とにかく落ち着く、安らぎの場所
~北区「テルメ末広」~
サウナの好みや楽しみ方は人それぞれ。ロウリュや熱風も出るようなアクティブなタイプ、シンプルで静かなところ……まさしく「十人十色」。もっと言うと、同じ人でもその日のコンディションや日中の過ごし方、その日の気分で異なるなんてこともあるでしょう。
かく言う筆者もまさにその一人。テレビがあるところを目指す日もありますし、じっくり静かに安らぎながら発汗したい日もあります。
北区にあるテルメ末広は、そんな後者の日に、ついつい足が向いてしまう銭湯のひとつ。
志茂駅から散歩がてらにゆっくり歩いて向かいます。そしてエントランス前に立った時点で、いつもすでに心安らいでしまいます。京都の町家を彷彿とさせる落ち着いた建物。そして入口の引き戸の前には一年中、何かしらの花が咲いています。どんなに暑い日も雨の日も、なぜかほっとするんですよね……。
のれんをくぐってもその印象は変わりません。フロントで売られている、小さな子どもたちが喜ぶという駄菓子なんかも心くすぐるポイント。奥行きのある店内は静かで清潔で、ご店主の德江康幸さんの笑顔もとても穏やかで。
「私自身も落ち着いた雰囲気が好きで、設計段階からいろいろとこだわりというか、こういう風にしたいと思ったことをすべて反映しました」と德江さん。現在はコロナ禍ということもあり開放していないけれど、二階部分にも落ち着いて休憩することのできるスペースがあったり、建物全体に和と洋、レトロとモダンがいいバランスで溶け込みあっていたり。そう、どこを見てもやっぱりどこか落ち着くんですよね。
浴室内も、そして何よりサウナ室もまったく同様です。写真でお分かりいただけると思いますが、どこかクラシカルな独特の形状(変形の八角形)と雰囲気。しっかりとした熱を感じつつ、室内でかすかに流れるFM放送の音に包まれながら目を閉じると、いつのまにか時が過ぎています。
木が傷まないようにと、ニスが塗られた座面や床もとても美しく、利用する側も「きれいに使おう」と背筋が伸びる思いになります。ニス塗りということもあって、座面も床もかなりアツいのですが、サウナ利用者にはバスタオルとフェイスタオルに加えて、布のサウナマットを2枚無料で貸してくださるのでご安心を。そうしたホスピタリティもまた、豊かな気持ちにさせてくれるんですよね。
思いっきり発汗したあと、これまたやさしい地下水の水風呂に包まれながら感じる安らぎも、露天スペースや清潔な浴室内での小休憩も……実に最高です。
こうした……どこかスペシャルな、自分にとっての「とっておき」の施設を見つけるのも楽しみの一つ。毎日、今日はどこに行こうかと、ついつい思いを巡らせてしまうんですよね。
【テルメ末広】
■住所:東京都北区志茂5ー16ー14
■営業時間:後2:00~11:00
■定休日:金曜
■料金:入浴料500円(大人)+ サウナ料金300円(大小タオルおよびサウナマット×2枚付)
撮影=長谷繁郎、田中健児