遅ればせながら“サウナ万博2024 in 豊後大野 ”をリポート

サウナ好きによるサウナ好きのための野外フェスティバル「サウナ万博2024」が、去る10月19、20日、大分県豊後大野市で開催された。

毎年、この時期になると「今年も野外フェスの季節が終わったな~」と寂しい気持ちになるのだが……まだあった! サウナに入り放題な上に、音楽も聴けて、ご飯もお酒も楽しめる、何とも胸躍るフェスが!!

5回目となる「サ博」は“自然で遊び、自然へ還元する、自然を通して自然を愛す”をテーマに、自然の恵みを存分に感じながらサウナや音楽、サ飯を楽しむことができるイベントを目指すそう。さあ、どんなフェスだったのか? SAUNA BROS.Vol.9入稿のため作業が遅れたが、さっそくリポートしていこう。

目次

“サウナのまち”大分県豊後大野市で開催

「サウナ万博」主催するのは、SAUNA BROS.でもおなじみ「おんせん県いいサウナ研究所」。日本一の源泉数・湧出量を誇る“おんせん県おおいた”にありながら温泉がない町・豊後大野市で2020年3月に発足したアウトドアサウナ協議会だ。

豊後大野市は、翌2021年7月に“サウナのまち”を宣言し、行政としては初めてサウナによる町おこしを始めた自治体。ほかにも現在は、山梨県や鳥取県、北海道札幌市・十勝などの自治体が、サウナ×地方創生を掲げて地域の活性化に取り組んでいる。

JR豊肥本線・豊後清川駅から車で5分(徒歩30分ほど)。会場となった清川町「里の旅リゾート ロッジきよかわ」の駐車場には、オープン1時間前だというのに次々と車がやって来る。ナンバーを見ると、地元・大分のほか福岡、長崎、熊本……近県からも来場しているようだ。ほかにも「サウナのまち」とラッピングされた送迎バスからも参加者が続々と。

会場内の川べりに並んだテントの煙突からは、煙が立ち昇っているのが見える。周りを囲む山々と朝もやのコントラストが、実にいい雰囲気。今回の「サウナ万博」では、全国からファン垂涎の人気テントサウナをはじめ、20基が集結。小雨交じりのあいにくの空模様の中、連日100~130人が会場に足を運んだ。

ファン垂涎のテントサウナ全20基が集結!

ゲストとして招待されたテントサウナのラインナップは、サウナを“科学”と捉える「madsaunist」、サ道×茶道の「AMBER」、科学非科学の両側面を探究する「EN°SAUNA」、木造組み立て式の「SAUNA BOX」、今回の「サ博」のために2日間限定で建てられた「OUHI SAUNA」のほか、トレーラー&トラックサウナ、合計3基がフル稼働したAMBER製の迷彩柄テントなど。今年「ロッジきよかわ」に完成したという小屋サウナ「なばサウナ」も気になるところ。

午前9時にオープンするや(8時開場)、更衣室で水着に着替えた参加者がそれぞれお目当てのテントに向かう。大分初上陸となる「madsaunist」をはじめ、「AMBER」、「EN°SAUNA」の前には早くも列ができている。

東京、山口、熊本と拠点もバラバラで、いずれも全国を飛び回る人気アウトドアサウナチーム。実際「madsaunist」は、初の全国ツアー「さらには、「madsaunist“SUPERHEATED STEAM”tour 2024」の真っ最中だった。

あわただしいセッティングの合間に話を聞かせてくれた「madsaunist」の総合演出家・UKさんいわく「この3組が揃うのは奇跡ですよ! テントサウナ界のアベンジャーズですから!!」とのこと。どうりで大勢、並んでいるわけだ。

熱×蒸気、これからの時代のサウナを体験

「室内の気流をデザインすれば、機能という観点ではアウフグースは不要」だと考え、高温度で高湿度、なおかつ新鮮な空気に満ちた蒸気浴を目指す「madsaunist」。「言葉では説明しづらいので、とりあえずサウナに入って、体験してください」というUKさんに案内されてテントに入ると、すでに薪ストーブが放つ熱でアツアツだ。

「今のサウナは気密性を重視して熱を“閉じ込める”ものが一般的ですが、madsaunistが手掛けるサウナは“逃がし続ける”ことを追求。窓を開けて室内の対流を生みながら、外から新鮮な空気を取り入れて、適温に持っていくことを考えています」とはUKさん。その日の気温や湿度、テントを張る地域の環境なども考慮して細かくセッティング&ディレクションするというから驚く(テント内外で流す音楽も毎回、そこに合わせてチョイスするとか)。

さらには、「madsaunist」が考案・製作したスチームジェネレーター(蒸気発生装置)による蒸気がヤバい! 同装置は、タンク内で沸騰した水蒸気を煙突の熱でさらに加圧し、蒸気口から排出。蒸気の勢いによって気流が生まれることで湿度やアロマの香りが室内全体に広がる仕組み。「この飽和水蒸気と過熱水蒸気をミックスした“かけ流しの蒸気”が、これからの時代のサウナです!」と、UKさんは力を込めた。

目の前の清流で楽しむ水風呂が気持ちいい!

そしてテントに入って5分ほど。UKさんによれば「水蒸気は温度が高まるほど熱伝導率が上がることが知られている」そうで「水蒸気自体が細かくなって輻射熱を発するようになる」ことから、短時間でもしっかりと熱が体中に伝わってくる。

しばらくすると、室内で水シャワーを浴びるよう促される。それまでは、ご一緒した在日フィンランド大使館商務部上席商務官/フィンランド政府観光局Visit Finland日本支局代表・沼田晃一さんと「案外、入っていられますね~」なんて、のんきに言い合っていたのだが、瞬く間に尋常ではない熱波が……。

「madsaunistの醍醐味の1つ、クナイプ(水浴び)です。熱くなった体を瞬時にクールダウン。“熱”と“冷”の刺激を繰り返すことで、深部体温を確実に温めるのと同時に代謝が活性され、体全体がリフレッシュします」(UKさん)。

あまりの蒸されぶりに、ものの10分弱でテントを飛び出すと、会場内を流れる奥岳川にザブ~ン……といきたいところだが、足元からそろりそろり(秋~冬場の水風呂はこれが肝心)。気温は16℃。水温も同じくらいか? 日本百名山の一座である祖母山を水源とする清流の水が、蒸された体にめちゃくちゃ気持ちいい! これぞ、テントサウナの醍醐味だろう。

ととのいイスも川沿いにズラリ。野外ならではの開放感も手伝って、周りの参加者も至福の表情を浮かべている。どこまでの広い空、煙突から昇る煙の香り、川のせせらぎ、そよぐ風……。「五感で味わってこそサウナ」とは、よく言ったものだ。

UK(総合演出家)・YAS(プロマーケター)・YsK(医師)という異質な経歴を持つ3名により結成された日本を代表するテントサウナのスペシャリスト集団「madsaunist」。「言ってしまえば変態の集まりですよ」とUKさんは笑うが、その好奇心と探求心、チームの飽くなきこだわりが、テントサウナ界の雄と言われるゆえんなのだな~と、ととのいながら納得する。

テントサウナ界のアベンジャーズを堪能する

続いて、サ道と茶道を取り入れた独自の「羽釜蒸気浴」(「madsaunist」との共同研究し、飽和水蒸気を活用した「羽釜2.0」を装備)を提供する「AMBER」。サーモグラフィー測定し、温度、絶対湿度・相対湿度などをデジタル管理するとともに、本格ロシアウィスキングやバーニャセレモニーも学ぶ「EN°SAUNA」をはしご。

さすがは、アベンジャーズ。畳の上であぐらをかききながらテクノ法要が鳴り響く「AMBER」、セルフウィスキングができる「EN°SAUNA」。どちらも「madsaunist」に負けず劣らずのこだわりが詰まった新感覚のテントサウナだった。

ほか、こちらも人気だったトレーラー&トラックサウナも、都心ではなかなか味わえない貴重な体験。大開口の窓から景色が眺められる「OUCHI SAUNA」も、開催中はずっと長蛇の列ができていた。

会場常設のフィンランド式小屋サウナ「なばサウナ」は本場を思わせる(行ったことはないが……)雰囲気で、温度・湿度とも最高のセッティング。後日「EN°SAUNA」のSNSでも、忖度なしで本当にすごいサウナだったと激賞されていたほど。

サウナストーブは「Fintec」製。少し耳慣れないが、もともとはラグジュアリーホテルに機材を納入していたドイツのメーカーだけに質実剛健で高品質、燃焼効率も高い。3種類、220㎏ものサウナストーンが乗ったストーブから繰り出されるロウリュの香りを、エストニア産材を使用した内壁が最大限に引き立て、阿蘇火砕流で作られた地下水の水風呂も相まって抜群のととのいを感じられた。

翌20日には、「サウナサン」(長崎県佐世保市)足立琢哉支配人によるアウフグースも大盛況。水漏れ事故の一件を知る参加者も多く、最後には応援の拍手が起こっていたことも記しておこう。

アウトドアサウナならではのよさを実感

その「なばサウナ」の前にある喫煙所は、取材するにはもってこいの場所だ。話を聞いた福岡の男性グループは「雨だったので最初マジか~って思ったけど、それも含めてめっちゃ楽しい」、「川で浴びる水風呂が最高!」と口を揃える。「地元ではこうしたイベントが少ないのでうれしいですね」と喜びを表すのは、豊後大野市から参加した女性。参加者は20~30代が中心で、男女比は8対2くらいだったように思う。

1人で来場しても、へっちゃらだ。「陰キャZONE」なんて“孤独のサウナ”を楽しめるスペースもちゃんとあるから「フェスって騒がしいんでしょ?」、「1人では気が引けて…」という人でもまったく問題なし。実は、ここからの眺めが一番よかったりもした。

大体の人が10分ほどでテントを出てくるからテントサウナの回転は早い。水風呂も川に飛び込めばいいから並ばずに済む。当日は小雨がパラついていたものの、どうせ濡れるのだから気にならない。これがアウトドアサウナのいいところ。川べりやベンチなど、それぞれが思い思いの場所でゆったりとした時間を過ごしている。

肌寒くはあったが、物販コーナーではポンチョやスウェットなども売っていたから安心だ。土産代わりに購入する人も多く見られた。

物販コーナーにはSAUNA BROS.も出店を

物販は「サウナ万博」のスタッフTシャツも手掛けた「MOBSTYLES」、七味からサウナハットまで扱う「イリノベ倶楽部」、大分県産のオリジナルアロマやポンチョなどを販売する「S.J.S x um design」。サウナブランドは、福岡発の「ととのっとーと。」、「EN°SAUNA」、「SaunaLove」、「REBUILD SAUNA」、「吉良洋服店」が出店。「サウナサン」のブース横では「SAUNA BBROS.」チームも販売させていただいた(みなさまその節は、お買い上げ・お声がけありがとうございました)。 

なお、先の「なばサウナ」の情報は、当日トラックサウナも繰り出していた「S.J.S」の代表・井尾文継さんによるもの。スポーツを通じて大分を盛り上げる同社は、サウナキャビンの施工・保守も手掛けているとのことで、「なばサウナ」も建築。サウナで地元活性化に尽力する一人だ。

また「ととのっとーと。」のスタッフとは、1日目の終わりに立ち寄ったJR豊後竹田駅前の「竹田温泉花水月」でバッタリ。これまで行ったサウナ施設の情報を交換しながら、福岡のサウナ事情を聞く……そんな出会いがあったのも、こうしたフェスならでは。

宿泊といえば、「サ博」では会場の「ロッジきよかわ」や「おんせん県いいサウナ研究所」代表の高橋ケンさんが運営する「LAMP豊後大野」にも泊まれるが、部屋数に限りがある。会場周辺には宿が少ないため、遠方から訪れる人は、最初にホテルなどを抑えた方が賢明かもしれない(ちなみにSAUNA BROS.チームは、会場から車で20分ほど。JR緒方駅近くにあるゲストハウス&コワーキングスペース「cocomio 豊後大野市関係人口交流拠点施設」に滞在)。

音楽もサ飯も楽しめる野外サウナフェス

ステージから聴こえてくる音楽も気持ちいい。19日はJUNK STYLE、俺たちのまみぃふぁんく、田原“104”洋。20日は鳴海敦、オノマトベル、DUNK☆IN、THOMAS MARQUARDTといった東京および九州で活躍するミュージシャンが楽曲を披露(合間にはDJが’80~’90年代のヒット曲メドレーを)。中でも、俺たちのまみぃふぁんく、DUNK☆INは、参加者も巻き込んで大いにステージを盛り上げた。

飲食コーナーは、キンパ、ピザが好評だった「カフェパラム」、スパイスカレーが人気の「おちゃのまたぴあ」、大分県保戸島の郷土料理が食べられる「Earth-terrace 保戸島ひゅうが丼」、エスニック料理の「やんさんのエスニックごはん」、たこ焼きやスパイシーヌードルなどメニュー豊富な「スナック感受性」、西大分のコーヒー豆販売専門店「CEDERS COFFEE」などが出店。悪天候もあって、温かいカレーやスープ、コーヒーがありがたかった。大塚製薬が出店しているため、イオンウォーターを飲むことができたのもうれしい限り。

サ飯に舌つづみを打ちながらステージを眺めるもよし。見渡す限りの空と大自然を眺めながら音楽に身をゆだねてととのうのもよし。フィンランド発、木々への情熱を競う「ツリーハギング選手権」(19日)やフィンランドの少女を魅了しているという“エア乗馬”コンテスト「ホビーホージング選手権」(20日)といったゲームコーナーに参加して思い出を作るもよし。(※SAUNA BROS.vol.9でもレポート掲載しています!)

晴れるに越したことはないけれど、どんな天候でも、どんな人でも楽しめるのが「サウナ万博」の魅力。何より、ひたすらサウナに入って、ただただボ~ッと過ごす。日々の喧騒を忘れることができる、最高のぜいたくがここにある。

ととのい&ピース。「おんせん県いいサウナ研究所」のケンさんが言う「特別なイベントではなく、地元の祭りのような、ずっとそこにある存在」になっていくであろう、大分県の小さな町のサウナフェス。多くの人に知ってほしい気持ちとは逆の変な願いだが、これくらいの規模、今と変わらぬゆる~い雰囲気で末永く続けていってほしいと思った2日間だった。

撮影/山口京和
取材・文/橋本達典

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