はるか昭和の時代から、何十年もの間ずっとサウナ好きをあたため続けてきた、心地よくて、安らげて、そのたたずまいや味わいがたまらないサウナ施設を取材させていただいている「ノスタルジックサウナ写真集」。
日本各地に点在するそうした施設への訪問・撮影を行うなかで、あらためて感じたそれぞれの“グッ”ときてしまうポイントを挙げさせていただく短期集中企画。8回目は岐阜・大垣市の「大垣サウナ」さんです。
お読みいただいたあと、もしよろしければ皆さんからも「こんなところが好き」「ココがたまらない」という声をぜひお聞かせ願えればと思っています。よろしくお願いします!
(このページで、便宜上、掲載している写真は、編集部員がスマホで撮ったものです。念のため。写真集ではプロによる思わず息をのんでしまうものを、あますことなく掲載します!)
・唯一無二!! エントランスで感じる究極のおもてなし
大垣駅から、車でおよそ5~6分。歩くと……20数分くらいかかってしまうでしょうか。周囲にあまり高い建物を見かけなくなった、静かな住宅地の真ん中に、あの味わい深い書体のネオンの看板が見えてきます。その白い建物に少しずつ近づいていくこの時間は……ワクワクと高まりに包まれまくる、本当に大好きな時間です。
エントランスを入ってすぐのフロントも、大好きな空間。広々と感じるのは、どんな施設にもある、靴を入れるロッカーや下足の棚がないせいではないでしょうか。「お履き物はこちらへどうぞ。お預かりします」という声に従って、靴をカウンターに設けられた人工芝が敷かれたスポットに差し入れます。帰りには、また同様に、直接戻してくれるシステム。この、ほかにはないコミュニケーションまじりのお出迎えに、また心をくすぐられちゃうわけです。
受付を済ませて中へ入ると、すぐに脱衣スペースが。ここで、各ロッカーの上に並べられたタオルを目にすると、またまたたまらない気持ちに。服を脱いでロッカーに収め、そのロッカー上のタオルをひょいと手にするだけ……という“最小の手数”で浴室に向かえるわけです。このシンプルさもまた、究極のお出迎えの一つだなといつも思ってしまいます。
・すべてがシンプルだからこそ際立つ、大垣サウナの“イズム”
浴室内もまた、きわめてシンプル。あつ湯の浴槽と水風呂。そしてシャワーと洗い場……と、必要なものだけがあるのですが、これがまたどこを見てもピッカピカ。そして、先ほどのロッカーの上のタオルもそうですが、すべてのものが整然と並べられているのも気持ちいいの一言!
それらはすべて、昭和41年(1966)に創業して以来の、大垣サウナの伝統。創業した先代社長のイズムが、ずっと受け継がれていると、夫である先代社長とともに二人三脚でここを守ってこられた現社長が、ニコニコと優しい笑顔で話してくれます。
「とにかく、お客さまに少しでも快適に過ごしてもらおう、って。常にキレイに、と暇さえあれば整理整頓をしていたのはもちろんのこと、少しでもいいアイデアが思いついたら、すぐに実践していましたし。浴室やサウナ室の設計だって、ぜんぶ自分で測ったり図面を考えたり。それはもう……徹底してましたよね」
やはりそうなんですよね。いい居心地の施設は、運営されている方の魂というかあたたかさが、随所からダイレクトに伝わってくるもの。清潔であることはもちろんですが、過ごしやすさを考えて設計したりデザインしたり……。時代が移り替わり歳月が経ったことで、物理的な古さだったり、雰囲気がレトロだったりにはなるけれど、それがそのまま味わいや安らぎになる。まさにノスタルジック!
・味わいとともに……そこはただただ熱くて、冷たくて、気持ちいい。
サウナ室の中も味わいとホスピタリティーだらけ。奇しくも前回記事で記した「サウナサン」と同様、壁にカーペット素材が貼られているのも懐かしうれしく、2段の座面に敷かれたマットも、ワッフル地のとてもやわらかい生地のもの。お尻にやさしい! その一方で熱さじたいは、容赦のない最高の汗がかける昭和ストロングなセッティング。その熱をつくりだすカスター社のクラシカルなストーブも、木の柵もたまらない存在感!
そのストーブからほど近い、テレビ画面のちょうど下の位置に掲げられた「サウナは自然を愛する人に好まれている~」という一文から始まる『われらサウナ人』という詩文にも、やはりグッときます。めちゃくちゃ熱い室内であの文章を、読むとはなしにボーっと見ている時間……本当に最高です。
壁にかかる温度計も、めちゃくちゃ味わいあふれる逸品。針が指し示す温度にもノックアウトされますが(よく110と120の間を行ったり来たりしてますよね)、文字盤の数字のフォントもホントにキュート!
アチアチに蒸されたあとに待っている、あのシャキーンと冷やしてくれる水風呂も本当にたまりません。季節を問わず安定したキンキンさで、そしてあの本当に清冽な水質。こんこんと澄んだ水が常にかけ流しでじゃぶじゃぶオーバーフローされているのは、見るのも入るのも最高。サウナ室との往復は、やめ時をついつい見失います。
要は、とにかく熱くて、とにかく冷たい。それがとにかく気持ちいい。この繰り返しをなんのストレスもなくとても心地よく味わえる。半世紀を超え、サウナ好きに愛される理由も、やっぱりとてもシンプルなわけです。
・まるで空気のように、館内中に漂うやさしさ――。
浴室を出てからも、あっちを見ては「ハッ」とさせられ、こっちを見ては「おぉ~」とつぶやく……大垣サウナの「イズム」は随所で感じてしまいます。ドレッサールームのアメニティ類の瓶に、一目でわかるように大きく「頭」「顔」とシールが張られていたり、爪切り台にもライトが仕込まれていて、そのスイッチを入れれば、めちゃくちゃ爪先が明るく見やすくなるように改造されていたり。
ひとつフロアの上にある食事処も、レンガに縁取られたモダンなアーチ造りの入口からして、入らずにはいられません。どれもおいしいメニューの豊富さも、そして1階にある個室の休憩室でも食べられるよう、料理用のミニエレベーターがあるのにも驚かされます。
休憩処のリクライニングソファも、マッサージ室の居心地も……古くはあるけれど、すべてに工夫がなされ手入れも行き届いた調度品やアイテムに包まれ、心も体も、すっかり休めることができるのです。
と……挙げていけば、本当にキリがありません。そんな大垣サウナのたまらなさを、じっくりと時間をかけて撮影させていただきました。ここまでに記したような、目に入るものはもちろんのこと、「ここまで見せたのは初めてだよ」と支配人さんに言われたスペースまでお邪魔してきました。最上階にあるめちゃくちゃクールなボイラー室だったり、そこから出て、屋上の看板をたぶん誰も見たことのない角度から撮影させていただいたりも。ネオンって、近くに行くとあんなふうに見えるんですね……。自分たちで言うのもなんですが、あらためて胸が熱くなる写真がたくさん撮れたと思っています。
もし皆さんも「このカットがあれば見てみたい」「掲載してほしいのはこういうところ」などのご意見があれば、お聞かせいただけたらと思います。この記事に関するツイッターのつぶやきなどへのリツイート、インスタグラムのコメント欄や引用ストーリーズなど、ぜひお待ちしています!
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この「ノスタルジックサウナ写真集」プロジェクトでは、クラウドファンディングも実施しています。この記事や、こちらのクラウドファンディングのページを読んでいただいてご興味やご共感をいただけた方は、ぜひ応援のほど、よろしくお願いいたします!
最後に……本当に長い滞在のあと、常連さんにもスタッフにも「ママ」と呼ばれ慕われる社長、そして、やはりお客さんも含めさまざまな人から「トオルちゃん」と愛称で呼ばれる支配人が、それぞれ自らハンドルを握って、駅まで車で送ってくださいました。本当にありがとうございました!!
<次回は愛媛県今治市の「ナニワサウナ」さんについて記してみたいと思います>