「こんな光景みたことある!?」と思わず誰かに言いたくなるような、異次元の世界が広がるのが、山形県東玉置郡高畠町に位置する「高畠町太陽館」。
この高畠町太陽館は、駅からすぐ……という表現が正しいのか、はたまた駅に隣接している、という表現が正しいのか、取材をさせてもらっても答えが見つからない不思議な感覚になります。そう、高畠町太陽館は奥羽本線または山形新幹線を降りて、高畠駅の改札を通りながら横を向くと……もうそこにはのれんがかかっている、なんとも面白い光景が!
この珍しい高畠町太陽館には、旅行客はもちろんのことながら、地元の人にも愛される空間がありました。SAUNA BROS.vol.7でもご紹介しましたが、今回SAUNA BROS.WEBでは、改めて深堀りしていきたいと思います。
旧高畠駅と現在の高畠駅
JR山形新幹線と奥羽本線が走る高畠駅。この高畠駅に近すぎ……というか隣接しているのが「高畠町太陽館」です。電車を降りてホームにある改札を出て、10歩も歩けばすぐに高畠町太陽館の受付が。改札を通りながら、横を向くと太陽館ののれんがお出迎えしてくれます。普段使用している駅では絶対に見られないこの不思議な光景に……ワクワク。
1992年、山形新幹線の開通と同年にオープンしたのがこの「高畠町太陽館」。もともと今ある、高畠駅は無人駅の「糠野目駅」でしたが、山形新幹線の停車駅になるということで、高畠駅に。では、“旧高畠駅”はどこにあったのか……。
高畠町内の別の場所に旧高畠駅はありました。現在もその跡形はあり「高畠広場(旧高畠駅跡)」という名称で、機関車や貨物電車が保管されています。
旧高畠駅はもともと木造で、1934年に地元の特産の高畠石を使用した石造り建築の駅に改修。現在まで、大切に保管され続けています。
さっきまで電車に乗っていた……のに、もうサウナ室!?
さっそく気になる、高畠町太陽館へ。
のれんをくぐり、券売機にて入浴券を購入します。入浴料は大人400円となんともやさしい価格。400円でサウナと温泉が楽しめる……関東近郊ではなかなかみられない価格設定に心がグッときます。
入るとどこか懐かしさを感じる……ホッとするような感覚に。
男女それぞれののれんをくぐり、脱衣所へ。ロッカーがあって、洗面所があって……至ってシンプルな作り。壁の色合いや雰囲気こそ若干違うが、男女ともほぼシンメトリーです。
サウナ室も男女ともほぼ同じ大きさ。L字型ベンチの2段式で4、5人は入れます。
100℃設定にしているというが、そこまでの温度を感じない、なんだか居心地の良いアツさ。サウナ室内の木の独特な香りに包まれながら、自分の世界に没頭できる感覚。このコンパクトさがそうさせているのか、それとも年季の入った落ち着いた木の色合いがそうさせているのか……分からないのですが、何も考えずにただボーッとサウナが楽しめます。
数分、サウナに入っているとしっかりと汗をかき始め……いつの間にか滝汗が!
ふと我に帰ると、つい数分前まで新幹線に乗っていたということ、ここがほぼ駅だ、ということを思い出したのですが、そんなことも忘れるような空間。でもやっぱり、すぐそばには、新幹線と電車が走っていて、それに乗ってくる人も、待っている人もいるホームがあると思ったらやっぱりちょっと不思議です。
サウナ室を出たら、水風呂と休憩スペースがある露天エリアへ。浴室に入った瞬間に内湯に水風呂がなかったことはチェック済み。サウナ室横の「水風呂」と書かれたドアを発見していました。じゅうぶんに温まった体を早く冷ましたくて、ちょっと足早になってしまいます。
実際に「水風呂」と書かれたドアを押してみると……露天エリアというよりかは、半露天エリアを発見。半露天エリアなのは、スケルトンの壁と天井で覆われているから。窓は空いているので、外の空気は入ってきます!
この半露天エリアを出るとまず、目に入ってくるのが半月型の浴槽。この浴槽こそが最上川水系の地下水を使用した水風呂。やわらかい水質でキンキン……温度計こそないのですが、体感10℃前後の水風呂は、アツアツの体をよく冷ましてくれます。
休憩用の椅子は2脚。ボーっと上を見るとスケルトンの天井から澄んだ景色が楽しめます。
水風呂の淵に座って、休憩している人もちらほら。コンパクトなスペースながら思い思い、自分に合ったスタイルで過ごしています。
内湯には存在感のある大きな浴槽の温泉が一つ。この温泉ですが、かつてあった「むくどり夢館 温もりの湯」(2022年に閉館)から引いてきています。閉館後も温泉だけでもと利用しているんだとか。いつまでも地元民から愛されていることがよく分かるエピソードに心も体も温まります。
サウナの後は2階でのんびりもよし! 思いのままに過ごせます
浴室を出て、身支度を整え、ホームに向かおうか……と思っていた時に、2階に上がる階段を発見。
上がってみると……休憩エリアがありました。(入浴料+200円で利用可)。広々とした座敷と個室の2部屋が完備されています(個室は1時間500円で利用可)。
電車をのんびりと待つ旅の途中のお客さん、地元の方が将棋を指したり、早々にお酒を飲んで楽しんだり……Wi-Fiが完備されているので、作業をしたりと、使い方は人ぞれぞれ。施設側も特に使用方法は設けていないらしく、各々自由に楽しむ様子にこれまたほっこりします。
キャプション:個室から見えるホームの様子
売店もホテルもレストランも!
高畠町太陽館ですが、温浴施設だけでなく、売店やレストラン「駅のやきにく屋さくらんぼ」、宿泊施設「ホテル フォルクローロ高畠」も併設されています。
実は、改札を抜ける時にお風呂ののれんと一緒に気になっていたのが、玉こんにゃくの甘辛い匂い。売店には、作り立ての玉こんにゃくや山形産銘菓の「ミルクケーキ」が販売されています。
「ホテル フォルクローロ高畠」も高畠駅直結。編集部一行も宿泊したのですが、部屋によっては窓から、新幹線や電車の発着陸やホームが見え、これまた興奮です。電車好きにはたまらない光景……!
さらに、嬉しいのが「ホテル フォルクローロ高畠」に宿泊すると高畠町太陽館の入浴チケットがついてくること♪
高畠駅は浜田広介の関係あり!?
この高畠駅ですが、実はあの童話作家「浜田広介」と関連も。浜田広介が山形県東置賜郡高畠町出身であることから、高畠駅のメルヘンな佇まいの外観になっているんだとか。
どうりで、駅舎の至る所に「泣いた赤おに」を文字った、「泣いた、たかはた」のポスターがあるわけだ、と妙に納得しました。ちなみに、先ほど記した、「むくどり夢館 温もりの湯」の隣には「浜田広介記念館」もあるので、高畠町太陽館でしっかりと温まったあとは、ちょっと足を伸ばして高畠町巡りもいいかもしれません。
愛される理由はしっかりとありました
過ぎ去ってきた長い年月こそ感じる建物ですが、どこをみてもきれいに掃除が行き届いていて、清潔感があります。ほっとする、アットホームな雰囲気が落ち着く要因だけでない……そうか! この清潔感も相まってなのかと納得。
日々の清掃はもちろんですが、どうやら、月に一度の定休日を利用して、館内を全員で大掃除をするんだとか。
SAUNA BROS.vol.7では、「駅から近すぎサウナ」として取材、紹介をさせてもらいました。確かに電車を降りて、改札を出るとすぐにあるのれん、そこから広がる光景が不思議でします改札を出たら…10歩でサウナ施設に! 駅近すぎる山形・高畠町太陽館①。でも、ただ珍しいだけではない、地元の人からも、初めて来た人からも愛される理由がきちんとありました。
他では見られない不思議な光景と愛される理由を体験しに行ってみてはどうでしょうか?
次回、高畠町太陽館館長の土屋浩二さんへのインタビューをお届けします。高畠町太陽館の歴史や施設全体のことをお伺いしました! 近日中公開予定です。
高畠町太陽館
■住所:山形県高畠町山崎200-1
■営業時間:前7:00〜後10:00(最終受付後9:30)
※サウナは前10:00〜くらいからスタートします。
※冬の期間は前7:30〜後9:30 (受付終了後9:00)
■料金:【入浴料】大人(高校生以上)=400円、小人(3歳以上)=100円【休憩】大人(高校生以上)=200円、小人(3歳以上)=100円【個室】1時間=500円
※その他詳細はこちらからご確認ください
「SAUNA BROS.vol.7」
■発売日:2023年12月13日(水)
■定価:1,137円
SAUNA BROS.STORE(https://saunabros.stores.jp)でも販売中! 全国の書店などでも購入できます。
撮影/岡本武志