購入した新居に一度も住まず……。“黄金湯”店主・新保朋子さん直撃インタビュー!! #2この私が銭湯の店主になるとは!

錦糸町にある黄金湯。都内初の泊まれる銭湯となり朝湯をスタートしたことは、前回(#1黄金湯お宿・朝湯ついにオープン)お話ししましたが、今日は黄金湯の店主として、新しいアイデアと行動力でサウナファンを惹きつけている黄金湯の店主・新保朋子さんにお話をお聞きしました

――黄金湯の店主になったのはいつですか?

2018年です。前の経営者の方が80歳を過ぎて、体もきつくなり引退するというので引き継ぎました。大規模改修までの1年間営業して、当時は1日のお客さんの数が少なくて。でもちょっと何かしたら変わるかな、という期待感もありました。(黄金湯店主・新保朋子さん 以下同)

――1年はまずお客さんの様子を見るという発想がまるでデキるコンサルのようです!

いえいえ、全然そういう勉強もしていないですよ。ただ夢中で1年間やっていただけなんです。毎日の一生懸命やっているなかで感じたことです。大黒湯とは全く違う感覚でした。

――大黒湯といえば、黄金湯に貼ってあるポスターにも「姉妹店 押上温泉大黒湯」と書かれていましたが……。

大黒湯は夫の実家なんです。夫はもともと銭湯ではなく別の商売をしていました。それに次男でしたから、銭湯は継がないと思っていました。それが結婚する直前に、大黒湯を今後どうするかという話になって。もう閉めてマンションにしようという話もありました。でも夫も私も、ここまでやってきたのに、先代が築いた銭湯を残したいと思い、私たちでがんばろうと、夫が大黒湯を継ぐことになりました。それで、私も一緒に銭湯をやっていくことに……。

――では、もともとは銭湯を経営する予定ではなかった⁉︎

全然予定していなかったです(笑)。有難いことに今こうして黄金湯の店主をやらせていただいてますが、銭湯で働くとすら思っていませんでした。実は、結婚後のマイホームを買ってあったのですが、大黒湯を継ぐことにしたので、結局新居には1日も住んでいません。

――素晴らしい決断! 大黒湯を継いだのはいつ頃のお話ですか?

スカイツリーが建った年、2012年のことです。スカイツリーができたから、お客さんが増えると思ったら、減っていくんですよ。マンションが増えて、平屋の家が減って、常連のお客さんが減っていって。

――マンションができても銭湯に来るお客さんは減ってしまう……。

それで何かテコ入れをしないと、ということで、露天風呂の改修やオールナイト営業を始めました。それまでは深夜0時30分までの営業時間だったのを翌朝10時までにしたんです。9時間半、営業時間を延ばしたのですが、深夜は最初20人くらいしかお客さん来なくて(笑)。でも、だんだんとお客さんが来てくれるようになりました。

――大黒湯はお客さんが増えてきましたが、引き継いだ当時の黄金湯はお客さんも少ないし「もう銭湯を閉めてしまおう」とは思わなかったですか?

「そんなにがんばらなくていいんじゃない」という意見はありました。でも黄金湯は何十年も前から営業してきたお店だし、続けていきたい、という気持ちが強かったです。

――黄金湯は開業してどのくらいなのでしょう?

約90年ですね。ここの建物は35年経ちます。ご近所の方が古い写真を持っていて、この間見せてくれました。その時の黄金湯は一軒家で、写真に写っている周りのお家も。みんなこの辺りは一軒家ばかりでした。

――黄金湯を継いでみてどうでしたか?

その当時、黄金湯は薪だったんですね。燃料費はかからないけど、薪って工面が大変なんです。たとえば営業時間を延ばそうと思っても、薪が不安定な状況で営業時間を増やすこともできないので、安定した供給ができるようにガスに切り替えたいとか。もちろんお風呂も古くなっていましたので改装しないといけないな、と。

――いま黄金湯にある「あつ湯」、「薬湯」、「炭酸泉」は昔からのものですか?

改装前の黄金湯は、浴槽はひとつでした。銭湯って昔はシンプルで、エコにできていて、エネルギーをなるべく使わない構造になっていました。ただこれからお客さんを増やしていこうというときに、お風呂がひとつだけだとスーパー銭湯とかに比べて満足感が減りますし、皆さん体感が違いますから温度も差を出したいですし。ちなみに、昔の黄金湯はあつ湯のみでした。それも熱々のあつ湯。熱くて入れない方もいたかもしれないです。私はあつ湯のあの刺激、好きなんですけどね(笑)。

――確かに、昔の銭湯ってお風呂はひとつでしたよね。お風呂の種類でいえば今はバイブラやジェットもありますよね

そのジェットとかバイブラって電気を使うんですけど、それぞれ機材をそろえないといけないんです。それにお湯を循環させるのとかでも電気を使っているので、それもまた別の機材がそろえて……。うちはお風呂の温度が3つ違うのでその調節もしないといけない。サウナのオートロウリュも電気ですし。お風呂屋さんはそういった機材も大変なんです。

――機材をそろえるだけでなく、維持や管理をするのも大変なご苦労ですよね。いつでも気持ちいいお風呂、サウナを提供している裏には、そんな苦労が隠れていたんだなぁ。ありがとうございます!

次回は、コロナ禍での全面改修となった黄金湯のお話です。

【黄金湯】銭湯営業時間
平日・日曜・祝日:午前6時~午前9時(朝湯)/午前11時~深夜0時30分
土曜日のみ:午前6時~午前9時(朝湯)/午後3時~深夜0時30分
定休日:第二・第四月曜日
※水曜は男女入れ替え日

●料金(入浴料)
大人480円、中学生380円、小学生180円、幼児80円

●サウナ利用
(平日)女性は入浴料に+300円/男性入浴料に+500円 ※2時間まで
(土日)女性は入浴料に+350円/男性入浴料に+550円 ※2時間まで
貸しタオルセット+200円ほか、さまざまなオプションあり

【黄金湯 お宿】
《休憩プラン》 利用時間:午前11時~午後4時(チェックアウト)料金:3,800円~
《宿泊プラン》 利用時間:午後5時~翌10時(チェックアウト)料金:5,800円~
 予約:黄金湯HP[予約]ページより

撮影/田中健児

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