TWS社長・天野春果連載/ウォーリュから学ぶ企画ネーミングの重要性

モイ~。

本日もマイサウナ施設、祖師ヶ谷大蔵駅前個室サウナ「自問自答」の休憩室でこの原稿をポチポチ書いています。

このSAUNA BROS.WEBの記事に準レギュラー登場する(笑)、僕のポジティブクレイジーアミーゴ・フィンランド政府観光局日本支局代表兼、フィンランド大使館商務部の沼田さんに誘われて、先々月の2月中旬、十勝で行われた「フィンランドサウナフェスinTOKACHI」に2泊3日で行ってきました。

「この時期の十勝は雪深いので、スニーカーではなくスノーブーツで行ったほうが良いですよ」と沼田さんの助言を受けて、東京は気温10℃ほどでしたが、少し我慢してスノーブーツを履いて羽田空港へ。羽田空港から帯広空港までは1時間45分くらいですかね。「もう間もなく到着いたします」の機内アナウンスを受け、着陸態勢に入った機内窓から帯広の広大な平原を見下ろすと思ったより雪が少ない。いや、もちろん白銀の世界が広がっているのですが、車が通る道には雪が積もっておらず、「除雪しました~」っていうような道の脇に高く積まれた雪の壁もない。帯広空港に到着し、空港の外に出てみると寒いは寒いが、なんか想像したような寒さじゃない。どちらかと言えば鼻毛が凍るような寒さをイメージして超極暖ヒートテックを上下着用した上にセーター、ダウンジャケットを着ていたのでむしろ暑い!まっ、雪が少ないのは移動が楽でいいんですけどね。温度計をみたら「-2℃」でした。スノーブーツは暑かったけど、路面はところどころ凍結していてアイスリンクみたいになっていたから結論、少し暑くてもスノーブーツで良かったですけど、地元の高校生はスニーカーでした(笑)。

この2泊3日の十勝旅で人生初のアヴァント体験をしました。その模様はSAUNA BROS.WEBでも特集が組まれているので割愛!(一番の体験なのに!笑)。今号ではそれ以外の十勝で受けた刺激的な経験をレポートしたいと思います。それなので、メインの写真には全く触れません!(笑)

目次

壁にロウリュすることを「ウォーリュ」と名付けた人は天才

フィンランドサウナフェスinTOKACHIは、十勝エリアのサウナ大好きな人たちで立ち上げた「十勝サウナ協議会」が主催し、フィンランド政府観光局等の特別協力を得て実施している今年で2回目をむかえるサウナ尽くしのお祭りです。

お祭りの内容は、凍結した「くったり湖」(帯広から車で50分ほど)でのアヴァント体験をメインに有識者を招集してサウナに関わる知識を高める講演やモルック体験会など盛りだくさん!

僕は現地に行くまで知らなかったんですが(ちゃんと調べてから行けよって)、十勝は、十勝サウナ共和国「サ国」プロジェクトと題して、サウナで街の活性をおこなっているんですね。十勝エリアで本場フィンランド式「ロウリュ」が楽しめる11施設の中からお好きな4施設が利用できる日帰り入浴パスポート=サウナパスポートなるものを発行し、 澄んだ空気の中での外気浴等、十勝ならではの”サウナ浴”が楽しめちゃいます(2023年10月~2024年3月までの実施のため、現在はやっていません)。

帯広空港に15時過ぎに到着し、そこからバスで1時間ほどゆられて帯広中心街へ。16時ちょい過ぎに到着したので18時から始まるカンファレンスまで2時間弱。この日宿泊する十勝ガーデンズホテルにチェックインしてカンファレンスまで部屋でゆっくり……なんてするわけないでしょ!! ガーデンズホテルにあるサウナにもう秒で移動しました(笑)。

このエリアは「モール温泉」というほうじ茶みたいな褐色の温泉が特徴です。なんでも古代の地中の葉っぱなど、腐った植物が滲み出てきたためこの色なんだそうです。モール泉が湧き出る代表的な場所としては、 ドイツの「バーデン・バーデン」 があり、日本では北海道のこの十勝エリアと石狩平野、豊富町 など結構限られたエリアだけなんですね。関係ない話ですけど、川崎にバーデンプレイスという銭湯があるんですが、なるほど、このドイツの地名から店名にしたのか!

持参したサウナハットを手にいざガーデンズホテルの浴場へ。カンファレンスまでそこまで時間がないので、一秒でも長くサウナを楽しめるよう、そそくさとカラダを洗って、いざサウナ室へ。室内はそんなに熱くなく80℃くらいですかね。輪切りされた白樺の木が壁に張り付けられていてかすかに白樺の香りを感じます。

セルフロウリュができるよう、水が入った桶とラドルが置かれています。

もうちょっと室温をあげたかったので、すでにサウナ室に入っていた方々に「ロウリュしてもいいですか」と一声かけ、桶からすくった水をかけようとサウナストーブの上にラドルを持っていってビックリ!!!

サウナストーンの下に焼きそば鉄板が敷かれていて水がサウナストーブの下のほうまで滴り落ちない!!

最初、「えっ!?」ってなりました。たぶん僕だけじゃなく、知らない人はみんな「えっ!?何この鉄板?」ってなると思います。少し戸惑いながらもラドルですくった水をかけ流してみます。すると中火で温めたフライパンに水を入れた時のような、水が焼きそば鉄板の上で蒸発して「ジュュゥ~」って鳴きました。サウナストーンを通り過ぎた水が鉄板に滴ってそこで蒸発するという初めてパティーンでの初体験ロウリュ。

僕が戸惑った顔をしていると、このホテルサウナの常連さんらしき人が「モール温泉のお湯でロウリュしちゃうとその成分の関係でサウナストーブが壊れてしまう可能性があるから滴った成分がサウナストーブ本体にかからないようになっているんだよ。だからみんなこうやってサウナ室の壁にかけるんだよ、ホレッ」と見本をみせてくれました。「壁(=ウォール)にロウリュするからウォーリュ(笑)。やってみな」と!

「な、なるほど~! ウォーリュね。このオジさん、親父ギャグ全開! ネーミングセンスあるなー!」

僕は企画を考えるとき「親父ギャグ」は重要だと考えていて、今までも数々の親父ギャグを入れ込んだ企画ネーミングを展開してきました。例えば、清水エスパルスとの試合プロモーションは漫画「エースをねらえ!」を掛け合わせて「エスをねらえ!」とか、FC東京と川崎フロンターレの対戦「多摩川クラシコ」とゴジラを掛け合わせて「多摩川クラジゴ」とか(逆から読むとゴジラが出現)。企画の発信力を増すには、企画内容はもちろんだけど、キャッチーな企画ネーミングって大切なんですよ。端的且つインパクトがあって人の印象に残るネーミングって簡単そうに生み出せそうで簡単じゃない。「くっだらねえ」とか「クスっ」と笑ってもらった時点でネーミングが受け取り手の「脳みそにしわ」が多少入った証拠。この時点で「してやったり」「勝ち」なんです。

2022年にタイの至宝と言われるチャナティップという選手が北海道コンサドーレ札幌からフロンターレに移籍してきました。チャナティップ加入を契機にアジア戦略を推進したいクラブから「イベントを通じてタイ王国をサポーターや川崎市民に浸透させ、在日タイ人やタイ在住のフロンターレサポーターを増やす施策を行ってほしい」というリクエストを受けました。そこでプロモ部で取り組んだのが、トムヤンクンやパタイ等、タイの食文化に触れるコーナーやムエタイやセパタクローなどタイのスポーツ、T-POPと呼ばれる昨今日本でもファンが増えているタイのニューミュージック披露などタイ王国を多面で体感できるコーナーに加え、「とりあえず“タイ”って付くアトラクションなら何でもOK」の全くタイ王国と関係のないコーナーを設けました。例えば「“タイ”ピング早打ち大会」とか、「“タイ”タニックポーズ耐久レース」とかね笑。

皆さんならこの“タイ”づくしのタイイベントのネーミング、なんて名付けますか?

一般的には「タイフェスタ」とか「タイ祭り」ですよね。

でもそれでは日本であまた行われるタイイベントと差別化できないし、印象に残らない。

そこで僕が名付けたイベント名は……

抱きしめタイ!!

でした(笑)

端的で分かりやすくて少しクスッとしません?

40~50代の人なら「抱きしめたい!」って言葉から、浅野ゆう子、浅野温子の通称「W浅野」が出演して話題となった80年代TVドラマ「抱きしめたい!」が浮かぶはず。さらに強者はこのドラマの主題歌で流れていたカルロス・トシキ&オメガトライブの「アクアマリンのままでいて」が脳内再生されるはず!(笑)

30代未満はこのドラマのことは知らなくても「抱きしめタイ!」ってフレーズは覚えやすくて口に出しやすいと思いました。

「抱きしめタイ」イベントはチャナティップがクラブに在籍した2年間実施しましたけど、2年目の開催時には何の違和感もなく「抱きしめタイ楽しみ~!」「今年の抱きしめタイでは何をやるんですか?」などイベントネーミングが浸透していましたね。

ネーミングに明確な正解、不正解はないですけど、サウナストーブにロウリュしないで壁にロウリュする=ウォーリュと言ったこのオジさんは企画王だなと! サウナ室で汗で光り輝く額がやたら神々しく「ああ、オレの師匠になってほしい!」と心の中で叫んでいました。

ウォーリュサウナ→水風呂→休憩(-2℃の外気!)を3セットやったところで沼田さんから「カンファレンス会場に移動しましょう」とタイムアップの通知が。まだまだこの師匠のオジさんと入っていたかったけど、後ろ髪ならぬ後ろ“ウォーリュ”を引かれながら会場となる北海道ホテルに移動。

カンファレンスまであと30分ほど時間があり、余裕をもって会場入りできたのですが、ここでマーベラスポジティブサウナクレイジーの沼田さんが悪魔の、いや天使のささやきを。「アマノさんここの北海道ホテルのサウナ、サイコーです。本日のスケジュール的にカンファレンス後にサウナ入る余裕がないから、入るならこの30分しかないけどどーします?」

と。

ええ、もちろん入りますよ。10分だって入りますよ、ええ。

北海道ホテルのサウナ、マジ最高でした。

そして僕は一つ大きな間違いをしていたことにここで気が付きました。

それは、北海道ホテルも十勝ガーデンズホテルと同じ「モール温泉」で、サウナストーブに直接ロウリュするのではなく、壁にロウリュする「ウォーリュ」を採用しているんです。というより、

ウォーリュの発祥は、なんとここ北海道ホテルとのこと!!(ホテルマン談)
※ウォーリュ発祥は諸説あり。洞爺湖って説もあります

ということでガーデンズホテルのサウナで会ったあのオジさんがウォーリュというネーミングを考えたのではなかったということなんです。

オジさん、「師匠」はく奪! 撤回します!!

はあるっちゃあるが、暖冬で今年の十勝は例年より全然雪が少ないとのこと。
アヴァントができるか結構心配でしたが、ギリギリ大丈夫でした
スーパーポジティブクレイジーことフィンランド観光政府局・沼田さんと。
一昨年、フィンランドへ一緒に行った時も同じポーズとったなぁ(笑)
僕の師匠になりかけたオジさんと出会った十勝ガーデンズホテル。
浴場の写真を掲載できないのが残念ですが、モール泉とサウナ最高でした
フィンランドサウナフェスのカンファレンス会場となった「森のスパリゾート 北海道ホテル」。十勝を代表するサウナホテルで、ここのサウナを目的にわざわざ遠方から訪れる人も多いとのこと。壁にロウリュする「ウォーリュ」の他、モール温泉をロウリュする「モーリュ」、木彫りのクマにロウリュする「ガオーリュ」など親父ギャグ満載のネーミングが素晴らしい!

やはり、マイホームサウナ「自問自答」はととのう施設だった件

北海道ホテルのサウナが気持ちよすぎて、結局50分以上浴場内に留まってしまったため、カンファレンスには少し遅れての参加となってしまいました(苦笑)。(実際、50分じゃ足りなかったなぁ。露天風呂にももうちょっと入っていたかった)

特別基調講演で日本サウナ学会代表をつとめる加藤容崇(やすたか)さんが登壇。加藤さんは米国ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院に勤務した後、現在は慶応大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニットに勤務をする現役バリバリのお医者さんです。サウナには多くの健康増進効果があるものの、その多くは医学的に未解明な部分が多い。加藤さんはサウナの「ととのう」を医学的に解明し、サウナの効果をさらに高めるための入浴方法などを研究している「サウナー教授」です。

僕は心身ともにリフレッシュできるサウナが大好きで、週平均5回はサウナへ行くヘビーサウナーなのですが、周りの人から「とはいえ、サウナは血圧上がったり逆にカラダに悪いんじゃないの?」とかよく言われます。医学的にサウナはカラダにいいのか、そうでないのかは僕自身もとても興味があったので加藤さんの講演をとても楽しみにしていました(それなのに遅刻)。

加藤さんの話の中で、興味深かったのは「サウナは心筋梗塞リスク50%減、認知症リスク60%減、精神科疾患リスク78%減」という研究結果です。この数字と研究結果をそのまま全て鵜呑みにするのは少し危険なのかもしれませんが、病院の先生が公の場でこのように数値もしっかり出して発表し、予防医療としてのサウナの効能に着目しているのは刺激的でしたね。

そんな中、加藤さんの講演で「おおおっっ!!」と声をあげてしまう発表がありました。

それは、加藤さんが、株式会社Gakken「大人の科学マガジン」とコラボして開発したサウナウォッチ+アプリの使用集計結果です。このサウナウォッチは、サウナユーザーがサウナ、水風呂、休憩などの過程で感じる、俗にいう「ととのった」という精神的リラックス状態を可視化する機能が付いています。自分がどのようなコンディションのサウナ施設だと「ととのいやすい」のか、数値で現れるというものです。もちろんこの数値が全ての人に当てはまるわけではないですが、今まで不明だった「ととのい」を数字で示すというのはとても斬新で画期的だなと思います。

そしてこのサウナウォッチを付けて全国各地にあるサウナを利用した際の「ととのい」数値の集計結果トップ10が講演内で発表されました。全国の名だたるサウナがトップ10入りしているのですが、何と何と何と何と(このくらい繰り返すほどビックリ!)、マイホームサウナである世田谷区祖師ヶ谷大蔵にある「自問自答」が2023年11月月間ベスト5入り

、12月にベスト6入りしていたんです!!

加藤さんの講演を聴講者の皆さんは物音ひとつ立てずに聞いていたのですが、僕は『自問自答』を目にした時、マジで「おおおっっ!!」って声に出しちゃいました(周りの方すみませんでした)。

言っても、小田急線各駅停車しかしない祖師ヶ谷大蔵駅前の小さなサウナ施設ですよ。そのマイホームサウナ名を、ここ十勝で目にするなんて!! 日本サウナ学会代表の基調講演に出てくるなんて!!

自問自答の良さはだいぶ前の号←記事リンク貼りますでも書きましたけど、個室サウナ内を3段階温度調整できることも、その個室の中でセルフロウリュして好みの湿度、熱さに微調整できることも、スマホとつないで個室内で音楽が聴けることも、水風呂温度が僕の大好き15~16℃なことも、休憩スペースは下半身にバスタオルを巻いてスマホ利用可能だから、原稿も書けちゃうし、アイデアもスマホにメモれちゃう。

僕はこの加藤さん開発サウナウォッチを付けて自問自答に通っているわけじゃないから、僕がどのくらいの数値なのかは分からないですけど、僕以外の自問自答ユーザーが僕の自問自答ととのい具合を証明してくれたようでホント嬉しかったわぁ。

あまりにも嬉しくて、自問自答のニワ店長に速攻でLINE報告しちゃいました(笑)。

カンファレンス後、沼田さんは加藤さんや十勝サウナ協議会メンバーとサウナアミーゴのため、サウナアミーゴのアミーゴは皆サウナアミーゴということで、夜のとばりが降りた十勝の街に繰り出しました。

これ、いっつも感じることですがサウナが好きな人ってオープンマインドの人がホント多いですよね。初対面な人ばかりでしたけど、すぐに打ち解けてサウナの話で大盛り上がりでした。そして盛り上がるだけ盛り上がり深夜ホテルに帰って、ベットで就寝……するわけもなく、またサウナ入ってウォーリュを心ゆくまで楽しみましたとさ。

それでは皆さんまた次号までモイモイ~。

「いくら暖冬とはいえ寒くて外ではできない」と、モルックはホテル内で実施
サウナの「ととのう」を医学的に解明し、サウナの効果をさらに高めるための入浴方法などを研究している加藤容崇さん。現役バリバリの病院の先生です。
提供されたフィンランド名物サーモンスープを食しながら加藤さんのサウナ講演を楽しめる贅沢な時間!
サウナが疾患予防になるという結果報告。うーーん、サウナ偉大だぜ!
画面をよーーくご覧いただきたい!! マイホームサウナの「自問自答」が「ととのうサウナ」全国トップ10入りしている!! あ~この結果は息子の高校受験合格発表より嬉しいかも……
実はアマノも少し登壇し、一昨年訪れたフィンランド話をさせてもらいました!
誰かのサウナアミーゴはオレのサウナアミーゴ! サウナで交流の輪が広がっていく!

天野春果(あまのはるか)
東京都出身。1993年からワシントン大学でスポーツマネジメントを学ぶ。帰国後は富士通川崎フットボール(現川崎フロンターレ)に就職。以降、”J最強企画屋”としてサポーターに愛されてきた。27年間勤めた川崎フロンターレを退社後、新会社Two Wheel Sports(略してTWS)を設立。代表取締役社長に就任した。
※天野春果連載「企画屋アマノ〜アイデアのととのえ方〜」はこちらから

自問自答 祖師ヶ谷大蔵駅
■住所:東京都世田谷区祖師谷3丁目32−14 YAMATOYA BLD 1F
■営業時間:24時間営業
※男性専用、会員制のサウナ施設
※その他詳細はこちらから

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