建築家が手掛ける、進化系サウナ「CYCL」。細部のこだわりとは

「大自然のふもとにサウナを作る」。そんな壮大な計画だったゆえ制約が少なくなく、環境省による自然公園法に基づく厳しい環境基準をやっとの思いでクリア。構想から約2年半という月日が流れ、満を持して2024年4月26日に、山中湖のほとりにオープンしました。

施設のアイコン的存在でもある展望ラウンジはもちろん、1階のサウナスペースは、細かい部分にまでオーナー・西口さんの「サウナで本当の意味での癒しを感じてほしい」という思いが、ふんだんに詰まっています。

セルフロウリュができる「HARVIA」製のストーブが中央に置かれたサウナ室は、ヒバの木で作られているからこその適度な湿度を保ち、セッティングは絶妙。お楽しみの水風呂は、富士山系の天然地下水を贅沢に掛け流し。そしてクライマックスの休憩は、空にぽっかりと浮かぶ富士山を遠くに見ながらの外気浴。サウナ体験で感じる一つひとつについてのこだわりを、オーナー・西口敦さんにお伺いしました。(1回目では豊富な写真とともに、サウナ室、水風呂、休憩スペースなどの詳細&魅力を、2回目では「CYCL」ができるまでの経緯について掲載しています。未読の方は、ぜひあわせてお読みください)

目次

「富士山」にもたれかかり、「富士山」を眺める

ーーこれまでたくさんのサウナを訪問しましたが、こんなに眺めのいい展望ラウンジは、はじめてです! スケルトンの窓からどーんと大きい富士山の姿が見えて、まるで絵画のよう。感覚が研ぎ澄まされているサウナ後だからこそ、錯覚を起こしてしまいそうです。

「山中湖の向こうに、富士山がシンメトリーの形で美しく見えるように、角度などこだわって設計をしました。展望ラウンジの中心には、富士山を模した構造体を置いています。ここに体を預けて、リラックスしてもらうという意図です。この構造体の下は、ちょうど1階のサウナスペースになっています。富士山の下にあるマグマ溜まり=サウナ、という、遊び心も込めて。また、構造体の天井部には天窓と通気口を設けており、自然光と外気が各室に届くように設計しています」

――展望ラウンジの中心にある富士山の下が、サウナというわけですね。ということは、サウナ室で見上げた天井がこの柱の内部。どうりでサウナの形が多角形というか、ユニークな形をしているなと思いました。

「多角形で山を表現するのは、とても大変な職人技です。サウナ室から天井を見上げてみるとここの内部がどういう構造になっているのかを見ることができるので、ぜひ蒸されながら、ぼうっと観察してみてください。おもしろいですよ」

――360度パノラマのガラス張りも、すばらしいです。山中湖と繋がっているような気さえして、湖のゆらぎを眺めていると、時間を経つのも忘れてしまいます。

「僕も『CYCL』を作るにあたりはじめて知ったんですけど、建物の構造計算をする専門家の方がいて、その方に緻密に計算をしてもらい実現したのがこのガラス張りです。この形を実現するために、どういう構造にすれば屋根を支えられるか。普通じゃできないことを、成し遂げてもらっているんですよね。この建物は、真ん中の富士山を模した構造体だけで支えられているんです」

――すごいです。視覚はもちろん、触覚も刺激されます。畳の踏み心地も気持ちよくて。

「畳についても、張り方がとても特徴的であえての斜め張りをしています。これは単純なことのようでいて、建築目線で見ると結構大変なことのようで。ありがたいことに『CYCL』はサウナ好きだけでなく、建築関係の方にも注目してもらっているようでして。建築ラバーがうなるポイントも、随所にあると思いますよ。ちなみにこの畳は、あえて本物のい草を使っていません。サウナ後に歩くと床に湿気がどうしてもこもりやすいので、防水加工を施しました。そのため多少の湿気を含んでも気になることなく、快適に過ごしていただけるかと思います」

色調、インテリア、照明。目に映る全てが洗練

――外側の建築デザインもすばらしいですが、内側のインテリアなど、細かい部分もすべてにおいて、計算されたデザインが採用されているなぁと感じました。

「1階のサウナスペースと、2階の展望ラウンジは『陰と陽』とでも言うんでしょうか。1階は、富士山の下のマグマ溜まりの部分ということもあり、グレーを基調にした地下のほの暗い雰囲気に仕上げています。照明のトーンも抑え気味に。フィンランドのサウナにも通ずるようにしています」

――サウナって自分の内面と向き合う行為でもあるので、ほの暗い感じが、逆にいい。落ち着いてサウナを堪能できました。

「一方で、サウナを終えて2階へとのぼってくると、全面ガラス張りで日中は自然光が入り、圧倒的に明るい空間に。まさに一気に地上に出た、という感じです。1階とのコントラストが強いので、より2階でするサウナ後のリラックス体験を、開放的に感じていただけるのではないかと思います」

――今日はとても天気がよくて2階の展望ラウンジは見晴らしもよくとても明るいですが……。雨が降ったりなど、気候や季節によっても感じ方が変わりそうですよね。夜は周りがライトアップされたり?

「建築家・百枝さんのこだわりで、エントランスのアプローチの部分に、調光アーティストの方に監修していただいたライトを仕込んでいます。その時間帯で一番心地よい照明の具合に自動でなるようなプログラミングがされたものです。夜は山中湖ならではの静けさを体感してもらうために、ライトアップしすぎず、灯りを極力少なくしています」

――わぁ。ここに泊まれたら最高ですね。

「そうですよね。施設に宿泊することはできないのですが、今後はアーティストの方を呼んでライブしたり、サウナにちなんだ対談会をしたりなど、イベントスペースとしての活用も考えています。過去には『茶道とサ道』ということで、お茶会のイベントをしたことも。夜の時間帯も含めていろんな可能性があると思うので、なにかおもしろいことができたら、と考えています」

最高の景色を前に食べる、絶品のスイーツ

――こちらの展望スペースには、バーカウンターもありますね。

「アフターサウナの時間をおいしいスイーツとともに楽しんでもらいたい、というのが僕のサウナ作りのストーリーのコンセプトに中心にありました。デザートは、「自家製プリン」と「フルーツポンチ」と「柚子シャーベット」から選んでいただけます。いずれも実家の果物店から仕入れた新鮮なフルーツで作った、自慢の一品です」

――予約内にフリードリンクとワンデザートがついているのもうれしいです。女子はとくに、うれしいんじゃないでしょうか。でも、最近はスイーツ男子も多いですし。全人種にとって、うれしいですね(笑)。

「ソフトドリンクはフリーで、アルコールについては追加のご注文いただければご提供できます。富士山のクラフトビールやハイボール、クラフトチューハイなど、地の利をふんだんに感じていただけるようなセレクトにしています」

――サウナ後にアルコールで、ふわっとなるのもいいなぁ。ずっとここにいてしまいそうですが、1枠は2時間半ですよね。タイムキープはみなさん、自己管理でされているのですか? 

「そうですね、とくにこちらからのお声がけはしていないので、自己管理をお願いしています。もし延長を希望された場合は、30分700円で承っています」

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