地域にも地球にもやさしいサウナ。富山県南砺市「37BASE」②

北陸地方のサウナ王国、富山県で今話題の温浴施設が「37BASE」(南砺市岩屋)です。「家族“3”世代が集まって、“7”つのコンセプトを楽しんでいただける憩いの“BASE(基地)”でありたい」との思いを込めて“サンナナベース”と読むこちらの施設。

その理念の通り、地元・富山県在住者を中心に広い世代の人たちが訪れ、大浴場、炭酸泉、サウナ、岩盤浴、レストラン、O2BOX(酸素カプセル)、ラウンジ(休憩所)という7つのコンセプトが楽しめる空間に。そうした地域貢献に加えて、同施設では、SDGs=持続可能な開発目標の達成に向けても取り組みを行っているとか。今回は特別にその取り組みの一部を見せてもらいました! 37BASEの裏側に迫ります(施設紹介の記事はこちらから)。

目次

解体工事・産廃物処理業者がなぜ温浴施設を?

「37BASE」を経営するのは、施設のすぐ隣で解体工事・産業廃棄物処理業を営んでいる有限会社「昭信機工」。

同社は、1989年7月の創業からに地元に根差し、富山県、隣接する石川県まで35年間にわたって地域発展の要を担ってきました。

では、どうして、異業種である解体工事・産廃物処理業に携わる会社が温浴施設を始めることになったのでしょうか……。

今回の取材を案内してくれた取締役開発部長の荒井隆一さん(以下、荒井さん)は言います。

「弊社は創業以来、地域のみなさんとともに歩んで参りました。そこで、30周年を迎えるタイミングで“地域貢献のために何かできないか?”と考え、思案した結果、温浴施設を始めることにしたんです」

詳しくは、次回、荒井さんのインタビューにゆずりますが、温浴施設は「地域の方々に大切にしていただき、育ててもらったご恩を、みなさんが喜んでもらえる形で返したい」と、2021年に就任した「昭信機工」の長谷学社長が発案。

そして、折りからのコロナ禍によって多少の遅れもあった中、2023年8月には富山銀行(高岡市)の支援を受けて「SDGs宣言書」を策定。17あるSDGsのテーマ別目標から「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「住み続けられるまちづくりを」などを掲げることで、温泉施設事業をSDGsの取り組みとして位置付けました。

輩出される大量の廃木材を湯を沸かす燃料に

「SDGsの具体的な取り組みとしては、住宅などの解体作業で大量に排出される廃木材をボイラーの燃料に再利用することで、循環型社会の実現に貢献するとともに、施設を地域住民のみなさんの憩いの場にしたい。同時に地域雇用も生みたい」(荒井さん)と考えたそう。

聞けば、同社では以前から、これら廃木材を破砕して他の企業に販売することで、顧客の廃棄物処理コストを低減。「その資源を地域の活性化のために有効活用できないか?」と思案した結果、破砕した木材をチップにし、燃やしたときに発生する熱を利用することにしたのだとか。

そのため、大浴場をはじめとする「37BASE」の風呂は、すべてその木質チップを燃料とするチップボイラーで湯を沸かしています。

木質バイオマスエネルギーで環境にもやさしく

荒井さんに施設の裏側を見せていただくと、正面玄関の向かって左奥には、木材チップを保管しておくための倉庫が。

写真向かって右側の木材チップは約3日分の燃料になるんだとか!
木材チップが流れ込んでいきます

さらにその奥には、廃木材や屋敷林の剪定材、富山県内での伐採が多い生木でも十分に燃焼することができる、オーストリア「Froling」社製の巨大ボイラーも。荒井さんの話によるとこのボイラーを使用しているのは日本全国でも2社しかないらしく、その1社が昭信機工こと37BASEなんだとか。

木質バイオマスエネルギーの活用が活発な同国の大手メーカーが製造するボイラーだけあって、「効率的かつ安定的に湯を温めてくれる」(荒木さん)そうです。

また、施設内に電力を供給するための太陽光発電パネルを設置し、災害時には避難所としても開放するなどの取り組みも行っています。

「駐車場には68台の車がとめられます。電気も自前で湯も沸せますから、災害時・緊急時にも対応できる。使わないにこしたことはないですが、地域のみなさんが少しでも安心できる場所になれたらいいと考えました」(荒井さん)。

機械の数値はすべてこの画面で管理しているんだとか。
「はじめてのことだらけで、異常がある度に大慌てでしたよ(笑)」と、荒井さん

地域に恩返ししたいとの思いが少しずつ結実を

着工から3カ月後の2023年12月13日、おおよそ3千平方メートルの敷地に、鉄骨平屋建て延べ約700平方メートルの「37BASE」が待望のグランドオープンを。

大浴場やサウナ、岩盤浴など「施設内の細かな点は、お客さまの声を聞きながら少しずつ改善していきたいです」と。

コロナ禍以降、近隣にあった温浴施設は閉業や未だ休業中のところも。そういった状況下でのオープンだったということもあり

「地域のみなさんにも喜んでいただいています。連日多くのお客さまに来ていただいています」と、目を細めてやわらかい表情をする荒井さん。

「最近、県内はもとより、石川県からいらっしゃる若いリピーターのお客さまも増えました。若い年代のみなさんを中心に、お子さんから高齢の方まで気軽に訪れていただける施設にしていきたいです」(荒井さん)。

「家族3世代が集まって、7つのコンセプトを楽しんでいただける憩いの基地でありたい」との思いは、着実に地元の人たちに伝わっているようです。

37BASE
■住所:富山県南砺市岩屋16-1
■営業時間:前9:00〜後11:00(最終受付後10:30)※不定休
■利用料金:[平日]大人=700円、小人(3歳〜小学生以下)=400円/[土・日・祝]平日=800円、小人(3歳〜小学生以下)=400円
※岩盤浴=500円、O2BOX(酸素カプセル)=30分2,000円〜利用可
※詳細は公式HPからご確認ください。

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