◆「誰と、何をするか」にも、徹底してこだわる理由
――装置としてのサウナ、だけじゃないものを。
「そう。1号棟や2号棟のとき……とくに2号棟のカクシは遊び心を入れて、2階建てで作ってみたんですね。で、出来上がってはみたけど、断熱とか換気の量のバランスとかで、あったまるんだけど時間がかかるとか。正直、今だから言えるけど、そういう失敗もいっぱいしてきたんです(笑)。
でも、そういうのを本当に一つずつ全部直し続けて、良くしながらここまできたんです。Saunologyさんっていう方がいるんですが、その方たちのめちゃくちゃマニアックなブログとかを読んでヒントにさせてもらったり、まさに試行錯誤して、一喜一憂して。『科学だね~!』とか言いながら(笑)」
――はい。
「そのSaunologyさんも以前からの知り合いというか、いろいろお世話になっているんですけど、彼らのブログの『素材について』みたいなテーマを読んで、熱を反射する素材は何か、逆に熱を吸収する素材には何があるとかを学んだりして。もう、そういった知識やアップデートしてきた経験を、今回のコルメとネリャには、最初からすべて詰め込みました」
――知見や蓄積がすべて生かされている。
「そうです。だから、僕たちも新しいサウナのオープンのときは、これまではずっとドキドキしてましたが、今回はそれがなかったですね。実際に、最初からバチーンってハマりました。思い通りのものは、もうある程度作れるかなって自信も、今はあります。
で、何が言いたいかっていうと、今までそうやっていろいろ苦心もしてきましたけど、それは絶対に無駄ではなかったっていうこと。逆を言うと、僕たちがやるんだから、これからも僕たちの面白いと思うこと、やりたいことをやる。そうすれば、経験と同時に、愛着も愛情もさらに出て来ますからね。そういう思いもすべて詰まっています」
――本当に「プラスオン」の積み重ねですね。
「それと、もうひとつ意識していたのは……これは僕たちがずっと大事にしてきていることなんですが、『誰と何をするか』ということ。Saunologyさんもそうですが、これまでこの『The Sauna』の運営にあたって重ねてきたお付き合いやご縁を元にしつつ、“この人だ”って思える部分や、“これだ”って確信が持てるものを、きちんと形にしていきたいんですよ」
――「信頼」とか「こだわり」とか。サウナへの「本気の愛」とか?
「はい……そんな感じですね。だから今回も、小屋の材料も知り合いから木曽のヒノキの古材が余っているという情報を聞いて、それをもらってきたもので全部やっていますし、それを組んでもらう大工さんも以前に他のサウナのプロデュースをした際に知り合った方にお願いしています。ストーブも、以前からの信頼できる知人からお世話してもらってますし、蒸留するアロマ一つにしても、ここでかつてヘルパーをしてくれていた子に仲介してもらって仕入れたりとか。値段が安かろうが高かろうが、手間が増えようが」
――そういう思いって、実は施設のあちこちに滲み出て来ますよね。
「細かいことかもしれないけど、大事だなと思うんですよ。いま言っていただいたように、そういうひとつひとつのことはお客さんにも伝わるとも思いますし。さっき『大垣サウナが好きすぎる』って言いましたけど、僕たち自身もずっと愛される施設になりたいし、それこそ何十年後かに、誰かにとっての『ノスタルジックサウナ』になっていたいですからね(笑)」
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