SAUNA BROS.vol.7でご紹介した長野県小諸市にある「TOJIBA」。本格フィンランドサウナが楽しめる「TOJIBA」は2023年1月、菱野温泉に誕生しました。丸太を組んだサウナ小屋、地元職人が手がけたオリジナルストーブ、250㎏ものストーン、浅間山の湧き水を使用した水風呂、森の中での外気浴(いや、森林浴!?)……控えめに言っても最高~と言えるサウナ施設なんですが、浅間山山麓に位置するココ「TOJIBA」、標高1050m! なぜまた、山頂にサウナを? 同施設を運営する菱野温泉「薬師館」代表取締役マネジャー花岡隆太さんにお話をうかがいました!
The Saunaでの体験で「自分もサウナやってみたい!」
――2022年に「Sauna Space TOJIBA~湯治場~」プロジェクトを立ち上げて、翌年の2023年1月、グランドオープン。八ヶ岳が見渡せる、この浅間山山麓にサウナを創ろうと思ったのはなぜですか?
「そもそものきっかけはコロナ禍でした。その当時は全国どこもそうでしたが、旅館業が大変な時期がありまして。時間に余裕もできて、新しいことを始めたいなと。また、ちょうどそのタイミングで、私がサウナ好きになったこともあります。まず、“自分が入りたい”。“毎日サウナに入ってととのって、穏やかな毎日を過ごしたい”という夢を描いて『よし、やっちゃえ!』って(笑)」
――時間があっても、実行に移すのはなかなかできないことです。
「やると決めたら、割とすぐ行動に移すタイプなんです。当初は、もう少しこじんまりとしたサウナにしようと考えていたんですけど、夢がどんどん膨らんでいって。私自身が小諸市に生まれ育って、その後、県外で働いていたこともあったと思います。地元の魅力を再発見した……と言いますか、手つかずの大自然が残る小諸市の景色を、ダイレクトに感じていただきたい。非日常の空間を体験できるサウナにしたいな、と」
――何でも、それまではサウナには興味がなかったでそうですね。
「むしろ“ととのう”って何? 眉唾だな、くらいの(笑)。そんな時、コロナ全盛期でヒマしていたら、地元の観光局で一緒に活動している仲間からサウナに誘われまして。やることもなかったですし、ものは試しと駅前のスーパー銭湯のサウナへ行って。そうしたら、まんまとハマって(笑)。次に連れて行かれたのが野尻湖畔にある、あの「The Sauna」さんだったんですよ」
――発売中の本誌「SAUNA BROS.vol.7」でも紹介している「The Sauna」へ、人生2度目のサウナで!
「本当にラッキーな出会いでした。普段ですと予約が埋まっているところ、コロナ禍ということもあって比較的空いていて。1号棟の“ユクシ”に入ったんですけど、私が何しろサウナ初心者ですからね、もう最高すぎて頭の中がバグっちゃって(笑)。その時、“自分もサウナをやりたい”と思ったんです。“この(小諸市の)環境でサウナをやらない理由はないじゃないか!”って、一気にテンションが(笑)」
――しかし「やりたい」と、実際に「やる」は全然違います。
「きっと、勢いでしょうね、それしかないです。『The Sauna』さんのように、自然を生かしたサウナを創ろう。私自身も小諸でサウナを楽しみたいなぁ~と。ゆくゆくは『TOJIBA』の由来にもなった湯治場のように“地元を含めたいろんな人たちが交流する場を提供したいな”という夢も背中を押しました。
で、取りかかるなら本業がヒマな今しかないだろうと、すぐにプロジェクトを立ち上げて。幸い時間もありましたし、あれよ、あれよという間に……という感じでした。最初は、とにかく知ってもらわなければ始まらないと思って、まだ施設も完成していないのに渋谷でグッズを販売したり(笑)、できることは何でもやりましたね」
人との繋がりで、サウナプロジェクトがいざ始動
――オープン前の2022年11月には「SHIBUYA109」にて、サウナハットやポンチョなど「TOJIBA」オリジナルのサウナグッズを販売。それにしても仕事が早いですね。
「いえいえ、人とのご縁のおかげです。私なんかは、単なる小諸の旅館のおじさんですから(笑)」
――「ご縁」というのは、例えば、どんな方が?
「小諸に移住して来た武藤千春さんと地元の繋がりで偶然知り合いまして。武藤さんはアパレルブランドBLIXZYの代表を務めていることから、『私がグッズを作りましょうか?』となって。そこからホームページやスチール、動画という具合に、『TOJIBA』のPR に必要な若い仲間たちを紹介してくれたことでプロジェクトが始動して。PR動画に出てもらったプロスノーボーダーで『テラスハウス軽井沢編』の出演経験もあるタカさん(中村貴之)をはじめ、すごい経歴の方々ばかりなんですが、皆さんコロナ禍で仕事がストップしていた時期したし、世の中も暗い雰囲気が漂っていましたから“何か楽しいことがやれるなら”と格安で協力してくれて、本当に助かりました」
――とはいえ、すべてが初めての経験です。ご苦労もあったのでは?
「それが、苦労という苦労はなかったんですよ。同じものを都会で創ると資金的にも大変なんでしょうけど、このへんには建材や薪になる赤松や杉などの針葉樹、広葉樹がたくさん生えていますし、別荘地があるので丸太を組める業者さんもいて、長野という土地柄ストーブも地元のメーカーさんがいくつかあって。一緒にやってくれる地元の仲間やプロジェクトのメンバーも協力してくれたので、“楽しい”の方が上回っていました。
ただ、出来栄えには満足したものの、反省点もありました。いざサウナ室を稼働してみると、天井高がわりとあるため、ロウリュの蒸気を100%感じることができなくて。私自身も少しもの足りないな~と感じたので、座面をもう一段設けて、ロウリュの熱をより感じられるよう改良したりもしました。
ほかにも、予算の都合さえつけば、改良したいところはたくさんありますね。バーナーで木材に“焼き”入れできたのがサウナ室内だけなので、今は塗装している外側も焼き入れしたいですし、湧き水を使っている水風呂に温泉もひきたい。あと、これからの冬の季節、雨や雪をしのぐために設置した内気浴用のバスに、こたつを置くことも計画しています。これぞ、非日常。最高じゃないですか?」