トップフィギュアスケーターとして、世界を舞台に活躍する友野一希選手。見る者を引きこむ豊かな表現力で“浪速のエンターテイナー”と呼ばれることも。
そんな友野選手、実は知る人ぞ知る“サウナ好き”でもあります。パフォーマンスと同様にぐいぐいと引き込まれてしまう友野選手のサウナにまつわるトークを、毎月1回、お届けします!
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札幌で味わった「最高のととのい」
――NHK杯、おつかれさまでした! テレビにかじりつきで見ていました。(※今回の取材は11月下旬に行っています)
「ありがとうございます。他の試合と違ってNHK杯は事前のインタビューなども含めて放送を見てくださる方も多いし、いろいろな方からメッセージをいただけるのでうれしいです」
――そうなんですね。
「やはり、NHKさんがやっている大会ということもあるんでしょうね。選手の露出も多いですし、全日本選手権もそうなんですが、国内での試合なのでガッツリ放送もしていただけるということもあるんだと思います。『見たよ~!』って、より多くの方に言っていただけますね」
――画面のこちらから見ていて、緊張やいろいろな感情があるんだろうなって思いつつ見ていました。
「GPシリーズの1戦でもあるNHK杯は、GPファイナルへの出場もかかっていて。もちろん僕もファイナルへの出場を目標にしていたので、最後は悔しさもありましたけど、失敗したジャンプ以外は練習してきたことがしっかり出せたかなと思っています。悔しさはあれど、次につながる試合だったかなと。また頑張ろうと思えた大会でした」
――とくにフリーの演技やエキシビジョンでは、そういう感情もいろいろあるのかなと思いつつ、画面からはポジティブな思いを強く感じましたし、何より演技がすごく楽しかったです。
「そう言っていただけるとありがたいですね。普通に見ていただくにはスケートって意外に難しい部分もあるので、一番は楽しんで見てほしいなって思っているんです。たとえ失敗しても伝わるものが何かあればいいなと思っていますし」
――札幌でも試合のあとはサウナに行けるのかな、楽しむ時間があればいいな、と思っていたんですが。
「はい。しっかり行きました。そのために頑張っていますから(笑)。宿舎も札幌市内だったので、『ニコーリフレSAPPORO』が近いんですよ」
――あ~、羨ましい。名前を聞いただけで行きたいです。
「ですよね(笑)。実は、試合前って意外と時間があるんです。練習時間も決まってしまっているので、それ以外は結構時間が空いてしまうというか自由に使えるんです。一緒に出場していた山本草太選手とも、サウナ仲間っていうのもあるし、幼馴染でずっと小さい頃から一緒なので、2人で葛藤しながら、『どうする? 行く?』なんて言い合ったりして(笑)。
でも、グッとこらえて、我慢我慢、って。『試合頑張ってから行こう!』。で、すべてを終えてから行ったんですが、ロウリュの時間(※熱波サービス)に間に合わなかった……(笑)」
――そうなんですか?
「そうなんです……」
――やりたかったですか? あの掛け声。
「やりたかったです。『イチ、二、サウナ~』って(※)。次の日に無理をしてでも行こうかな、とも思ったんですが……帰りの飛行機の時間もあって、またの機会にってことにしたんですが、でもめちゃめちゃ楽しめました。試合後ということもあったんですが、それはもう、最高のととのいがありました」
(※ニコーリフレでは熱波師/アウフギーサーがタオルを振りおろすのに合わせ、サウナ室内の人全員で『イチ、二、サウナ~』という掛け声をかけます。室内で一体感が生まれます)
何かをやり遂げた時のサウナは「ご褒美」!?
――最高のととのい、ですか。
「いやぁ、もうすごかったです。まさに倒れるように……まぁ、シンプルに疲れていたので、倒れるようにととのっていました」
――やっぱり本番の試合が終わった後っていうのは、疲れっていうのは練習の比じゃないんですね。
「なんか難しいんですよね。練習の方がしんどいはずなんですよ。時間もやっていることも。でも、やっぱり体の疲れもそうなんですが、気持ちの方が疲れるんですね。そしてそれが続くので。試合が終わった次の日のエキシビジョンまであるんですが、実はこのエキシビジョンがすごくしんどかったりもします」
――そうなんですか?
「フリーの演技を終えて試合が終わったあとって、アドレナリンも出ているのか全然眠れないんです。だいたい2~3時間とかですかね、いつも。4時間眠れたらイイ方なんです。そのあと、エキシビジョンに臨むので」
――それは、たしかに。フラフラになっちゃうかも。
「そこまでを濃密に過ごしてからのサウナですから。これはもう、本当に1回目(1セット目)で倒れるように……もう、寝ていました。
サウナ室で、カァ~ッと一気に蒸されて燃え上がって、水風呂でシュ~ッて静められて。ニコーリフレさんの水風呂は、なんかこれまでに体験したことがないような水風呂でした。16℃って書いてはあるけど、『そんなの嘘でしょ!?』って思うくらい冷たくて。キンキンでした」
――水風呂でシュ~ッってなってからの休憩も……。
「本当に、最高レベルのととのいでした。イスに座って目を閉じて、気づいたら30分以上経っていたんです(笑)。久しぶりに、あんな気絶するレベルのととのいを感じました。あれはもう、限界を超えたからこその最高のご褒美だなって!」
――もちろん「ニコーリフレ」のクオリティーということもあるけれど、試合前後のもろもろの極限状態、みたいなものが……?
「そうですね。肉体の疲労、精神的な緊張。試合を終えての様々な感情……。気持ちも含めていろいろなものがすべて重なって。でも、それらすべてを終えて、何かをやり遂げた、成し遂げた後のサウナだからこそ、っていうのはあると思います。
(山本)草太なんか、もっと倒れるように……1時間くらい眠り込んでいました(笑)。その間に僕は、もう1セット行ったりして。3セットを楽しんだんですが、でも、2セットでも良かったかもしれないって思えるほど、集中した、良い時間を過ごさせてもらえました」
――それは本当にいいサウナでしたね。
「おっしゃるように、ニコーリフレさんじたいもすごく気持ちいい施設さんでしたしね。サウナ室も広くて、落ち着く暗さで、木で造られているサウナ独特の熱の温まりもあって。入った瞬間『はい、好き~』って(笑)」
――今年もいくつか初めて行かれたところは多かったと思うんですが、その中でも……。
「そうですね。間違いなく、気持ちいい上位に入る施設さんでした」
思い出深い「The パワー」な施設との出会いが……!
「あ、草太と一緒に行ったサウナといえば、『ジートピア』さん(「カプセルホテル&サウナ ジートピア」)も思い出深い施設でしたね」
――千葉・船橋の「ジートピア」さんですか?
「そうですそうです。少し前の話なんですが、僕にとっては水風呂の概念を少し変えてくれたし、一緒に行った草太に至ってはサウナにハマるきっかけになったっていう」
――船橋って、遠征で行かれたんですか?
「試合というか、日本代表の候補選手の招集で健康チェックみたいなのがあって、たまたまた船橋方面に泊まったんですね。そのときにいろいろ調べて、何人かで『じゃあ、ジートピアに行こう』となって。その頃、まだ草太は『サウナ、ちょっと苦手。水風呂も冷たいし……』みたいな感じだったんですけど、まぁ、一緒に行ったんです。無理だったらお風呂だけでもいいじゃん、みたいな感じで。行ってみて、ちょっとびっくりしましたけど」
――あ~(笑)。浴室内にギリシャ彫刻みたいなのがいっぱいあったり。独特の世界観、ありますよね。
「ふふ、そうそう。不思議な感じで。外観というか入口もちょっとアヤしくて。みんな、『え、ココ? 入るの?』ってなってました(笑)。で、入ってみたら……いい意味でさらに驚かされることの連続で」
――はい。
「あそこまで熱いサウナ室、あります? って思うくらいの熱さで。僕が覚えてる中で、あそこまでのところ、なかなかないんじゃないかと思うほどで。肌をぐわ~っと包みながら刺激してくる『The パワー』っていう感じの」
――「The パワー」(笑)。さすがです、友野さん。うまい言葉で言い当ててる(笑)。
「独特の熱さですよね。まさに『The パワー』っていうか、上から熱い砂をかけられてる感じの(笑)。もう、うわ~っってなる(笑)。3段になっていて、最初僕は一番上に行ったんですが、アツ過ぎて途中でおかしいことになって(笑)、2段目に移動しました(笑)」
――下の2段より、3段目、空いてたでしょ? そういうことなんですよ、あそこは。
「そうなんでしょうね(笑)。でも、その熱さが、そのあとの水風呂も含めてめっちゃ気持ち良くて。あそこの水風呂って、水温がゆるやかというか優しいじゃないですか」
――20℃くらいですね。
「その頃の僕は、キンキンの水風呂が大好きで、なんなら『おいおい20℃は甘いでしょ?』みたいな(笑)ふうに思ってたんです。でも、そのThe パワーなサウナ室でアッツアツになったあとに入ったあの水風呂がもう、たまらなく気持ち良くて。本当に、いつまでも入っていられるような優しさ。めちゃ冷たい水風呂に『キュッ』と短時間入るのもいいですが、少し長めに入って体をよりしっかりじわじわ冷やすのもいいなって。あそこまでの水風呂には初めて出会ったかも、って思ったんですね」
――あの水風呂もヴィーナスの彫刻が横にありますね。水質もめっちゃマイルドです。
「そうでしたね。気持ち良かったなぁ~。で、草太なんですが(笑)、熱めのサウナ室でかなり頑張って体を温めたら、あの水風呂ってすごく入りやすいじゃないですか。まだ慣れていない時なら尚更のこと」
――おお! たしかに。
「『水風呂、いいなぁ~』って言ってくれて(笑)。外に出られるドアがあったので開いてみたら、そこにいくつかイスが並んでいて、その時は足元に白樺の木が置いてあったので、そこに足をかけて。しばらくしたら、草太がまた一言『いいなぁ~』って。あの瞬間に彼のサウナ生活が始まったと僕は思っています(笑)」
――目覚めさせましたね(笑)。
「そう思います(笑)。それ以降は、わりと草太とも一緒にいろいろ行ってますね。彼はいま名古屋を拠点に練習しているんですが、僕も名古屋に行った時は一緒に『ウェルビー栄』に行ったり、知立の『サウナイーグル』に行ったりとか」
――いいですね。みんなでサウナの良さを一緒に楽しめる仲間。
「そうですね。そういう意味でも、あの『ジートピア』でのサウナも……いい体験でした」
2022年の友野一希を表す一文字は……「想」
――さて、そんな、いろいろあった2022年も、間もなく終わります。フィギュアの選手にとっては、大みそかが必ずしも1年の節目ではないのかもしれませんが……。
「たしかに、そうかもしれませんが、年末の『全日本選手権』が大きな試合ではあるので。その後のシーズンにも大きくかかわってくるので、選手はみんな1年の照準をそこに定めてくるんです。だから全日本選手権が終わると、いったん少しブレイクするというか。年末年始を少しゆっくり休んだりはしますね」
――全日本選手権は、だいたいクリスマスですよね。
「はい。クリスマスは楽しい時間でもありますが、ときどきクリスマスソングを聴いて鳥肌が立つこともあります(笑)。でも、NHK杯後のサウナもそうだったように、全日本後のサウナも最高なんですよね。昨年は年越しをサウナで迎えたんですが、同じように今年もいいサウナが過ごせるように。そしてみんなと『いやぁ、良かった良かった』って言い合えるように頑張りたいなと。あのCHILLOUTで乾杯する瞬間、最高でしたから」
――応援しています。で、最後にベタな質問ですみません。友野さんの今年1年を一文字で表すと……。
「全日本選手権も終わってないので難しいですが、その結果に関わらず……今年はずっと、自分自身とより向き合ってきたような気がします。次の4年間に向けての1年目ということもありましたし、選手として、そして一人の人間としてもどう成長し、どういう存在になりたいかなどをかなり考えました。で、考えるだけじゃなく行動に移したりもして。そんな1年だったと思います」
――考えるというのは……ずっと頭のどこかにあった、みたいな?
「それもありますし、あえて『瞑想』みたいなものを取りいれたりも。それこそサウナでも瞑想のようなことはしていましたし、自分と向き合う多くの時間をサウナでも過ごしました。あ、いま言っていて思ったんですが、だから、今年の文字としては『想』がぴったりかもしれません」
――「想」。いいですね。どこか深みと広がりを感じます。
「これまでは弱い自分と向き合うことが多くて。自分の中の弱い部分を変えて行こうみたいなことはずっと思っていて、そこはすごく出来るようになったというか、成長も実感しているんです。近頃は、次に何をしようかって考え始めてもいて、強い自分にも目を向けてみようかなって。
僕の悪いクセで、自分を少し下げて考えてしまうことがこれまでは多かったんですが、それはやめよう、って。もっと自分に自信を持っていこう、それだけのことが出来るようになって来たじゃないかと。それで、もっと、自分に誇りを持てるようになっていきたいと思うようになってきました」
――自分を見つめ直して、努力も重ねてきた結果。めっちゃポジティブな境地が見えてきた。
「そうですね。自分のいい部分と向き合うって、意外と出来なかったんです。ネガティブなので(笑)。ただ、自分の可能性……いいところやストロングポイントを信じて、弱さと同時に、今後はその部分にももっと目を向けていきたいと思います。コレだな、2023年は(笑)! 間違いなくこれ、来年のテーマだと思います」
【友野一希(ともの・かずき)】
1998年5月15日生まれ。大阪府出身。4歳よりスケートを始め、ジュニア時代から表現力の豊かさには高い評価が。“氷上のエンターテイナー”“浪速のエンターテイナー”等とも称される。2021-22年シーズンには、四大陸選手権で2位、世界選手権で6位。今シーズンもさらなる高みを目指す。全日本選手権は12月21日~25日開催(大阪府門真市)。
SAUNA BROS.vol.5にも登場していただきました!
12月20日発売の「SAUNA BROS.vol.5」でも友野さんに会える! この連載への想いなどをお話していただきました。友野さん自身が撮影したプライベート写真満載ですので、ぜひお買い求めください。
SAUNA BROS.vol.5は全国の書店、ネット書店にてご予約・お買い求めいただけます。