Ciao! ミラノ在住の木村です。

根っからのサウナっ子で日本では毎日のようにサウナへ通っていた私が、今度はイタリア国内や欧州各地のサウナと外気浴(かぜ)を求めて、月に1度欧州のサウナリポートをお届けします。

今回は年末年始の休暇を利用し、ウィスキングをもとめてリトアニアの首都ビリニュスへ行ってまいりましたのでその模様をレポートしたいと思います。(前回のサウナレポート #1 イタリア・ヴェローナ編はこちらから)

◆日本とも縁のあるリトアニアのサウナへ

バルト三国の中でも1番南に位置するリトアニア。北はラトビア、南はポーランドに挟まれた国で、日本人にとっては“東洋のシンドラー”こと「杉原千畝」(※1)のイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

首都のビリニュスは内陸の南東部にあり、今回、私はラトビアの首都リガからバスで入国。リガからビリニュスまではバスで約4時間でした。周りはローカルの方ばかりで異国気分を味わいながらの移動です。

※1……第2次世界大戦時、ナチスドイツに追われたユダヤ系避難民のビザを日本領事館領事代理として発給し、多くの生命を救った。彼を讃え、ビリニュスにはChiune Sugihara Sakura Parkと命名された桜の名所があり、市民の憩いの場となっている。

ヨーロッパにおけるリトアニアの位置

サウナ浴のことをリトアニア語でピルティス(Pirtis)と呼びます。訪問に先駆け、ビリニュスのウィスキングを行うPirtis施設を調査し1軒発見。事前予約制だったため早速メールを送ってコンタクトし、無事予約が取れました。

訪れたのはアリド・ピルティス (Arido Pirtis)。ビリニュス市中心部から郊外へ車で20分ほどの場所にあります。公共バスでも行けるのですが、中心部からだとバスの乗り換えが必要なためBolt (エストニア発の配車アプリ)での移動が便利です。

予約時間の後12:00に到着するとサウナマスターのAridasさんと、娘のAušraさんがお出迎え。Aridasさんはおもにリトアニア語を話すため、海外からのお客さんの時は英語が流暢なAušraさんが手伝っているそうです(時には、Aridasさんの息子や奥様が手伝うこともあるそう。まさに家族経営)。

Arido Pirtisの外観。住宅の裏庭にあるこの小屋の中でウィスキングが行われます

◆ハッカオイル、胡桃粉末、ハチミツ、ハーブティー……特別なウィスキング体験

小屋の中は、休憩室、シャワー室、サウナ室で分かれており、まずは休憩室の1角で着替えたのち、ハーブティーを飲みながら世間話をします。そして体調に関するヒアリングなどを終え、いよいよセッションが始まります。何やらマスターは前6:00に起床して、スモークサウナをセッティングしたとのこと。思わず期待が高まります。

流れとしては大きく以下4つに分かれて行われました。

1.Aroma therapy(アロマ・セラピー)
まずは、タオルを腰にまいた状態で、サウナ室にうつ伏せで寝そべります。室内の温度はだいたい60〜70℃で、湿度は50%くらい。体感としては決して熱くはありません。マスターが頭上でよもぎの葉を回し、室内を良い香りで充満させます。その後全身にハッカオイル(Japanese mint oil)を塗り、体全体に軽くウィスキングをしてシャワー。一旦休憩室でハーブティーブレイクを挟みます。ちなみに、このハーブティー「イワンチャイ」と呼ばれるヤナギランのハーブティーとのこと。はじめて飲みましたが、スッキリとした味わいでついつい何杯でも飲んでしまうおいしさです。

2.Scrub and halo therapy(スクラブ・アンド・ハロ・セラピー)
10分ほど休憩し、次のセッションでは、サウナ室で全裸となり寝そべります。そして、塩に胡桃(くるみ)の粉末を混ぜたものを全身に塗り込ませ、再び軽くウィスキングで肌に浸透させます(肌の表面に傷等があると少し塩が染みますので、気になる方は事前に申告した方が良さそう)。その後マスターがサウナ室から退出し、しばらく時間を置きます。このとき、サウナ室内は胡桃の心地よい香りで満たされ、リラックスできる時間が流れます。5分ほどするとマスターが戻ってきて、シャワーで塩を洗い流して再びハーブティー休憩。なお、「Halo」とはどういう意味か聞いたところ、簡単に言うと、呼吸のためのsalt therapyとの回答。外国語にうまく変換できない言葉があるあたり、現地ならではの体験ができているのだと実感します。

3.Whisking(ウィスキング)
そしていよいよ本格的にウィスキング。両手に持ったヴァンタ(フィンランドではヴィヒタと呼ぶが、リトアニアではヴァンタと呼ぶ)を駆使し、全身を叩き、時には肌を優しく包み込みます(※2)。印象的だったのは、腕や体を叩くだけでなく、何か体内(特にお腹)に熱を閉じ込めるようにヴァンタを押し当てていたこと。また、ヴァンタの緑の匂いが暗いサウナ室を包みこみ、再びリラックス時間が訪れました。

※2……Arido Pirtisでは、1度の施術に対してヴァンタを合計7束使用。そして全てが新品(1束5ユーロなので、合計35ユーロ分)。マスターが夏の間にビリニュス郊外や近郊の町トラカイで摘んだ物を冷凍保存している。

オーク(左)が大きな葉で、軽く、蒸気を室内に充満させる用途で使用。白樺(右)は葉が小さく、体を叩く用に使い分けるそう

そして、ウィスキングで体がポカポカになった後は、小屋の外に出て水浴びをし、再度ハーブティー休憩を挟みます。

雪のちらつく景色を前に冷水を浴びる。このとき外気はマイナス1℃。不思議と寒くはありません

4.Honey(ハチミツ)

そして最後に、再びサウナ室で寝そべり、全身にハチミツを塗ってもらい肌に潤いを与え、追いウィスキングで全身を引き締めて終了となります。ちなみに、このハチミツですがリトアニアの名産で、そのまま食べることもできます。私はこの後ハーブティーにハチミツを入れて飲みました。こちらも絶品。

以上で、合計約2時間30分。体感としてはもっと短く感じるほど内容盛りだくさんのひとときでした。

サウナ室。撮影時は照明で明るくしていますが、実際には室内はとても暗いです

サウナ室では300個のサウナストーンを使用。石はフィンランドorウクライナ産。3〜4カ月で交換するというこだわりっぷり

マスターのAridas Pabedinskasさんと娘のAušra Pabedinskaitėさん

料金など詳細は公式サイトから。体験人数に応じて金額は変動しますが、今回私が体験したのは1名150ユーロ(日本円で約20,800円、1月17日現在)でした。

なお、国外からの観光客も多いものの、毎週決まった時間に職場の同僚同士で利用する地元の方々もいらっしゃるそうで、リトアニアという国とPirtis文化とが日頃から密接に根付いている印象を受けました。真っ暗なサウナ室でハーブやヴァンタなど植物の匂いを嗅ぎながらのウィスキングと、その後のハーブティー休憩。視覚を休め、嗅覚と味覚をフルに活用して自然を味わう、なかなか体験できることのない癒しとなりました。

◆あとがき

帰り道、娘のAušraさんが車で空港まで送ってくれました。日照時間の少ない冬の長さもあいまって、実はリトアニアはうつ病を患う人が多いそう。将来そんな病気で苦しむ人の助けになりたいと、大学で脳科学を専攻する彼女の話を聞きながら帰路に。この国においてPirtisが果たす役割にはもっと深い理解が必要なのかもしれない。そう感じずにはいられませんでした。次回は昼の長い夏至の頃に訪問することを伝え、リトアニアを後にしました。

なお、マスターのAridas氏は、リトアニアの専門学校で政府公認のカリキュラムでウィスキングを教えています。9カ月に渡るリトアニア語でのカリキュラムなのでハードルは少し高いですが、もし本場のウィスキングにご興味がありましたら是非。

【木村 光留(きむら・みつる)】

ミラノ工科大学の戦略デザイン修士課程で学ぶ大学院生。14年働いたCS放送局を退職して渡欧。サウナが好きすぎてサウナ番組を作ったこともあり。お気に入りは、出身地・静岡県にある「サウナしきじ」。(twitter:@buraraorange)