はい、たどりつきました。興奮と期待感は最高潮です(笑)。それでは、「せーの!」で、この小さめに作られたドアを開けてみましょう。
◆最高のサウナ室にこめられたこだわりと工夫
サウナ好きなら誰しもが一瞬、息をのんでしまうのではないでしょうか。そして次の瞬間、私と同じように、ため息をもらしてしまうのではないかと思います。見てください。このゆったりとした空間。小窓からの自然光と薪ストーブの炎による明かり。薪ストーブならではの柔らかな熱と「パチッ、パチパチ」という薪が爆ぜる音。あっ、ここでもスマホで動画を撮らせてもらったんで、良ければそれもご覧ください。
この重厚で硬派なルックスも眼福モノですよね。余計なことは一切せずに、真面目に、ただひたむきに熱を生み出してくれそうな。こちらの無骨なストーブは岩手・釜石市のメーカー「石村工業」さんのものだそう。このサウナ小屋を作るにあたって、立花さんにはいくつかこだわりがあったそうですが、そのひとつが「出来る限りすべて岩手のもので作りたい」という思い。
「岩手のものを使うことで、遠くから来てくださった人にはこの土地の良さを知ってもらえるかもしれないですし、近くの人には愛着を持ってもらいたいなって思ったんです。長く愛されて、地元も潤う。そんな存在になれたらいいなと」(立花さん。以下同)
ストーブ上に満載され、床にまであふれたストーンは八幡平の溶岩。薪も近くの山の間伐材。ストーブの上にかけられ、絶妙な湿度を生み出している鍋は南部鉄器。「純・岩手産」の、潤いと愛情に満ちた熱が、身体と心をポッカポカに包み込んでくれます。
「実は、このストーブが想像以上にポテンシャルが高くて(笑)、出力がすごいんです。もちろん薪の量で調整できるんですが、熱の“質”というか……発する熱さがものすごく鋭い気がしたんですね。それをやわらげるために、どうしたらいいかいろいろと試行錯誤して、結果、このように石でストーブを覆うことにしたんです」
へぇ~。サウナストーンって、すごいですね。熱を「伝える」ものだと思っていましたが、逆に熱を「和らげる」調整もしてくれるとは! もちろんセルフロウリュもできるし、これだけの石の量があれば、どこに水を掛けても「ジュウ、ジュワ~」といい鳴きを聴かせてくれますが、たしかに鋭い熱さではなく、じっくりとやわらかく包んでくれるような熱さです。蒸気のまわりも良く、誰かがロウリュするたびに熱さが隅々まで行きわたります。
「そうなんですよね。これだけの出力があるので、小窓を開けても90℃より温度が下がることがないんです」
なるほど。頃合いを見計らって薪や室内の状況を再び見に来てくれた立花さんに言われてあらためて気が付きましたが、あの小窓が開いています。このサウナ室に入った時から息苦しさが一切ないな、というのは感じていました。熱さが身体のまわりをくるみながら空気がよどみなく移動している体感は……そうか、この窓による換気と対流の効果によるものなんですね。
心地よく、熱すぎないのに、しっかりと蒸される。どのくらいの時間が経ったか分からないほどじっくりと居続けられる快適なサウナ室で、心ゆくまで熱を愉しんだら、先ほどのあの水風呂へ向かいましょう!
◆水風呂から休憩へ。「無」が訪れる瞬間は、間もなくです!
かけ水で汗を流したら、山の水と冷鉱泉。どちらでも好きなほうへドブン。この風情を味わいながら、なめらかな水質を味わいながら心ゆくまでクールダウン。どちらも十分に冷たいのですが、比較すると山の水のほうがより温度は低めかもしれません。そうなんです。温度がほんの少し違うので、この2つの樽を“はしご”して、冷々交代浴をすることもできちゃうんですね。多くは説明しませんが、ハイ、最高です! あ、この木の樽も岩手の蔵元さんに譲ってもらったという“100年ものの酒樽”だそうです。
時間の感覚など忘れて、身体の求めるままに――浸かっているうちに「無」が訪れて来ました。
さて、水風呂を堪能したら、休憩ですね。内気浴もできるのですが、まずは外気浴をおススメします。
写真のように、好きなところにイスを持って行ってもいいし、もちろん草の上に直接寝ころんじゃってもOK。何度も書いて我ながらしつこいなと思いますが、聞こえるのは自然の音だけ。たとえば……夕方だと、こんな感じです。
すみません、これもまた素人がスマホでとりあえず撮った動画なのでぜんぜん伝わり切らないとは思うのですが、音だけじゃなく、風に吹かれる感覚もイメージしていただけたら幸いです。
ちなみに・・・晴れた夜は空を見上げると、こんな感じです!
忘れてはいけないのが、ここの天気は変わりやすいこと。もちろん晴ればかりではなく、しぐれ(時雨)たり、雲の中にいるかのような霧に包まれる時間もあります。でも、その状況もまた、実に幻想的。サウナ室&水風呂を経て「無」になった自分の中に自然が入ってくるというか、言葉では言い表せない“大いなるものに包まれる”ような感覚というか・・・。大げさではなく、街中では決して味わえない、ちょっと次元が違う経験をさせてもらえます。
◆唯一無二の体験・・・やっぱり、まさしく“理想郷”です!
ご存じの方ももちろん多いと思いますが、「イーハトーヴ」とは、あの岩手が生んだ作家で詩人、宮沢賢治が編み出した言葉です。その意味は諸説ありますが「理想郷」を表しているといわれています。
自然を全身で感じられる環境。木と石と火と水、そのどれも天然のものしか使っていない、とてつもなく味わい深く優しい空間。そして、サウナ好きが心からくつろげるようにと、ほどよく見守り、寄り添ってくれるホスピタリティ。これらによって知らず知らずのうちに、身体も心も伸びやかにゆるまって、ほどけていくのが自分でもわかります。
まさしくここは愛好家にとっての理想の体験ができる施設の一つです。
【星降る山荘 七時雨山荘】
住所:岩手県八幡平市古屋敷96
営業時期:5~11月初週の土日祝(11月末~4月末までは道路封鎖のため営業していません)
◆宿泊利用 チェックイン=後3:00から チェックアウト=前10:00
◆サウナ「イーハトーヴ」を利用する際は宿泊予約と同時に以下から希望コースを要予約
「高原サウナ」(後3:30〜5:30)=3,500円
「星空サウナ」(後7:30〜9:30)=4,000円
「目覚めのサウナ」(前6:30〜8:00)=3,500円
※貸切コース有 ※日帰り利用も準備中
●なお、上記営業期間・時間の中で、テントサウナも設置、実施しています(夏季期間は休止していますが、8月末より再開予定)