外気浴(かぜ)をもとめて~欧州サウナ紀行~
Ciao! イタリア在住の木村です。
根っからのサウナっ子で日本では毎日のようにサウナに通っていた私が、欧州各地のサウナと外気浴(かぜ)を求めて、月に1度欧州のサウナリポートをお届けしております。
今回は、ルーマニア・ブカレストにあるサウナをご紹介したいと思います(前回の #16 スイス・ロカルノ編はこちらから)。
以前から“ルーマニアに面白いサウナがある”という噂を聞いていたものの、なかなか訪れるタイミングが無かったのですが、ようやく訪問する機会がやってまいりました。
“バルカン半島のパリ” ルーマニア・ブカレスト
ドラキュラ伯爵でお馴染みのルーマニアは、東欧で唯一のラテン系民族の国。首都のブカレストは「バルカン半島のパリ」とも呼ばれ、ルーマニア正教会の関連建築が見事な町です。ルーマニア語はイタリア語と発音が近く、街ゆく人々の会話を聞いていると一瞬イタリアにいるのかと錯覚してしまうほど。そして、何といっても東欧を旅する上での魅力は物価の安さ。昨今の円安において学生には特にありがたい旅行先となっております。
空港からすぐ。都会のオアシス “テルメ・ブカレスト”
やってきたのは今やブカレストを代表すると言って過言ではない人気観光スポットとなった「Therme Buchresti(テルメ・ブカレスト)」(以下、テルメ・ブカレストと表記)。空港からの距離がすごく近く、ルーマニア到着直後や出国直前にさくっと寄るのにちょうど良さそうなロケーションです。テルメ・ブカレストは2016年にオープンした都市型リゾートで、2フロアに渡る面積は37,000㎡。ウェルネス、レジャー、スパスペースを備え、バルカン諸国をはじめ、英国、ドイツ、イタリア、オーストリア、イスラエルなどからの訪問者が多い人気施設です。
このオアシスのコンセプトは、“「ウェルビーイングは一部の恵まれた人だけのもの」という先入観に挑戦する”で、南国リゾートの世界観をより多くの方に気軽に味わってほしい。そんな経営理念が見える素晴らしい志を持った施設です。
料金は3時間の滞在(サウナエリアも利用)で平日111ルーマニア・レイ(約3,600円。2024年4月現在)と、ヨーロッパの大規模スパ施設としてはリーズナブルな価格設定。平日、土日や入場エリアによって料金が異なりますので詳細は公式HP(https://therme.ro/)から。
館内に入ると、その世界観のクオリティーに驚きます。特徴的なのは南国を思わせる植物の数々。ヤシの木の数だけでも1,500本以上もあるのだとか。東南アジア、オーストラリア、西アフリカ、アメリカ、オセアニアから選りすぐったさまざまなヤシの木を、オランダで2年以上も順化させ、ルーマニアまで運んでいるそう。栽培されたものもあれば、自然環境から収穫されたものもあり、本物の熱帯林の生態系を模倣し、かなりハイクオリティーな南国の世界観を表現しています。そして80℃の地熱水の熱を利用して館内を温めることで、まるで本物の南の島にいるかのような感覚に。
世界7位のアウフグースマスターを擁するサウナエリア
サウナエリアは館内の2階部分(別料金)となっており、特徴的なサウナが盛りだくさんです。サウナも男女混浴(水着着用)となります。
AMAZON SAUNA (温度70℃、湿度25〜50%)
窓の向こうに見えるスパエリアのヤシの木を眺めながらのサウナ。本物の熱帯雨林の中にいるかと思うほどの迫力。
BAVARIA SAUNA(温度90℃、湿度10%以下)
スタッフに聞いたところ1番人気はここ。上段に座ると、ドイツのサウナ並みの熱さ。本格的です。
また、このほかALHAMBRA SAUNA(温度65℃、湿度20〜40%)、HIMALAYA SAUNA(温度45℃、湿度25〜45%)、HOLLYWOOD SAUNA(温度60℃、湿度20〜40%。大型モニターのあるサウナ室)などバリエーションが豊かなので、熱いサウナが苦手な方でも無理なく楽しめる空間となっております。
そして、強調しなければならないのはテルメ・ブカレストのアウフグースマスターのAndrei-Robert Serban氏について。ここで働く彼は、なんと昨年のアウフグース世界選手権7位の実力者。世界レベルの力強いアウフグースを普段から満喫できる、サウナ好きにとってはたまらない施設です。
今回はミラノから土日を使っての1泊旅行でしたが、本当にはるばる南国まで旅行に来たかのような非日常を味わうことができました。個人的には南国ムードに浸った後にテラスで外気浴をしながらすぐ近くにある空港の滑走路を見ていると、なぜか沖縄の那覇空港近くにある琉球温泉・龍神の湯(https://www.resorts.co.jp/senaga/ryujinhotspring)を思い出しました。空港近くのサウナという、なかなか変わったシチュエーションでオススメです。
あとがき
実は、この4月からシェンゲン協定(EU内の国家間で出入国検査無しで国境を越えることを許可する協定。まずは飛行機便と船便の場合が対象)に入ることになったルーマニア。今後欧州各国からの行き来が容易となるので、訪問客もさらに増えそうです。ヨーロッパ内でもこれからもっと人気になりそうなテルメ・ブカレスト。東欧を旅行する機会があればぜひ訪れてみてください。
【木村 光留(きむら・みつる)】
ミラノ工科大学の戦略デザイン修士課程で学ぶ大学院生。14年働いたCS放送局を退職して渡欧。サウナが好きすぎてサウナ番組を作ったこともあり。(twitter: @buraraorange)