもしれないですし、いろんなところに行ったり、新しい楽しみ方に出会えたら、もしかしたら自分の中で新しい気づきや定番に巡り合えるかもしれない。だから……新しいサウナにもたくさん行ってみたいとも思います」
 
――友野さん、25歳になられますよね。その年齢にちなんで、25カ所くらい、新しい施設に行かれてみたら?
 
「それいいですね(笑)!! ぜひ、SAUNA BROS.さんおすすめのところも教えてもらえたらと思います! あ、でも25カ所って……結構、大変かも?」
 
――単純に、ひと月あたり2カ所くらいの新規開拓ペースになりますからね(笑)。
 
「まぁでも……それを目標に進み続けたいと思います(笑)! あらためて、今年もよろしくお願いします!!」

【友野一希(ともの・かずき)】
 1998年5月15日生まれ。大阪府出身。4歳よりスケートを始め、ジュニア時代から表現力の豊かさには高い評価が。見ていて楽しくなるその演技で“氷上のエンターテイナー”“浪速のエンターテイナー”と称されることも。2021-22年シーズンには、四大陸選手権で2位、世界選手権で6位。今シーズンもさらなる高みを目指す。世界選手権は3月23日~26日に開催(さいたまスーパーアリーナ)。

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