日本と北欧。異文化のスタイルを共存させた「しずく」若旦那の思いとは

2024年10月10日

快適に入れるようにディテールにこだわったサウナ室

――サウナ室のこだわりを教えてください。さっきも少し話しましたけど、部屋の中心にあって、まるでひと部屋かのように溶け込んでいますよね。デザインもすてきです。

「入口が木枠のサウナが多いのですが、部屋にいるパートナーや友人と会話を楽しみながらフランクに入ってもらいたくて、ガラス張りのドアを採用しました。また、一瞬サウナ室だというのがわからないようなデザインにしたくて。というのも旅館って、1枚の写真でお客さんが来るか来ないかが、決まったりするんですよ。そうなったら、やっぱり写真を撮ったときに、映える見た目にしたくて。伝えやすさの点で、写真1枚でいかにこのサウナ旅館に来たいと思ってもらえるか、というところを念頭においてデザインしました」

――サウナ室の香りもとてもいい香りです。

「エストニアの高級な木材を使っています。セルフロウリュしたときに木が湿気を含んで、いい香りに。これはぜひ、体感してもらいたいです」

――部屋サウナなのに、セルフロウリュできるのが最高です！

「フィンランドの人のロウリュって、豪快ですよね（笑）。個室サウナだから気にせずロウリュをする喜びもあるかなと思い、ストーブはロウリュできるもの一択でした。ほかにも富士山の溶岩プレートで包んで遠赤外線の力で体が温まるような仕組みにしたり。とはいえ客室内にあることで、消防的にもいろいろ考慮するポイントがあって大変でした。安心して泊まっていただくために、消火器は完備しています。また、断熱材を入れているので、他の空間に熱さが移動しない工夫もしてあります。しずくでは安全面を考慮して、小学生以下のお子様は宿泊不可とさせていただいています」

――確かにサウナが部屋にあっても、他の部屋の温度は快適です。ほんのりと暖かい程度なので、山中湖が寒くなる冬場は逆によさそう。暖房要らずで過ごせそうですね。

「はい。快適に過ごしていただけると思います。あと、しずくのサウナにはフィンランドらしさがもう一つ。サウナ室の下に穴が開いているので、どんどんフレッシュエアーがサウナ室に入ってくるんです。排気口から古い空気が出ていって、空気がうまく循環するようにしました。日本のサウナが息苦しく感じるという人がいるのは、密閉されているということもあるかと思います。とくに女性の方は、苦手だったりしますよね。しずくのサウナは換気がしっかりとしているので、その点いいと思いますよ」

富士山の水風呂、そして大自然を目の前にして休まる

――水風呂は、富士山の水を？

「富士山の水を地下から汲み上げていて、低い水温でも肌当たりがとてもまろやかで痛くないんですよね。だから、水風呂が苦手だという人も、水風呂を好きになっていただけるかと思います。気持ちよくて、何度でも入りたくなるんですよ。そして、飲めますね」

――水温は、何℃ぐらいになるのですか？

「12〜15℃ぐらいを推移します。山中湖の自慢は、やっぱり水。富士山の水風呂に入るために関東から来ました、という人が多賀扇時代にもたくさんいました。富士山の源泉を全室に引き入れるのは、だいぶ難易度が高くて苦戦したんですけど、どうにか実現できました。水風呂にはお湯も溜められて、お風呂のように入っていただくこともできますよ」

――景色も最高！　バルコニーから富士山を見ながら休めるなんて、ぜいたくすぎます……。

「そうですね。これは山中湖の特権です。僕はやっぱりサウナって、景色が重要だと思っていて。自然の中にあるサウナが好きですね。全室見える景色は微妙に変わってきますが、どこもいちばんいい景色を切り撮れるように設計しています」

――山口さんのサウナの入り方は？

「おいしいビールを飲んで、おいしいごはんを食べるために、サウナに入る。何分経ったから出る、とかそういうのを考えず、あまり何も考えてないし、自由ですね。テレビのない、暗いサウナが好きです。やっぱり、フィンランド旅で見てきたサウナの影響は大きかったと思います。最近行って良かったなと思うのは、『渋谷SAUNAS』。フィンランドサウナがベースになっていて、いろんなタイプのサウナがあって、とても楽しかったです」

――フィンランドサウナの醍醐味が、そこかしこに散りばめられている全室個室サウナ付きデザイナーズ旅館しずく。最高の施設ですね！

「サウナを一から作るって本当に大変なことですが、僕たちはベースの多賀扇があったので、恵まれていたと思います。サウナ好きの方にはもちろん、サウナに入ったことはないけど興味がある……いろんな人に来てほしいです。しずくに来てサウナにハマってくれたら、最高ですね」