唯一無二のサウナを目指す。情熱をサウナに投じる「TOJIBA」

2023年1月に長野県小諸市菱野温泉に誕生した本格フィンランド式サウナ「Sauna Space TOJIBA」。同施設を運営するのは、菱野温泉「薬師館」代表取締役マネジャーの花岡隆太さん。インタビュー前編では、「TOJIBA」の成り立ちを、ざっくばらんに聞かせてくれた花岡さんですが、後編では、ご自身が生まれ育った小諸への思いや「温泉旅館がサウナをやる意味」など、「TOJIBA」ならではのこだわりを真摯な言葉で語ってくれました。

目次

地元を離れていたからこそ見えた魅力と課題

――前編では、花岡さんは生まれも育ちも小諸市だと。差し支えなければ、簡単な経歴を教えていただけますか?

「小諸市菱野で生まれ育って地元の高校を卒業とともに東京へ出て、全国展開のファミリーレストランに入社しました。会社では、店舗開発や新店舗の立ち上げに携わり、九州を転々とした後に小諸に戻ってきたのが28歳の頃で。2008年に今の会社に入社して、宿のオペレーションマネジメントなどの仕事を行っていました。会社の代表になったのは2021年の9月と、割と最近のことになります」

――前編では地元を離れていたからこそ、「地元の魅力を再発見した」と言われていましたが、花岡さんが思う小諸市の魅力はどこでしょう?

「“何もないところ”……と言うと語弊がありますが(笑)、ただただゆっくり、時間を忘れて羽根を伸ばせるところじゃないでしょうか。紅葉や冠雪など四季折々の表情も魅力的ですし、手付かずの大自然がすぐそこにある。小諸市で生まれ育った私自身も、日々癒されていますね」

薬師館近くには2頭の馬が! モカとポン太です♪

――その一方で課題も見えてのでは?

「これは小諸市というより日本全体の問題なんでしょうけど、若い人たちが少ないこと。若い人とお年寄り、世代が違う者同士の交流がないところ。住んでいる人たちが、案外地元の良さを知らないところなんじゃないかと思いました」

――確かに、地方旅行へ行くと、お年寄りが目立ちますし、地元の自然や食の恵みのありがたみに気付いていないところがある気がします。

「今の状態で幸せであれば、それ以上を望む必要はないと個人的には思うのですが、小諸のどこに魅力があってどこに惹かれて観光客が訪れるのか? 地元が潤っているのか? その仕組みを知ることは大事なんじゃないかと思うんです」

宣伝は大事! きっけかは小諸が舞台のアニメ

――そこに暮らす人たちが地元の魅力を知ることで、若い人たちの流出も抑えられ、若い移住者なりも増え、お年寄りも活気付くかもしれない、ということでしょうか。

「逆に、仕組みを知らないと、いざ下り坂になった時に対策も打てないと危機感も覚えましたね。実際僕が2008年に『常盤館』に入った時に“江戸時代から800年も続く温泉場にあるんだからみんな知ってるでしょう”と高を括っていたら誰も知らなくて、さんさんたる目に遭いましたから(笑)。いい温泉であることは間違いないんですけど、宣伝しなきゃ意味がないんだなということを痛感しました。なので、『TOJIBA』をはじめて最初に思ったのは、“いかにして知ってもらうか?”ということでした。ここ数年サウナが流行って、東京を中心に多くのサウナ施設ができている状況で私たちが進めていくには、“都心から2時間半かけてどうやって足を伸ばしてもらえるか?”が大事で。環境がいい、温泉がいい、サウナもあるというのは知ってもらわない限り伝えられない=お客さまに来てもらえないんです」

――それもあって「TOJIBA」のグランドオープン半年前に東京は渋谷でPR活動を。

「PRの重要性を感じたのは、2012年1月に放送された、小諸を舞台にしたアニメ『あの夏で待ってる』の存在がありました。小諸って、それまでも観光客が来ていないわけではなかったんですけど、この作品をきっかけにいろんなメディアに『小諸』の文字が躍って、幅広い世代に知ってもらえたんです。そこから、いわゆる“聖地巡礼”に、ファンの方々たちがたくさん小諸を訪ねていらっしゃって。放送10周年を迎えた昨年も、数多く訪れてくれました。その時、知ってもらうことが重要なんだな~。小諸には江戸時代から続く老舗の名店があったり、美味しいものもたくさんあったり、農産物なども品質がいいんだけれど、知ってもらえていないということが課題なんだな、と改めて実感したんです」

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