公開中の短編映画プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS Season3」の9作品の1つ、「サウネ」はサウナ好きの松居大悟が監督・脚本を務め、長年続いたサウナの最終営業日に集まった人々の悲喜こもごもを描いた作品です。そんなサウナ映画をSAUNA BROS.が放っておくはずがありません! ということで、「サウネ」インタビュー特別編を送ります。#1、#2はメーンキャストの善雄善雄さん、奥村徹也さんのお二人、#3、#4は松居大悟監督、#5、#6は清水みさとさんから、撮影エピソードやご自身のサウナライフについて、たっぷりお届けします。
今回は松居監督にサウナの楽しみ方やお気に入りのスポットなど“サウナ周り”のあれこれを語っていただきました。
◆偶然見つけた「宝物」。“小ととのい”で体から“気持ちイイ”音が聞こえてきます
——お忙しい松居監督、サウナにはどのぐらいのペースで行けていますか?
今(取材当時5月頭)は、舞台の地方公演中なので、毎日入っています。地方に行くと、その土地のサウナが知りたいので必ず行きます。東京だと週2~3回ですね。サウナが僕の生きる楽しみです。普段、生活していると締め切りがあったり。撮影やら、舞台の稽古やら、いろいろなものに追われる日々を過ごしているので、常に何かを考えています。サウナは、スマホも持たないから、誰からの連絡もない。今、無心になれる場所がサウナしかないんですよ。寝る前もいろいろ考えちゃうし。
——そんなサウナに求めるものって何なのでしょうか?
体がすっきりするし、血液も循環して、人間に戻れるというか……自分にとってスイッチの切り替えのところでもあって。サウナではボーっとしてるんですけど、そういう時にアイデアが閃いたりするんですよ。そんな時は体拭いて更衣室へ行って、メモ帳にメモすることも多いです。とくに台本を執筆している時は。
——好きなサウナ、たくさんあると思いますが、お気に入りのサウナはありますか?
この間、ちょっと人生ベスト3に入るなというところを見つけました。川崎の「朝日湯源泉 ゆいる」です。僕、炭酸泉が好きなんですけど、炭酸泉がもう、良かったですね。ゆいるの炭酸泉がすごすぎて、ちょっとおかしくなっちゃうぞぐらいの感じでした。基本的にはあまり遠出せず、近隣の3つぐらいのサウナにいつも行っています。最近、きれいになった渋谷の「改良湯」みたいなところもいいですよね。炭酸泉もあるし、外気浴でも風を送ってくれたりして、気持ちよかったです。あそこは炭酸泉が広いんですよね。ほかにも、上野や錦糸町方面の好きなところに遠出することもあります。炭酸泉があるところが気になっちゃいますね。
——炭酸泉のどういうところが好きなんですか?
場所によって温度はまちまちですが、好きなのは人肌より少し低いぐらいの温度で30°ぐらい。ちょっとぬるめなので、ずっといられて、だんだんポカポカしてきて、体が炭酸によって浮いてきて「宇宙飛行士ってこういう感じで宇宙船に乗っているのかな」と。脳みそも浮遊感があって、理屈じゃなく空に浮いているような。気持ちいいんですよね。
——松居さん流のサウナの楽しみ方はありますか?
サウナに7、8分から10分ぐらい入って、水風呂に入って、7、8分から10分で外気浴が基本の1セットなんですけど、その後にお風呂に入るっていうのが僕のスタイルです。お風呂もしくは炭酸泉に入って、その後、水風呂に入って、外気浴をするのが僕の中の1ターンなんですよ。他の人より1ターンが長いけど、そのパターンになっています。
——外気浴のあとにお風呂に入るようになったのは、何かきっかけが?
よく霜田(明寛)くんという友達とサウナへ行くんですが、水風呂→外気浴でサウナへ行こうとしていたら、彼から「1回風呂に入っていい?」と言われて。「じゃあ俺も付き合うわ」って、お風呂に入ったら、そこで”小ととのい”があったんですよね。外気浴でととのった後に風呂で“小ととのい”があって……。水風呂に入って、また外気浴したら、またさらに“小ととのい”が来て。「この宝物に、僕は気づいてなかった!」と思って。この行程が入ると、じんわりと体から血流が循環する音が聞こえますよ。
——サウナの後に必ず飲むもの、食べるものはありますか?
いわゆる銭湯サウナに行くことが多くて、近所のよく行く銭湯では絶対トマトジュースを飲みます。いわゆるサウナ施設だとやっぱり「オロポ」ですね。ない場合は、トマトジュースとかフルーツ牛乳。食事は、1人の時はあんまりしないけど、霜田くんと行った時には食べることもあります。そのときは、味の濃いものや揚げ物が多いですね。
——映画では、女性スタッフに恋心を寄せる邪な気持ちでサウナにきているから、「サウナ」ではなく「サウネ」。としていますが、この言葉が生まれた背景は?
映画の「くれなずめ」や、舞台の「かえりにち」もそうですが、今までに言語化されていない感覚を感じてもらいたいというのが、自分が作品を作るときのテーマなんです。サウナの話だけれども、サウナで“ととのおう”とするんじゃなくて、 最終営業日だから“ちょっと彼女に告白しよう”という。劇中でも言ってるけど、「ナ」じゃないなと思って。サウナ未満の、サウニ、サウヌ……と、こう考えていってしっくり来たのが「サウネ」でした。あともう1つの従業員側を描いた「ネッパ」とも“サウネ→ネッパ”ってしりとりみたいに繋がるなと思いました。
——ちなみに、そういう意味で言うと監督は「サウナ」ですか? 「サウネ」ですか?
そこは純粋に「サウナ」です。ナに強調する意味で、“〃(濁点)”をつけてもいいぐらいですね。だから「サウナ゛」かな。
——最後にSAUNA BROS.WEBをご覧のみなさんにメッセージをお願いします。
サウナを愛する人たちと作った作品です。劇団ゴジゲンは、“サウナ劇団”だと思っていますし。そんな僕らと、清水みさとさんや磯村勇斗くんやマキタスポーツさん、マグ万平さんなど、本気のサウナ好きの人たち、サウナ好きのスタッフも含めて、“サウナ界のアベンチャーズ”と組ませていただきました。サウナに行く前に映画を見て心をととのえ、サウナに行って体をととのえる。まあ、逆ももちろん。そんな風にサウナ前後に映画も楽しんでもらえたらいいなと思います。サウナへは行けないけど、映画館ならいけるなという時は、是非、サウナ代わりにも楽しんでいただたら、うれしいなと思います。放送が決まったら熱波師のドラマ「ネッパ」もぜひ見てほしいですし、いつかサウナを舞台にした長編映画を作れるようがんばります。
松居大悟
1985年11月2日生まれ。福岡県出身。
劇団ゴジゲン主宰。2012年「アフロ田中」で長編映画初監督。ほかに「私たちのハァハァ」「アイスと雨音」「アズミ・ハルコは行方不明」「くれなずめ」など。枠に捉われない作風は国内外から評価が高い。テレビ東京系列「バイプレイヤーズ」シリーズも手掛け、J-WAVE「JUMP OVER」ではナビゲーターを務める。最新作「ちょっと思い出しただけ」もロングラン公開中
文/奥澤しのぶ