日本と北欧。異文化のスタイルを共存させた「しずく」若旦那の思いとは

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フリーダムな楽しみ方を求めてもらいたい! 全室サウナ付きへの思い

――なるほど、そういった点にインスパイアされて客室への個室サウナを作られたんですね。個室サウナなら、ルールに縛られずに楽しめますし!

「客室個室サウナなら、フィンランドで僕が感じたサウナのフリーダムさを実現できるのかなとひらめきました。ノールールで楽しんでもらいたかったのが、全室個室サウナ付きにした大きな理由でもあります」

――他に、フィンランドのサウナにインスパイアされた部分ってありますか?

「『基本的に男女水着着用の共用サウナである』ということと、『おしゃべり自由』であるということです。ここがフィンランドでは一番印象強くて、日本と違うと感じました。個室サウナなら、友人やパートナーと楽しく入ることができますよね」

山中湖の冬の寒さをポジティブに変換

――しずくの立地は、目の前に大きな山中湖が広がっていますよね。フィンランドで一番良かったとおっしゃった『Villa Järvelä(ヴェラヤルヴェラ)』に環境が似ていることも、リニューアルの大きなヒントになりましたか?

「そうなんです。山中湖は県外の方から見ると、観光地で栄えているイメージがあるかもしれないのですが、実は観光客もまばら。宿泊する人も、そこまで多くはありません。河口湖と比較すると明らかです。河口湖は大きな駅もあるし街に活気もありますが、山中湖はがらんとしていて、あまり宿泊施設もなくて……。なので、多賀扇をリニューアルする際に、ただおしゃれなインテリアのホテルにするくらいでは人が来ない、何かここに来る理由が必要だと思いました。『山中湖へ行きたいから泊まる宿』ではなく『この宿に泊まりたい』と思わせる何かがないとダメだ、と。山中湖は2021年の東京オリンピックで自転車の会場になったこともあったので、自転車をコンセプトにする宿にしよう、なども考えたりしたのですが……」

――いろいろとプランを考えられた上で、サウナ特化のデザイナーズ旅館になったわけですね。

「僕がもともとサウナが好きというのももちろんあったのですが、山中湖に人が来ないのは冬が寒いから。だからサウナを推したらいいかなと思ったんです。山中湖では、1月2月はマイナス20℃ぐらいに気温が下がる日もあって、本当に人がいなくなります。どこの店も、シャッターがしまってしまう。ネガティブでしかないその現状を、なんとかポジティブにしたいなと思って。そうなったときに、『あ、サウナじゃん』となりました。フィンランドと、環境が似ているんですよね。いろいろなサウナを巡って実感したのは、いいサウナって水や空気、眺望に恵まれているということ。これって、山中湖の魅力と合致するのでは、と腑に落ちたんです。それで、どんどんプロジェクトが進んでいきましたね」

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