とにかく目指すのは「できる限りの心地よさ」。そして、あくなき改善
その「やれること」はシンプルに言うと次の2つに集約できそうです。「設置できる範囲で、最も心地よい設備と空間」をまず用意すること。そして「そこからマイナス要因をできる限り減らしていく」こと。
「気持ち良さや心地よさでいえば、先ほども挙げたサウナや、さまざまな種類の浴槽を新たに追加していこう、と。また、使用する水も地下から汲み上げるやわらかな井戸水をさらに軟水化して提供するようにしました。内装や調光も、木目の持つあたたかなぬくもりをベースに、心安らぐものを設計の先生たちと相談しながら詰めていきました」
そのリニューアルは、口コミを中心に静かにサウナ好きや銭湯ファンの間で話題となり、徐々に改栄湯の名も広まり始めます。ただ、それに胡坐(あぐら)をかくことなく、同時にさまざまな細かいアップデートも日々、繰り返してきました。
「さっきもお話ししたように、これ以上広く出来るわけでもないですし。また、相当大きな改修だったので、すぐに次の改修をするみたいなことは予算的に難しい。
ただ、いざ新装してオープンすると、それまで見えていなかったことで“やれること”はいくらでもあったんですね。それを一つ一つ、本当に小さなことでも実践していこうと」
実際に筆者が知る限りでも、その“小さな改善=大きな進化”のポイントは枚挙に暇がありません。たとえば、サウナ室まわりだけでも、立て続けに下記のようなアップデートがありました。
・男湯側のサウナ室は露天スペースに設置し、動線の良い外気浴が楽しめる一方で、扉の開閉時にどうしても外気が室内に入ってしまい、室温が下がってしまうことも。
⇒サウナ室の扉を2重扉に再改装(ほぼDIYで!)。外気の流入をできるだけ遮断する。
・はじめはフック型の「サウナキー」で扉を開閉するシステムだったが、まごついている人もいる。より使い勝手が良いようにならないか?
⇒サウナ利用客にはリストバンドを巻いてもらって判別することにして、サウナキーは廃止。
・より湿度を上げて、少しでも「より心地よい」と感じてもらいたい。
⇒ストーブの上にアロマ水を入れた大きな鍋を設置。快適な湿度と温度のセッティングを実現!
⇒さらに男湯側のサウナは、わずか1年半後の今年春に再リニューアルを実行。オートロウリュのできるストーブを追加するとともに遠赤外線ヒーターもより大型のものに入れ替えて、熱さもパワーアップ!
どうですか? この利用客へのホスピタリティと、実行力。すごくないですか?