2024年3月22日にオープンした「TOTOPA 都立明治公園店」。もうすでに訪問した方、利用された方もいらっしゃると思いますし、そうした方の感想などを聞いたり読んだりして期待感を高めている人も多いのではないでしょうか。
昨年の段階で「新しく整備される都立公園内にサウナ施設ができるらしい」という第一報を聞いたときから楽しみにしていた私たち編集部も、先日、早々に訪問してきました。施設の概要やサウナなどの特徴について、数日前にリポート記事をアップしましたが……男性フロアにはサウナ室、水風呂、休憩スペースがそれぞれ3種類ずつ用意され、女性フロアでは「着衣」と「脱衣」の2つのエリアで心身をゆっくり休めることができます。
(豊富なビジュアルとともに、各設備の体感をリポートした前回記事はこちら。←未読の方は是非あわせてお読みください)
体感というか、感想をあらためて一言で言うと……「すごい!」でしょうか。いろいろな意味で!!
気持ちよさや快適さ、チル度が高いことへの、感嘆の「すごい!」でもあり……。
ほかに“これまで味わったことのない感じ”、“新感覚”を覚えたことへの驚き。そして、それを楽しみまくっての“歓喜”みたいなもの……本当に何度「すごい!」とつぶやいたことか。
「気持ちいい!」や「面白い!」、「うわ!」「へぇ〜!」など、さまざまな思いが押し寄せます。
いい意味でのカルチャーショックや新しさにワクワクしてしまった「TOTOPA 都立明治公園店」(以下、「TOTOPA」)。いかにして、この施設が生まれたのか? “仕掛け人”たちへのインタビューを、お届けしたいと思います。
サウナが都立公園に出店! 街づくりの1ピースになった経緯とは
まずお話をうかがったのは、東京建物株式会社(以下、「東京建物」)の黒田敏さん。同社はいわゆる「デベロッパー」。マンションや商業施設などの建築・開発を通して、都市開発、街づくりを行っている会社ですね。また、その一方(というか、その一環)で、スーパー銭湯チェーン「おふろの王様」を運営(首都圏で10店舗を展開)している会社でもあります。
――昨年、「都立公園の中にサウナがつくられる」と聞いて、サウナ好きとして、かなり嬉しくなったのを覚えています。“とうとう、そんな時代になったか!”と。どういった経緯から、今回、都立公園への出店となったんですか?
「2021年に東京都から、この都立明治公園の再整備にあたって『Park-PFI』という制度に基づき事業公募があったんです。その際、東京建物が(ほか数社とともに)提案した『Tokyo Legacy Parks』というプロジェクトが採用されたんです」(黒田さん。以下同)
――「Park PFI」というのは、公園の整備・運営を自治体=行政だけでなく、民間の事業者とともに行う制度ですよね。飲食店や休憩のできる施設を公園内に設置するなどして、利用者の利便性を高めるだけでなく、その収益を整備に活用したりもできます。公園が賑わえば、地域や街全体にもメリットがある。いわば官民一体での街づくりのような効果もありますよね。
「そうですね。ここは国立競技場の目の前で、『東京オリンピック2020大会』のときには関連施設であるメディアセンターが建てられた場所。それ以前は都営アパートの敷地でした。その跡地を整備する事業の提案募集ということになります。どんな公園をつくっていくか。当然ですが、街との関係性みたいなものも重要になります。
プランでは、園内の整備とともに、カフェのほかに(サウナのような)リラクゼーション施設もつくれたら、と盛り込んだんですが、その我々の提案が選ばれたんですね」
――この近辺の、最大のランドマークは国立競技場ですが、近くには他にも神宮球場があったり、秩父宮ラグビー場、東京体育館に明治神宮外苑アイススケート場などもありますね。
「そうですね。普段からランニングをされている方も多いですし、スポーツが身近な街という特徴はありますね。また、東京のど真ん中……青山や表参道、千駄ヶ谷にも近いので、昔から文化の香りも色濃かったり、カルチャーへの感度も高いエリアでもあります」
新しいレガシーをつくる。「TOTOPA」にも宿る、未来へのメッセージ
――たしかに! 千駄ヶ谷には将棋会館もありますし、どこか下町の雰囲気も残っている一方で、おしゃれやファッションに敏感な方々、そういった職業に携わっている人やクリエイターなども付近にはたくさんいらっしゃって。面白い、素敵な街という印象があります。
「はい。公募が公示された日から提出まで、およそ半年ほどだったと思います。そういったさまざまな環境要因や街の個性も踏まえつつ、公園全体をデザインするようにプロジェクトを進めていきました。
もちろんその後、微調整や追加したことはありますが、基本方針というか、この公園全体のフィロソフィー、目指す方向性みたいなものはそのときに固めていったんです」
――それは、どのような?
「まさに、さまざまな要素が混ざり合ってはいるんですが。キーワードにすると“ダイバーシティ&インクルージョン”とか、それこそ“スポーツ&ヘルスケア”とか“グリーン&エコロジー”とか」
――ダイバーシティは「多様性」。インクルージョンは……「包括性」でしょうか。
「はい。公園なので、さまざまな人が、誰でも来られるように。そしてその誰もが楽しめるように、ということですね。その一方で、先ほども言ったような、このエリアの特性、地域の方の暮らしも、もちろん大切にしていきたいのでフィロソフィーに盛り込みました。
都心ですから、緑なども生かして“憩い”を感じられる場所にしたいし、ランニングや運動なども出来て、それを終えた方がリフレッシュできる場所も設けたい、というように」
――やはり多岐にわたりますよね。完成した公園を見ると、小さな子どもたちが安心して遊べる芝生だったり遊具のあるエリア、散歩や運動もできるスペースが確保されている一方で、いずれ「森」になって、静かに散歩が愉しめるような空間もある。すべての人が心身ともに健やかに過ごせそうな……明るくてハッピーな、憩いのスポットという印象を持ちます。
「プロジェクト名『Tokyo Legacy Parks』にも……レガシー=遺産という言葉を使っています。この場所でオリンピックが開催されたり、人々が積み重ねてきたさまざまな歴史や過去があるというのもありますが、ここから新しいレガシーをつくっていこうという思いや未来へのメッセージを込めてもいるんです」
――新しいレガシーをつくる。……なんだかいいですね。なるほど。そもそも、この「都立明治公園」という場所じたいに、そうしたテーマ、理念が込められているんですね。