日本と北欧。異文化のスタイルを共存させた「しずく」若旦那の思いとは

山中湖のふもとにある「山中湖畔の宿 多賀扇(たがおぎ)」が、2024年7月13日に全面リニューアルオープン。多賀扇の自慢であったサウナを構築した若旦那・山口哲弘(以下、山口さん)さんによる全面プロデュースのもと、さらにブラッシュアップしたサウナ特化型のデザイナーズ旅館として生まれ変わりました。

部屋風呂や部屋サウナが付いている施設は最近でこそ増えてきましたが、しずくは、「ただサウナが部屋にある」だけではありません。北欧デザインをふんだんに感じる門をくぐると、そこは完全にコンセプチュアルな世界。フィンランドのかわいいデザインで統一された世界観のなかで、自由にサウナを楽しむことができます。

今回は、「しずく」若旦那・山口哲弘さんにインタビューした2回目(前回の記事では、しずくのリニューアル背景やそもそもしずくとは? について掲載しています。未読の方は、あわせてお読みください)。山口さんがフィンランドサウナ旅でインスパイアされたことをしずくにどう取り入れたかなどについてを紹介します。

目次

最大12セット!? 気持ちよすぎるフィンランドのサウナ

――「日本一のサウナオーナーになる!」という野望を掲げて、サウナ旅に出た話を聞かせてください。フィンランドのサウナは、どうでしたか?

「まず初めに、フィンランドの最北端にあるラップランドのロヴァニエミへ。サンタ村がある地域です。泊まったアパートにもサウナがあり、それがフィンランドのスタンダードなんだと実感しました。そこからタンペレ、ヘルシンキと南下し、エストニアへ。オーロラが見えるイグルーサウナ、アートサウナ、最古のサウナ……など、とにかくいろいろなタイプのサウナをまわりました。しずくの若女将である妻と一緒に訪れたのですが、このフィンランド旅で、僕よりサウナに大ハマりしました(笑)」

――1日何施設くらいまわったのですか?

「移動日以外は、だいたい1日につきがんばって2〜3施設訪れていました。フィンランド旅では、全部で30施設ほどまわりました」

――ここが一番よかった! という施設を教えてください。

「トゥルクにある『ヴェラヤルヴェラ』という、湖のほとりにあるサウナです。気に入りすぎて、名刺の写真にも使っています。妻とも完全一致で、ここが一番でした。ここでは、凍った湖に『アヴァント』するんですよ。フィンランドのイメージが、ここにありました。水温はなんと1℃! 外気温は、マイナス10℃ぐらいだったと思います。僕らは入った瞬間、凍えていましたが、現地の人は氷を割りながらゆっくり泳ぐんですよね。すごかったです(笑)。違うタイプのサウナが4種類ぐらいあって、どれもすごく良くて。ここが一番忘れられない。気持ちよすぎて、12セットぐらいしました」

――12セット!

「フィンランドの人たちって、1セットが10分ぐらいと早いんですよね。外気がとても寒いんで、水風呂が外気浴。目の前が湖で、景色が最高によかったです。フィンランドを訪れたら、ここは必ず行ってほしいです。やっぱりサウナ✕湖って最強だなと、そのとき確信しました」

日本のサ旅で感じる、フィンランドの文化との違いとは

――フィンランドのみならず、日本のサウナもいろいろと行かれましたか?

「北海道から沖縄まで、いろいろなサウナへ行きました。どのサウナもよかったですが、やっぱり富士山を臨めるのってすごいんだなと実感しました」

――日本で一番良かったサウナは、どこでしたか?

「大分県の『寒の地獄旅館』です。水風呂も温泉で、それが本当に気持ちよくて。本当に山奥でいわゆる秘境のロケーションも、最高。ここはまた絶対に訪れたいと思いました。『また絶対に来たいと思う』というのは、僕のなかでいいサウナである基準のひとつなんです」


――山口さんは、フィンランドと日本のサウナの違いはどういうところにあると感じますか?
「フィンランドに訪れる前は、フィンランドサウナとはいわゆる『日本サウナの上位互換』といった位置付けで、サウナの最高峰=フィンランドサウナというイメージをもっていたんですよね。ですが、実際に訪れて入ってみると、日本のサウナとフィンランドのサウナは、そもそも文化が違うのだな、と思いました。フィンランドのサウナでは、おしゃべりを楽んだり、ビールをおいしく飲むんだりすることが日常なんだなって。僕はビールが大好きなんですけど、日本のサウナでは、ビールを飲みながらサウナに入れる場所は、あまりないですもんね」

――確かに、文化の違いはありますよね。ビールをサウナ室で飲むって、水分補給という意味では若干の不安がありますし……。

「フィンランド人と日本人は体の作りも違うんで、そのまま日本で実現するは難しい部分もあるとは思うんですけど。フィンランドのサウナの何がいいかって、ルールがあまりなくて、とにかく自由なんですよね。フィンランドのプライベートサウナを訪れたときも、『フィンランドのサウナはルールフリーだから自由に楽しんで』とスタッフの方に言われ、それがすごく良くて。日本でもよくフィンランド式サウナがありますが、僕の思うフィンランドサウナとは、ハード面でなくソフト面での『ノールール』で楽しく入るサウナ。自分の好きなスタイルで、気持ちよく楽しく入るのがフィンランドスタイルなのだな、と思いました。とはいえ日本のサウナ文化ももちろん好きなので、いいとこ取りをするサウナを作りたいという思いに。それを、客室個室サウナで表現できたらなと思いました」

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