<連載>外気浴(かぜ)をもとめて~欧州サウナ紀行~ #3 フィンランド・ロヴァニエミ編

Ciao!  ミラノ在住の木村です。

根っからのサウナっ子で日本では毎日のようにサウナに通っていた私が、今度はイタリア国内や欧州各地のサウナと外気浴(かぜ)を求めて、月に1度欧州のサウナリポートをお届けしております。

今回の舞台はサウナの本場、北欧フィンランド。首都ヘルシンキのさらに北「ロヴァニエミ」へ行ってきましたので、その模様をリポートしたいと思います。(前回のレポート #2 リトアニア・ビリニュス編はこちらから)

目次

サンタクロースが住むまち ‟ロヴァニエミ”へ

週末サウナトラベルのため、インターネットで格安航空券を調べていたところ、ミラノ発ヘルシンキ行で20ユーロ(約2800円)というリーズナブルな航空券が見つかったため思わず購入。このように気軽に国境を超えた旅行が可能なところが欧州の素晴らしいところです。

目的地のロヴァニエミは、ヘルシンキで飛行機を乗り換えて、さらに北へ1時間30分ほど。電車だと12時間程度。北極圏(ラップランド)の入り口に位置し、市内ではオーロラ観測ができるほか、本物のサンタクロースに会えるサンタクロース村(一緒に写真撮影も可能)があります。また、建築家アルヴァ・アールトによる都市設計でも有名な街です。

ロヴァニエミには、ホテル内にサウナが設置されている施設が多いようなのですが、いかんせん今回は急遽決まった旅行だったため、私が宿の予約を取ろうと思った時にはサウナ付きホテルはどこも満室。そこで現地ロヴァニエミ市民に、普段行くサウナについて聞き取り調査を実施。事前の予約無しで利用可能な施設をいくつか訪問してきましたのでご紹介したいと思います。特に、この街にオーロラ観測を目的として何日間か滞在する場合、昼のアクティビティーの選択肢は多い方が良いので、ご参考になれば幸いです。

SANTASPORT

聞き取り調査で、まず1つ目に名前が上がったのが「SANTASPORT」(https://santasport.fi/en/)。

施設をホームページで検索してみると、目に入ってくるのが“Leisure and well-being”の文字。「世界一幸福な国」と言われるフィンランドにおいて、well-beingとサウナがどうつながるのかとても興味がわき、訪問することに。場所は市内中心部から徒歩で30分ほど。バス等の公共交通機関ではアクセスできない場所にあるため、徒歩かタクシーでの移動となります。ここは、サウナのほか、温水プール、スポーツジム、アスリートトレーニング施設(室内運動場やアリーナ)、マッサージスペース、ボーリング場、レストラン、研修所、ホテルなど様々な機能が一緒になった複合施設です。あとから聞いた話だと、フィンランドに6カ所あるオリンピックトレーニングセンターのうちの1つなのだそう。

施設の外観。様々なアクティビティーがSANTASPORTで楽しめます

サウナ室は男女別となっており、フィンランド式サウナ室が2室とシャワーというシンプルな構成。薄暗いサウナ室で、セルフロウリュを楽しめます。

内装は上の写真のような石造りで、収容人数はだいたい20名程度。高齢者から若者が集まる地元の憩いの場となっておりフィンランド語が飛び交います。

印象的だったのは、ロウリュのバケツを持っていた人がサウナ室から出る際にそのロウリュセットを次の人に手渡して託していくこと。皆、暗黙のルールとして室内の湿度を最適な状態に保っている様子を見ていると、サウナが文化として根付いた良い土地だなぁと感じずにはいられませんでした。

また、SANTASPORTの推しポイントとしては、サウナ利用料がなんと5ユーロ(約700円)であること。これは水のペットボトル500mlが3ユーロ(約420円)を越すことがあるフィンランドではとても良心的な金額設定です。

さらに、4ユーロほど追加するとプールエリアも利用できます。プールエリアには水風呂(7〜9℃)や通常プール(30℃)、温水プール(36℃)があり、サウナで汗をかいたあと後にまったりと過ごすことが可能。ファミリー層が多いのが印象的でした。

ロヴァニエミはフィンランドでも北部に位置し緯度が高いため、冬は太陽が全く出ない(前10時から後3時くらいの間だけうっすら明るくなるが、太陽は出ない極夜となる)期間があります。そんな冬の時期に、じっと家で過ごすだけではなく、サウナで汗をかき、プールで泳ぐことによってwell-beingを高める。そんなフィンランドに住む家族の過ごし方を垣間見ることができ、とても興味深い経験となりました。

帰り際、施設の方に話を伺い施設全体を見学させてもらいましたが、SANTASPORTは各施設の経営元が異なるようで、運営に行政や複数の民間企業が入っているのだとか。サウナやプール、スポーツを核としてwell-beingをテーマにした複合施設の運営も日本でできたらおもしろいだろうなぁと思いながら、外気温マイナス18度の夜道を歩いて市内に戻るのでした。

ROISKE

続いて、次に耳寄り情報を入手したのがROISKE(https://www.roiskeelle.fi/)。

こちらも同じくロヴァニエミの市内中心部から徒歩30分ほどで、オウナス川のほとりにある施設です。訪問前にインターネットで検索したところ、夏に川で楽しめるウォータースポーツ事業を展開する会社が、冬にサウナ事業を始めた模様。フィンランド語のウェブサイトしかなく、また1年ほど前にできた新しい施設でレビュー数もまだ少なかったため、無事に辿り着けるかどうかドキドキしながらの訪問でした。

施設に着くと、すでに先客が何組か。利用者はほぼ地元民のようです。

サウナ小屋は上の写真のように2棟あり、それぞれ100度で男女混浴(水着着用)スタイル。10名程度が入ることができ、ガラス張りとなっており、セルフロウリュも可能です。

客層は英語が堪能な若い方が多かったため、初対面でも自然と会話が弾みます。普段フィンランドの人たちは自宅のサウナに入ることが多いものの、昨今の電気代高騰に伴い、電気ストーブサウナ勢は自宅でのサウナ浴回数が減っているのだとか。そのため、たまのぜいたくにこうして外部のサウナに来ているそう。そんな話をしながら10分ほど汗を流したら外に出て、目の前のオウナス川に向かいます。

ROISKEの売りはなんと言ってもアヴァント。凍ったオウナス川に穴を開けてあり(水深は1メートル程度の場所)、天然の水風呂を楽しむことが可能となっています。

この日の水温は2℃くらいで、外気はマイナス8℃。火照った体が一気に引き締まります

「アヴァントはクレイジーだろ(笑)」。と言いながら何度も冷たい水に浸かるフィンランドの人たち。私は冷たすぎる水風呂がそこまで得意ではないので、彼らを横目に見ながら一瞬川に潜ってすぐにサウナに戻りましたが、なかなか味わえない体験となりました。

料金は、1時間あたり14ユーロ(約2000円)と、気軽にアヴァントを楽しめる施設として個人的におすすめです。ただ、筆者が訪問した時点では日没後からの営業開始で、シャワーブースやドライヤー等はありませんでしたので、冬場に訪問される場合は、入浴後に風邪を引かないようご注意ください。寒すぎたので普段は徒歩派の私も帰りはタクシーでした。

あとがき

ロヴァニエミと言ったらオーロラ鑑賞。私も運よく、少しだけ見ることができました。このとき外気はマイナス26℃。鼻水も凍る寒さでした。

オーロラ鑑賞をする際は、明るい場所から離れる必要があり、郊外の自然豊かで街灯の届かないエリアへ出なければなりません。市内から郊外へ車で15分ほど走ると湖が点在しており、凍った湖上でオーロラの出現を待つのが定番のコース。雲の動きに合わせて、いくつかスポットを移動して、ようやく見ることができました。

今回はサウナに入りながらの鑑賞はできませんでしたが、フィンランドにはサウナに入りながらオーロラを見られるホテルもある模様。次回またチャンスがあればチャレンジしてみたいと思います。

【木村 光留(きむら・みつる)】
ミラノ工科大学の戦略デザイン修士課程で学ぶ大学院生。14年働いたCS放送局を退職して渡欧。サウナが好きすぎてサウナ番組を作ったこともあり。お気に入りは、出身地・静岡県にある「サウナしきじ」。(twitter:@buraraorange)

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