日本古来のスモークサウナ!? 山口・阿弥陀寺の石風呂がスゴイ!

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静かな休憩タイム。水風呂がなくても、ゆっくり静かにクールダウン

何分くらい過ぎたでしょうか。15分? 20分? もう少しいたかもしれません。(個人的には)まだまだ入っていられる感覚でしたが、ほかの利用者の方もいらっしゃるので、ほど良いタイミングで一度、切り上げます。

扉を開くと、涼やかな外気が身体を包んでくれます。うわ〜、爽快。まさにその一言に尽きます。

シャワーも用意されていますし、すぐそばに清らかなせせらぎも流れているんですが……先述のように汗もサラリとしていますし、何より身体の芯からあたたまると、この外気だけでも十分に心地よくクールダウンできます。

いや、これ以上の急速なクールダウンは、むしろトゥーマッチかもしれません。静かに身体の熱がひいていくのをじっくりと愉しむのが、きっとここではベストなんじゃないでしょうか。

肌にのこっている石菖の“うるおい”も、そう簡単には流し落としたくない気もしますしね。


好きな場所に腰を下ろし、周囲を見ると……皆さん穏やかな笑顔です。おしゃべりしたり、ゆで卵(!?)を食べたり。うんうん。わかります。私自身もきっとそんな表情をしているんでしょうね。

え? そのゆで卵(でしょうか? 蒸し卵? いや、焼き卵?)って、先ほど石風呂内に掛けられていたものでしょうか?

「そうよ。お兄さんたちも食べてみい。旨いよ」(保存会の清水博美さん)。

たしかに! 美味しいです。いや、きわめて普通のゆで卵ではあるし、普通の味ではあるんですが。なぜだかめちゃめちゃウマいっす。

「そうそう、俺が持ってきてるやつだから。なんも特別な卵じゃあリゃあせん。普通の卵よ(笑)。でも、石風呂に入ると、なんだかお腹が空くからなぁ。だからウマいのかもしれんよね。ほら、何個でも食いなさい!(笑)」(保存会の山縣さん)。

次回=第2弾記事では、和の古式サウナのルーツと今後に迫ります

結局、何回、往復したことでしょうか。およそ2時間半ほど滞在させていただいたのですが、この「むろ」=石風呂への出入りが気持ち良くて、時間の許す限り堪能させていただきました。

やはり“余熱”ですので、少しずつ温度が下がってくるのが分かります。先ほど150℃を指していた温度計の針も時間の経過とともに、だいぶ穏やかな数字になってきました。日による(季節や天候)そうですが、夕方くらいには、90〜80℃台くらいまで下がるんだそうです。


よく来られるという女性にうかがったところ「朝いちばんも汗がたくさん出るし、(石菖の)香りも強くて気持ちいいけど、午後になり、夕方になると……(温度も)マイルドになるからもっと長く入っていられて」。

「足腰に疲れが溜まってるときはそのくらいの時間帯に来るの。ゆっくりあたたまると全身がずっとポカポカなんですよ。でも、朝も夕方も、どっちもオススメですよ。どっちにしてもすごく身体に効く気がするから(笑)」と。

いやぁ、800年以上も前に、こんなにも気持ちよい空間をつくり出していたとは。先人の知恵というのは、実にスゴイものだなと思います。そしてそれを800年以上にわたり受け継ぎ、つなぎ続けてくださっていることにも深い敬意と感謝を覚えます。


さて。こちらの阿弥陀寺。仁王門から続く石段を上ると、本堂や念仏堂などにお詣りすることができます。

また、自然や緑も豊かなこの山あいにあって、境内には四季折々の花が咲き誇るそう。とくに「西のアジサイ寺」とも称されるほど(約80種、4000株も植えられているそうです)、6月の紫陽花は見事なんだとか。


もしこの記事を読んで興味を持っていただいたものの、「5月の第1日曜日は、もう予定が入ってしまっているなぁ」なんて方は……6月を目指してみてはいかがでしょうか。


さてさて。実はこの阿弥陀寺には、石風呂のほかに「湯屋」というやはり蒸気浴をする施設が保存されています。こちらは大きな釜で沸かした湯を用いて、蒸気を浴びるスタイルの「室(むろ)」。石風呂とは種類がまた異なる、もう一つの“和の古式サウナ”といったところでしょうか。

こちらが「湯屋」になります

石風呂と湯屋。なぜこの阿弥陀寺には2種もの“古式サウナ”があるのか。そして、800年以上を経た今も伝え続ける思いなどについて、ご住職や保存会の皆さんにもお話を聞いてきました。

今回の記事では簡単にしか紹介できなかった「昔ながらの石風呂の焚き方」とあわせて、近日公開の次回記事=第2弾でそのインタビューもお届けしたいと思います。



東大寺別院阿弥陀寺 石風呂
■住所:山口県防府市牟礼上坂本1869
■営業時間:<毎月第1日曜日>前11:00〜後6:00
■料金:「薪代」として300円をお賽銭箱へ

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