東京・大田区の下町エリア、雑色(ぞうしき)に、3月10日にオープンした「COCOFURO たかの湯」。昭和20年代に創業した銭湯「隆の湯」を、株式会社楽久屋(らくや)が営業を引き継ぐかたちでリニューアルしたサウナ付きの銭湯です。オープン初日から多くのサウナ好きが訪れ、早くもSNSや「サウナイキタイ」への投稿などでその満足感を表明していますね…。当サイトでも前回のエントリーで、そのポテンシャルとさまざまな仕掛けをご紹介させていただきました。

注目を集めているのは、これまでの「銭湯サウナ」の常識から“はみ出して”いる(!?)、ホスピタリティーとエンタメ感。象徴的なのは30分に1回のオートロウリュ時に体感できる「爆風ミュージックロウリュ」ですが(ぜひ前回記事もご覧ください!)、料金や営業時間の設定からして、運営する楽久屋の「哲学」みたいなものが織り込まれている気がしてなりません。

楽久屋が「COCOFURO たかの湯」で目指すものとは? 同社の内田茂樹社長にお話をうかがいました。

◆「減ってはいても、23区内の銭湯ってドトールより多いんですよ」

――昨年末に久が原の「COCOFURO ますの湯」さんも取材させていただきました(「SAUNA BROS.vol.3」に掲載)。「COCOFURO」ブランドの2店舗目になりますね。

そうなります。

――「たかの湯」さんも、地域で営業されていた老舗の銭湯さんの営業を引き継がれたというかたちですよね。

そうですね。「COCOFURO たかの湯」は、70年近く営業を続けられてきた「隆の湯」さんという銭湯を引き継ぐかたちでリニューアルしました。ご主人の体調などの理由で営業の継続が難しくなった、というご相談を受けて、ぜひ我々のほうでやらせてくださいと。賃貸でお借りして、設備投資、改装をさせていただき、運営していくかたちです。

――銭湯を引き継いで残してもらうというのは、銭湯好きにとってはとても嬉しいです。

銭湯って、コミュニケーションの場でもありますよね。その街にとって大切な存在だと思うんです。どんどん数は少なくなってしまっていますが、ただ、実はまだ東京でいえば23区内に400軒以上あるんです。正直、そんなにあるのか? って思いますよね。ドトールよりも多いんですから。

なのに目立たないのは、言い方は難しいんですが… 。ひょっとすると“埋もれてしまっている”のかもしれないな、と。

――そうですね。ずっと前からそこにあるのが当たり前、という感じで、あらためてアピールしたりはしていない銭湯も多い気はします。

それと、どうしても設備が古くなっているところもあると思うんです。そういう、あまり良くない循環みたいなものが背景にあって銭湯が減っていってしまうなら、やりようもあるのではないか、と。

時代に合わせて設備を新しくしたり、機能的にしたり、少しスタイリッシュな側面を出したりしていけばニーズはあるのだから、という考え方ですね。

配管を含め、古い設備をリニューアル
「壁面の細かいタイルによるモザイク画は残したかった」そう

◆突き抜けた「楽しいサウナ」にしたかった

――「ますの湯」さんも、黒湯の天然温泉がある、というのを前面に出していらっしゃいましたし、この「たかの湯」さんは「サウナ」にかなり注力されています。大きな強みをアピールしたり、作っていくということなんでしょうか。

そこは、おっしゃる通りです。アピールしてたくさんのお客さんに来てもらいたい。そして、残していきたいという発想です。

――こちらのサウナは、本当に力が入っているというか、スゴいですよね。

私自身、コロナ禍になって以降、気持ち的な部分などでサウナに入って助けられる部分が多かったんです。銭湯であっても、あのサウナ室の熱さから冷たい水風呂に入ったときの心地よさは、多くの方に提供したいと思っているので、今回、大きく改造しました。以前は4~5人が入れるくらいのサウナ室だったんですが、できる限り大きくしたいと。一回り大きく、そしていろんな熱さを楽しめる3段のかたちにしました。

――ストーブも、今まで見たことのないもので。

そうですね。ロウリュの熱さを楽しんでいただきたかったので、ガスストーブで大量の水かけにも強いもの、かつ、省スペースで、と。ヘルシーサウナ社さんという業者さんに相談したところ、そのオーダーを全部聞いていただいて設計してくださったのがあのストーブです。

――ロックフェイス(=岩の顔)という名だそうですね(笑)。その名の通り、大量の石に、大量の水がかかっていました!

すごいでしょ(笑)? オートロウリュは30分に1回(毎正時と30分)、行います。各回とも、まず30秒間水を出した後、ダクトから風を吹かせ始めます。そして30秒経ったら、おかわりの水をさらに30秒間かけるという設定ですね。

――ちょっと、街の銭湯ではあの水の量と熱さは経験したことがないです。そして、あの爆風と音楽&赤い光に包まれるという…。

ものすごく熱い。そしてすごく楽しい。それを味わっていただきたい、という思いがありました。サウナって、初めて体験される方の中には「気持ちいい」のほかに「熱いけど、ちょっとつらいな」と思われる方もいると思うんですよね。そこに音楽などを加えることで、「なんか楽しいなぁ」となってもらえたらと(笑)。

大量の水に加え、風が約4分半、吹き荒れます。まさに爆熱風!
やや不穏な(笑)、赤い照明も、ものすごい視覚効果!

――はい。ものすごく高揚して、つらいどころではないです(笑)。

温度じたいは男湯のサウナ室は94℃くらい、女湯は85℃くらいを想定していますが、それに加えてあのロウリュと風による熱さ、そして音楽や光といった視覚・聴覚への刺激などで頭の中が真っ白になるような……(笑)。そういうサウナをつくりたかったんですね。

――あの「ミュージックロウリュ」のエンタメ感は、唯一無二かもしれません。同じく楽久屋さんが経営されている千葉・南柏の大型施設「すみれ」では体験しましたが、あれが銭湯で体験できる、という衝撃があります。

実は、今回は「飛び抜ける、突き抜けたい」と決めていたんです。少し激しめでも楽しいサウナにしてみようと。「サウナが楽しくてもいいじゃないか。サウナが楽しくて、何が悪い」くらいの(笑)。このあたり(雑色の近辺)には、実は銭湯サウナも含めてたくさん施設があるんですよね。そこに穏やかなサウナはあるんです。なので、穏やかなタイプが好きな方には、そちらへ行っていただくという選択肢もあるかな、と。

銭湯って、やはり中高年以上の方がコアな層ではあるんです。ただ、サウナは若い人が多くなってきている。サウナへ来た若い方に「つらいな」ではなく「ああ、サウナって楽しい。また来てみたいな」と思ってもらい、温浴施設やサウナつきの銭湯によく通うようになってほしい。そのきっかけにもなれればという思いがありました。

とはいえ「ミュージックロウリュ」のない時間帯は、テレビも置いていませんし静かに自分と向き合ってもらえます。“静”と“動”を選んでいただけて、どちらの良さも知ってもらいたい、そんなサウナ室にしたかったんですよね。

――かかる音楽も、多種多様ですね。

お客さまの年代が幅広くなることを想定して、1日につき3つの楽曲を順番にかけるようにしています。昭和歌謡とか昭和のポップスから、少しあとの平成の曲、そして最新の曲というセットリスト。それを31種類用意しました。1カ月間、毎日いらっしゃっても、必ず違う曲が楽しめるように。あ、JASRACさんの許諾も得ています(笑)。

ファイル帳の1ページ分が1日分。これが31ページあります。懐かしのシングルCDも!

――水風呂も13℃前後で90センチの水深。そして“ととのいイス”の数も多く、37℃前後の高濃度炭酸泉も…と、サウナ室のあとの流れも、サウナ好きにとってはたまらない感じです。

あの熱々の爆風ロウリュ後には、このくらいキンキンな水風呂が欲しいな、と。深さも構造的に可能なギリギリを指定して造ってもらいました。そして、いわゆる“ととのい難民”が出ないように、イスも置けるだけ置こうと。休憩中に頭の上に風がくるよう、扇風機を回したりもしています。そのイスでのととのいもいいですが、実は冷冷交代浴を皆さんが楽しめるように、炭酸泉もとにかく広くしたいなと。ここのサウナ室➝13℃の水風呂➝高濃度炭酸泉、という流れは、私自身オススメですね。

他の浴槽より深く造られた水風呂。キンキン♪
やさしい風が頭上から降る…。ここは“特等席”?
スーパー銭湯なみに広い高濃度炭酸泉。冷冷交代浴……。よきです!

◆「サウナに目覚める人」を増やしたい。そうやって銭湯をアクティブに!

――湯上がりもドライヤーは無料ですし、このフロントも、マンガがあったり、快適なイスがあったり。

ストレスなくくつろいでいただきたいですからね。どうしてもスペースの都合上、あまり広くはないんですが、できるだけ快適に過ごしていただけるように、と。Wi-Fiはもちろん、スマホの充電なども自由にしていただけます。生ビールやちょっとおいしいソフトクリームなども置いていますので、ゆったりしてもらいたいです。

ドライヤーは無料。女湯にはダイソンも!

――フロントではさまざまなものを売っていて、それもお得でびっくりしました。梅干しや豚肉(!)まで、買えるんですね。

いつでも同じものがあるとは限らないんですが、「そのとき安く仕入れられる、お得ないいもの」を販売しています。これは楽久屋の施設として力を入れていることなんですが、お風呂屋さんって常連の方が多いじゃないですか。そういう方に手軽に好きなものを買う楽しみも持っていただけたらと。私自身、見るだけでも楽しいですけど(笑)。

写真では読めないかもしれませんが…上段の梅干し、100円(!)です
上質な黒豚の肉塊を、銭湯で安く買えるって信じられます?

――「ますの湯」さんもそうでしたが、この「たかの湯」さんも、これだけの設備をもってサウナ料金は無料の入浴料480円のみで楽しむことができる。それも毎日朝6時から深夜0時まで営業されているというのが、本当にうれしいです。

最初にも言ったんですが、銭湯の数って減ってはいますが、けっして廃れてはいないんです。ちょっと“潜在”してしまっているだけなんだと私は思っているんですね。なので、そこを掘り起こして脚光をあて、アクティブにすることが大事だと思っているんです。仕事の関係で朝や午前中にしか時間が空かない方もいらっしゃると思いますし、できるだけたくさんの方に銭湯やサウナの良さをまず知ってもらいたい。

長い時間、お店を開けておき、サウナも「無料なら、一度入ってみよう」というかたちにしておけば、目覚める人はたくさんいると思うんです。そうしたサウナ未経験の方も、サウナが大好きな方も楽しめる、そんな銭湯サウナを目指しました。ぜひ、ゆっくり楽しんでいただければと思います。

【COCOFURO たかの湯】
住所:東京都大田区仲六郷2-27-12
営業時間:前6:00~深0:00(最終受付:後11:30)
定休日:3月、5月、9月、11月の第3木曜日
料金:入浴料480円

撮影/長谷繁郎