サウナでつながる—―豊後大野×フィンランドの共通点とは

2024年10月18日、大分県豊後大野市・エイトピアおおのにて、フィンランド交流事業シンポジウム「繋がるフィンランド~サウナでつながるポジティブ・クレイジーたち~」が開催されました。

同シンポジウムは、タイトルにもあるよう、“フィンランドと繋がる”がテーマ。距離7661㎞、平均飛行時間は13時間ほど離れた日本とフィンランドが、サウナや食などを通して交流を図り、教育や文化のコミュニティー形成を探っていこうというものです。

目次

7,661㎞の距離を超えてフィンランドと大分が繋がる!?

今回のシンポジウムは、豊後大野市が主催となり、SAUNA BROS.では本誌、WEBでもおなじみの「おんせん県いいサウナ研究所」が企画・制作。

同研究所は、日本一の源泉数・湧出量を誇る“おんせん県おおいた”にありながら温泉がない町・豊後大野で発足したアウトドアサウナ協議会です。

豊後大野市の豊かな自然を活かし、REBUILD SAUNA(同市緒方町)、Tuuli Tuuli(清川町)、JOKI SAUNA(清川町)、稲積水中鍾乳洞(三重町)、犬飼リバーパーク(犬飼町)といった川サウナや鍾乳洞サウナ、ユニークなサウナ小屋などを展開しています。

また、シンポジウム翌日の10月19日と20日には、2日間にわたって同市内で開催され、盛況のうちに幕を閉じた「サウナ万博2024」も主催しました(サウナ体験&リポートは後日!)

大分にあって温泉のない町

話はシンポジウムに戻って……。17時、川野文敏豊後大野市長による開会のあいさつでシンポジウムがスタート。

豊後大野市長・川野文敏

「おんせん県おおいたにあって温泉のない豊後大野市では、古くから石風呂で汗を流して体を癒やしてきました。このような歴史的背景のもとで、本市のおんせん県いいサウナ研究所のみなさんは、令和2年(2020年)からアウトドアサウナの取り組みを進めてきました。

私もこの企画に賛同して、令和3年(2021年)7月に豊後大野市を“サウナのまち”として宣言しました。以来、サウナの活動が活発になり、2023年10月の第4回サウナ万博では、サウナ発祥の地であるフィンランドの関係者の方にお越しいただき(中略)、フィンランドの精神文化“SISU(シス)=折れない心”とサウナの関係についてのお話に感銘を受けました」とは、川野市長。

石風呂とは、岩穴の中に蒸気を充満させて入浴する蒸し風呂の一種。要は、温泉がないがゆえに、豊後大野市では古来より石風呂が発達。同市は、もともとサウナとの親和性も高い土地柄のようです(REBUILD SAUNAなどがある緒方町だけで、石風呂が11カ所も!)。

それにしても、なぜゆえ豊後大野がサウナのまち宣言をするまでになったのか……詳しくは、SAUNA BROS. WEBで過去に掲載されたおんせん県いいサウナ研究所代表・高橋ケンさんのインタビューを読んでいただくとしまして、シンポジウムのリポートの続きを。

ムーミン谷から学ぶことは多い

2部構成で行われたシンポジウムの第1部では、在日フィンランド大使館商務部上席商務官/フィンランド政府観光局Visit Finland日本支局代表・沼田晃一さんが、フィンランド文化について講演。「繋がるフィンランド~サウナでつながるポジティブ・クレイジー~」と題して、7年連続で幸福度世界一となったフィンランドから教育・食・福祉・文化を学び、日本とフィンランドの共通点を探りました。

在日フィンランド大使館商務部上席商務官/フィンランド政府観光局Visit Finland日本支局代表・沼田晃一

沼田さんによれば、国土の多くを森が占めているため自然と共存していること。水が豊富であること。シャイであること。何より風呂やサウナが好きで、それがリラックス方法であることなどが共通するそうです(ほかにも、フィンランドも日本と同じく土足ではなかったりします)。

話は進み、これからの日本は「新しい時代のムーミン谷」のようなコミュニティーの形成が大事になってくる――とは、沼田さん。

いわく、日本独自の「共存・共生・共栄」は地域の日常では重要なコミュニケーションとなっていますが、フィンランド生まれのムーミンの世界も同じで、彼らが暮らすムーミン谷のようなご近所付き合いこそが、世界を広げるコミュニケーション手法=サスティナブル・コミュニケーションであり、日本とフィンランドという遠く離れた2つの国や、違う町と町が「ポジティブ・クレイジー」たちの活動を通してどのように繋がっていけばいいのか……? という興味深い内容でした。

2017年フィンランド独立100周年の際、フィンランド政府が打ち出したテーマが「一緒に」(Yhdessä)でしたが、それにもどこか繋がる話です。

ちなみに、聞きなれない言葉「ポジティブ・クレイジー」とは、沼田さんによる造語で「フィンランドの人は、外見は真面目そうでも内面にはポジティブでクレイジーな部分を隠し持っている人が多い」とのこと。直訳すると、前向きなおバカ……。とはいえ、クレイジーは「いい意味でヤバい、すごい」などとも訳されますから、ご自身も「激レアさんを連れてきた。」(テレビ朝日系)に登場してもいいくらいポジティブかつクレイジーなお方である沼田さんにとっては、最高のほめ言葉なのでしょう。

「フィンランドのSISUを実行し、縁もゆかりもない大分でサウナを立ち上げ、町おこしに一役買っている前述のケンさんしかり、そういう人たちが増えていけば、過疎化などさまざまな問題を抱える豊後大野のような地方都市、ひいては日本全体の未来も決して暗いものではないハズ」と沼田さん。

沼田さんについては、天野春果さんによるSAUNA BROS.WEB連載「企画屋アマノ〜アイデアのととのえかた〜」で詳しく書かれていますので未読の方はぜひご一読を。

ポジティブ・クレイジーたちが集結

続く18時からスタートした第2部では、その沼田さん選りすぐりのポジティブクレージーたちが豊後大野市の会場に集結。

先に紹介した元川崎フロンターレプロモーション部長で、現在は南葛SC(※1)のプロモーション部長を務める株式会社Two Wheel Sports代表取締役の天野さん、“サウナ西の聖地”と呼ばれる温浴施設「湯らっくす」(熊本県熊本市)の社長を務める西生吉孝さん、在日フィンランド大使館商務部上席商務官のインカ・リーサ・ハカさんを迎えてフィンランドとの交流を知識や学びとして深めるべく、沼田さんとともにクロストーク。

(※1)南葛SC=サッカー漫画『キャプテン翼』の主人公・大空翼が所属するチームと同名の社会人サッカークラブ。原作者である高橋陽一氏がクラブの代表を務め、“葛飾からJリーグへ”をテーマに活動しています

沼田さん、インカさんによるサウナをはじめとするフィンランドの文化、地域におけるコミュニティーの醸成。大分の隣県である熊本を“サウナのまち”へと変ぼうさせた中心人物である西生さんから見たフィンランド友好都市に向けた豊後大野の魅力に、会場を訪れたサウナを愛する市民のみなさんも大きくうなずいていました。

そしてトークも終盤、「今回、豊後大野でいくつかサウナに入って、0歳から死ぬまでサウナに入ると言われるフィンランドのようになっていってほしいと思った」という天野さんからの提案や「“カルチャー”とは、本来の意味でライフスタイルも含んでいて、豊後大野にはフィンランドのようにサウナ文化が生活に根付く可能性があると思う」と熱く語る沼田さんから見た今後のサウナのまちへの展望に、会場からは大きな拍手が。

また、途中からは企画・制作として同シンポジウムを訪れていたケンさんが沼田さんからうながされて登壇。

「サウナをやっていく中で、フィンランドの文化が豊後大野にはフィットするところがあると思っていたのですが、それを確信しましたし、繋げる切り口が見えた」と、シンポジウム全体の感想を。

その「見えた切り口」は、また後日。「サウナ万博2024」をリポートする中で実現したケンさんのインタビューでお届けします!

撮影/山口京和
取材・文/橋本達典

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