【最終回】「外気浴(かぜ)をもとめて」#18 ノルウェー・オスロ編

外気浴(かぜ)をもとめて~欧州サウナ紀行~

Ciao! イタリア在住の木村です。

根っからのサウナっ子で日本では毎日のようにサウナに通っていた私が、欧州各地のサウナと外気浴(かぜ)を求めて、月に1度欧州のサウナリポートをお届けしております。

今回は、ノルウェー・オスロエリアにあるサウナをご紹介したいと思います。(前回の #17 ルーマニア・ブカレスト編はこちらから)

実は、以前より日本のサウナ関係者からよく耳にしていた「いまノルウェーのサウナが面白い」というフレーズ。いつかは行きたいと思っていたのですが、ようやく訪問できました。ノルウェーと言えば「ヴァイキング」、「フィヨルド」、「オーロラ」、「ムンク」。それらに並ぶ勢いで首都オスロを中心にサウナが盛り上がりを見せているとのこと。今回はそんなノルウェーの3つの施設をご紹介したいと思います。

目次

欧州ベスト・スパリゾート「Farris Bad

まずは、現在の欧州サウナシーンで最も重要なサウナと言ってもよい場所が、こちらの「Farris Bad」。首都オスロから車で南に2時間ほどの距離にあるこのリゾートホテルは、都市部から離れた環境にあるためリラックスにも最適。入口には欧州や世界の舞台で得た称号や表彰プレートがたくさん飾られている、欧州を代表するスパリゾートです。宿泊を伴わないスパエリアのビジター利用も可能です。詳細は公式サイト(https://farrisbad.no/en)より。

2009年の開業以来、ヨーロッパはもちろんアジアの訪問者からの人気も誇る「Farris Bad」。なんといっても最大の特徴はその建設場所にあります。

Farris Badの外観

「Farris Bad」は海岸線上に建造されており、サウナ後にそのまま海に飛び込むことが可能な夢のようなロケーションです。興味深いのは、ここがプライベートビーチではなく一般の海岸であること。そのため海に飛び込んでいる隣で、近所の住民が浜辺を散歩していることも。自然や地域社会と見事に共存した施設であることを実感できます。

さらに、サウナ設備も充実。数々のアウフグースの名手を育て、またアウフグース大会の会場としてもいくつのも名勝負を繰り広げてきた「EVENT SAUNA」をはじめ、ノルウェー名物のフィヨルドを眺めながら入ることができるサウナ室があるなど、この場所でしか体験することができないユニークで本格的サウナが盛りだくさんです。

数々のアウフグースが繰り広げられた「EVENT SAUNA」
フィヨルドを眺めながらのサウナ

そして、こちらのDEVELOPMENT MANAGERを務めるラッセ氏は、「Farris Bad」の未来を考える仕事に加えてアウフグース世界選手権のVice Presidentも務めるサウナ界の超重要人物。そんなラッセ氏に話を伺ってきました。

「ノルウェーのサウナは今ルネサンス期を迎えている。かつてノルウェーに栄えたサウナ文化が時代の中で一度廃れてしまったが、ここ数年の復興しているんだ。若者世代は今やナイトクラブではなく、サウナでソーシャライズを行う。なぜならサウナは物語が生まれる場所だからだ。人との会話が生まれ、そこに物語が生まれる。『Farris Bad』はそういった新しいムーブメントの中で、サウナ文化を体験し、学べる場となってほしい」

筆者が訪れたタイミングでも、ロシアのモスクワからバーニャマスターを呼び連日90分のバーニャセッションを開催するなど、普段なかなか味わえないサウナを紹介しておりました。

「温浴文化のある日本とノルウェーは似ている」と語るラッセ氏は、何度も来日したことがある日本通

最後に、こちらの施設はビジター利用もできますが、訪問の際は宿泊することをオススメします(私は思わず3泊してしまいました)。ゆっくりと過ごせることはもちろんですが、朝食も最高。そして、最高の睡眠と景色も楽しめます。アウフグースプログラムの組み方も睡眠時間を逆算したタイムスケジュールとなっており、ベッドのクオリティも申し分ありません。海岸線に作られたホテルなので、夜は周りの騒音もなく、波の音をBGMとして聞きながらの睡眠は唯一無二の体験となりました。

海側の部屋からの眺め。最高のロケーションです

オペラハウスを見ながらドボン! 「Oslo Badstuforening Langkaia」

次に、オスロの中心地でサウナを楽しみたい方におすすめしたいのはこちらの「Oslo Badstuforening Langkaia」(https://oslobadstuforening.no/)。オスロの観光名所オペラハウスの対岸に位置する絶好のロケーションにあります。

オペラハウスのすぐ目の前のロケーション

湾内にフローティングボートをいくつも浮かべ、そこにサウナがあるという構造。貸切のプライベートサウナとドロップインして他の利用者と一緒に楽しむサウナとがあり、まさにラッセ氏の語るノルウェーのサウナ文化の今を体感することができます。

サウナ室からの眺め

さらに、会員となれば1.5時間の利用で料金100ノルウェー・クローネNOK〜(約1,500円。2024年5月現在)と物価の高い北欧においてリーズナブルに利用できるのもありがたいポイント。筆者が伺ったのは「Langkaia」という店舗でしたが、オスロ中心部に他にも運営されている店舗があり、ハシゴして違いを比べるのもオススメです。

無人運営サウナ「pust. Kadettangen」

冬のpust. Kadettangen

最後にご紹介する施設がこちら「pust. Kadettangen」(https://www.pust.io/badstue/kadettangen/)。オスロ中心部から車で20分ほど郊外に出た場所にあります。こちらの特徴は無人運営であること。事前にオンラインでチケットを購入し、あとは現地に行くだけ。無人運営でありながらサウナの熱さは強力。そしてサウナ後には目の前にある海にダイブすることができます。

サウナ室からの様子

少し郊外に出ているため、サウナ室からもノルウェーの自然豊かな風景が楽しめます。

今回3つの施設を訪れましたが、それぞれに違った特徴があり、バラエティー豊か。ラッセ氏の言う通り、まさに今起きているノルウェーのサウナルネサンスを体感することできた気がします。ここ数年でのサウナの盛り上がりは日本に近いものを感じましたし、自然との融合や、ソーシャライズへの適用などは日本のサウナシーンから見て参考になるものが多いような気がしました。サウナ=フィンランドのイメージが強いかもしれませんが、ぜひ北欧を訪れた際にはノルウェーまで足を運び、国による違いを楽しんでみてはいかがでしょうか。

さて、末筆となりますが、このたびイタリアを卒業し、日本に帰国することになり、今号が最後の寄稿となりました。全18回に渡り、拙い文章にお付き合い頂きましてありがとうございました。日本にいるときは欧州のサウナが国によってここまで違いがあることなど知る由もありませんでした。貴重な機会を頂けたことに読者の皆様、SAUNA BROS.の関係者の皆様に本当に感謝しております。この場を借りてありがとうございました。また、世界のどこかのサウナでお会いしましょう。

あとがき

「Farris Bad」の朝食バイキングで食べたノルウェー名物サーモン。最高の味でした。

【木村 光留(きむら・みつる)】​
ミラノ工科大学の戦略デザイン修士課程で学ぶ大学院生。14年働いたCS放送局を退職して渡欧。サウナが好きすぎてサウナ番組を作ったこともあり。(twitter: @buraraorange)

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