扉を開けて、中に足を踏み入れると、そこはまるで相撲部屋の稽古場! その象徴が直径約33cmの「鉄砲柱」で、本来は突きや突っ張りの稽古に使われ、力士の汗と涙がしみ込んでいく柱です。ここでは、国産ヒノキの生きている木が、汗だくになってサウナの稽古に精進する空間に設置されています。これから、どのようにこの木が変化して味わい深くなっていくのでしょうか。
鉄砲柱の後ろに全身鏡が据え付けてあるのも相撲部屋の流儀。立ち合いや技をかける体勢のチェックなどに使われますが、サウナ室にあるのもすごく便利。体型や汗の出方を確かめるのにうってつけ。自分の姿を鏡に映して、自分と向き合う。相撲でもサウナでも、どちらにおいても、すごく大事なことかもしれません。
全身鏡は高さ2m、幅1.5m。鉄砲柱とともに相撲部屋の世界観を伝えるだけではない実用的なアイテムです!
サウナ室は床が底上げされて高くなっており、逆にストーブは掘り下げて設置位置を低くしてあります。天井も下げられているので縦のスペースは狭め。熱気を感じやすいように天井高を2mにしたそうです。本来なら5段のベンチを設けられるところを2段にして、どこに座っても、しっかり熱気に包まれるよう配慮したつくりになっています。サウナ室の扉下部を開けてフレッシュエアーを取り込みつつ、熱を逃がさず循環させるため、排気口の位置にまでこだわりました。
20~25人を収容できて、寝サウナのスペースも2人分。テレビは2台設置されていて、オリンピックのように異なる競技が同時に行われている場合には異なるチャンネルを同時に流せます。このサウナ室のテレビで相撲観戦したい! そう思う人、多いのではないでしょうか。
サウナストーブとして採用されているのは、ハルビアの「CLUB PRO」。最大100kgのサウナストーンを搭載できる大容量でタフな高出力モデルです。セルフロウリュもどんとこい。サウナ室では土俵を離れた後のセカンドキャリアとしてサウナ施設経営を選び、このサウナ横綱をオープンさせた竹内太一さんをはじめ、元力士によるアウフグースを受けることもできます。
夢を叶え、理想とするサウナ施設をつくるための準備として、「恵比寿サウナー」「新宿天然温泉 テルマ―湯」「湯乃泉 草加健康センター」で働いた竹内さんは、うちわ、ブロワー、そしてタオルと、3つのアイテムを使いこなすことができ、その極意をスタッフにも伝授していくそう。果たして元力士によるタオル熱波の威力は? パワフルなことは間違いなし。耐えきれるでしょうか。
水風呂は力士4人分!? 深さ120cmで潜水OK♪ オーバーフローが快感!
水風呂は体重170kgあった現役時代の竹内さんが4人ほど入ることができる広さ。設定温度は14~15℃です。深さもあって水深は120cm。かけ流しにしてあり、潜水も禁じ手ではありません。頭の先までしっかり冷やせてオーバーフローを楽しめる。場所はサウナ室の真正面。稽古場(サウナ室)を出て3~5歩で水入りできます。
休憩スペースは、サウナ室と水風呂の奥に広々と設けられています。空調管理の行き届いた内気浴で、さまざまなデザインのイスが並んでいます。普通に座りたい。背中だけ倒したい。寝転びたい。人それぞれ好みのイスを見つけて楽な体勢になれるのがポイント。充実した中入りの時間を過ごせます。
用意されているドリンクも追加料金なしで飲み放題。自家製そば茶、スポーツドリンク、レモン水の三役がそろい踏み。そば茶は食事処で提供される十割そばを打つために仕入れる国産のそばの実を煮出して作られていて、ここでしか味わえません。3種の力水で、水分、ミネラルをしっかり補給して次の取り組みに備えられます。
また、入浴後に髪を乾かすドライヤーはダイソン。カウンターの隅にはコンセントの口があるのは、例えば愛用するヘアアイロンなどを持ち込んで使ってもらえるように。男性専用施設ではあるものの、レディースデー、男女共用デーも開催。万全の受け入れ体制を整えています。
追手風部屋(おいてかぜべや)直伝のちゃんこ鍋をひとり鍋で味わえる
稽古場サウナでしっかり汗をかいたら、おなかも満たしたい。食事処のお品書きには気になる料理がずらり。何といっても外せないのはちゃんこ鍋! 追手風部屋直伝の味です。基本はしょうゆと塩。しょうゆ味の「横綱ちゃんこ鍋定食」をいただきました。
鶏ベースのスープに、豚肉、手羽、エビ、ホタテに、野菜もキャベツ、ニラ、水菜、ニンジン、シイタケ、エノキ、焼き目を付けた長ネギと具がたっぷり。そのうまみが溶け込んだ、自然な甘さのやさしい味わい。元力士が経営するちゃんこ料理の店に行きたいものの、自分だけでは敷居が高くて……。そう感じていた人も、ここなら本物のちゃんこ鍋を、ひとり鍋で楽しめてしまいます。
塩味のちゃんこは大根おろしがたっぷりのおろしだれ味。さらには、これも追手風部屋名物のカレーモツちゃんこ、トマトとチーズ、豆腐チゲなど、変わり種のちゃんこ鍋も限定メニューとして登場するというから胸が高鳴ります。
一品料理の看板メニューは「横綱こぶしつくね」。鶏肉と豚肉の合い挽きで約350gの重量。味噌のコクと大葉の香りがたまりません。食べ応え満点。卵黄、練り梅とかつおぶしの山海ぶし、大根おろし、レモンなどで味変するのも妙味で、飽きずにペロリといけてしまいます。
十割そば、天ぷらといった、ザ・日本の味にこだわり。つなぎを使わない十割そばは風味豊か。天ぷらの揚げ油には、素材の味を引き立てる太白油を使用しているそう。アスパラの天ぷらとチーズを組み合わせるなど、創作アレンジで変化をつけたメニューもあるほか、サーモン塩辛といった気になるおつまみも。ドリンクメニューも川越が誇るクラフトビール「COEDOビール」をはじめ、豊富に取りそろえ、選びがいがあります。
サウナの稽古後にぴったりなのはいうまでもありません。優勝です。飲食のみでの利用も物言いがつくことはなく大歓迎。食事だけでも真っ向勝負しています。
次回は元力士でオーナーの竹内さんのインタビューをお届け
元力士がつくり出した「相撲」をコンセプトにした唯一無二のサウナ施設。現役時代は大翔龍のしこ名で活躍し、日本相撲協会に残る道もあったものの、なぜ竹内さんは引退後のセカンドキャリアとしてサウナを選んだのか? サウナ横綱の誕生秘話と開業までのストーリーを次回、インタビューでお届けします。
サウナ横綱 ※男性専用施設(レディースデー開催予定)
■住所:埼玉県川越市中原町1-2-6 カシーラ彩食館1F
■営業時間:前10:00~深0 :00、定休日=無し
■料金:60分=900円、90分=1,700円、120分=2,200円(120分以降、延長30分ごとに+500円。土日祝は+300円)
※詳細は公式HP(https://sauna-yokozuna.com/)をご確認ください
撮影/山口京和
取材・文/吉牟田祐司