すべてはサウナから始まった
――そういえば、富山は米ニューヨーク・タイムズ紙が選ぶ「2025年に行くべき52ヵ所」に選ばれたばかり(※日本からは他に大阪がランクイン)。
「ちょうど富山に発つ朝にニュースか何かで立山黒部アルペンルートの特集をやっていて“絶対にココは行くべきだわ!”と思ったところで。日本人の僕でさえそうなんですから、外国からいらっしゃる方も多いでしょうね」
――温泉に続いて、日本のサウナのよさも外国の方に知られつつあるようです。
「日本のサウナが認められるのはうれしいことですけど、そうなると『The Hive』も早めに予約しなきゃ、ですね。外国の方のほうが日本の知られざるスポットを知っていたりもしますよね」
――そうですね。取材で全国を飛び回っていると、まだまだたくさん知らない土地があるな。“経験地”が足りないなと痛感しますから。
「僕も最近は、そういうまだ見ぬ日本の景色を見てみたいな。サウナに限らず、知らない土地で秘湯巡りをしたいな~という欲求が湧いてきたところで、いろいろチャレンジしているんですよ」
――例えば、どの辺りに行かれたのですか?
「和歌山県に龍神温泉(田辺市龍神村)というところがあるんですけど、そこに行ってみたくて。雪の高野山を見がてら温泉に……という予定で向かったものの、龍神温泉までは冬の交通規制で行けませんでした。でも、隣県の和歌山での、荘厳な高野山の景色には圧倒されましたし、神聖な空気に心が洗われましたし。それが、いわゆるパワースポットということなのかもしれませんが、力もみなぎってきましたね」

――SAUNA BROS.vol.8で九州ロケに行った際も神社仏閣が好きだと。
「若いころはお寺だとか神社に興味がなかったんですけど、サウナを知ってからは自然豊かな場所に行く機会が増えて。サウナがいいってことは水もキレイで、イコール人が集まる場所で。人が集まってくると集落ができて、寺社仏閣もできて。そういうことが、だんだんわかってくると、お寺や神社を巡ることが楽しくなってきました」
――20代半ばでそこに気づけたら、この先の人生が楽しくなると思いますよ。
「全国には数え切れないほどの寺社仏閣がありますからね。早く気づけてよかった。考えたら、すべてがサウナきっかけ。なんか、すべてサウナと繋がっているんだな~と勝手に思っている、今日この頃です(笑)」

――「すべての道はサウナに通じる」じゃないですけど、サウナ×キャンプ、サウナ×ツーリング、サウナ×スポーツ観戦などなど、サウナと趣味と絡めて楽しむ方が増えていると聞きます。
「大げさじゃなく、サウナに出会えてよかったと思います。こんなに行動範囲が広がるとは思わなかった。フィンランド派遣で地元のディープなサウナへ行って、戻って富山に行って。年末は『神戸サウナ』で過ごすなんて、何年か前では考えられなかったですからね。先ほどおっしゃったように、人生が明るく楽しいものになりました」
これからはサウナ×秘湯めぐりを!
――サウナはもちろんですが、水やご飯、人。フィンランドへ行かれたことで、そうした日本のサウナならではよさも再発見できて。同時に、日本という国自体の素晴らしさも再確認中の2025年という感じでしょうか。
「そうですね。フィンランドにはフィンランドのサウナのよさがあって。日本には日本のよさがあって。日本でしか味わえないよさ、素晴らしさもある。何ならサウナに入らなくても、温泉と水風呂の交替浴だけでも気持ちいい。やっぱ日本っていいな~と思います。
知らないだけで、さっき言った富山以外にもいい土地はたくさんあると思いますから、これからはできるだけ日本を巡ってみたいです」
――今後はサウナに臨む意識も変わってきそうですか?
「フィンランドのサウナを体験したことで入り方も変わってくると思いますね。もっと余裕をもって入れる感じもします。変に“ととのって”……とかじゃなく、もっとシンプルに。もっと気持ちよく。とにかく楽しんで入ることが一番、大事なんだと思わされました」
――では、これからのサ活(サウナ活動)の目標は?
「まずは、やっぱりフィンランドになりますかね。この間は予約が取れなかった『Loÿly(ロウリュ)』に行ってリベンジして。あと、もっと上の方……サンタクロース村にも行ってみたい。それとともに日本の和歌山、京都、奈良といった近場から秘湯を巡りつつ、新しいサウナを見つけていきたいです。
加えて自然や寺社仏閣、そして食べ物。まだまだ知らないことだらけなので、その土地ならではのよさを見聞きして、体験して、日本を知る。そして何より、ゆっくりと過ごす。サウナを楽しむ。これが目標です、以上!」

――さて、2022年9月にスタートした連載「スケートときどきサウナ」ですが、来年2026年に迫ったミラノ・コンティナダンペッツォオリンピック出場へ向けて競技に専念するべく、しばらくお休みとなります。
2年半、ご愛読どうもありがとうございました。友野さん、これからもスケートはもちろん、ときどきサウナ、引き続き楽しんでください! また連載に戻ってきてくれるのを待っています!
最後に、友野さんから読者のみなさんに向けてメッセージです。
読者の皆さま、2年半『スケートときどきサウナ』をご愛読いただきありがとうございました。そしてサウナブロスの関係者の皆さま、この2年半はサウナブロスさんを通して、同じサウナ―として、大好きなサウナはもちろん、スケートの魅力にもさらに気づくことができました。サウナの連載なのにスケートのことにもとても興味を持ってくださったのもとてもうれしかったです。サウナブロスの皆さまと関わる時間はかけがえのない時間です。感謝の気持ちでいっぱいです。
今回、ご説明にもある通り、自分の次の目標のミラノ・コルティナオリンピックに向けて競技をより追求していきたいと思います。アスリートとしても人としてもより成長をした姿をお見せできるように努力していきます。
もちろんサウナ―として引き続き『スケートときどきサウナ』で楽しんでいきたいです。
スケート最高!!! サウナ最高!!!
友野一希

【友野一希(ともの・かずき)】
❜98年5月15日生まれ。大阪府出身。
4歳よりスケートを始め、ジュニア時代から表現力の豊かさには高い評価が。見ていて楽しくなるその演技で“氷上のエンターテイナー”“浪速のエンターテイナー”と称されることも。2024-25シーズンはグランプリシリーズ第3戦フランス杯第5位。四大陸フィギュアスケート選手権2005第4位第5戦フィンランド杯第6位。新シーズンもさらなる高みを目指す。第一住建グループ所属。
写真/スパ・アルプス、The Hive:佐藤佑一、そのほか友野さん提供
取材・文/橋本達典