5 サウナを作る
――実際にサウナを作ることになってからのお話も聞かせてください。入らせていただいて、すごく気持ち良かったです。温度も、水風呂も、何と言っても外気浴がまた最高で。自然に包まれているというか、一体化したような体験でした。
ありがとうございます。ただ、コンセプトをずっと考えていて。長野にリビルディングセンタージャパン、通称リビセンって言われる人たちがいます。その人たちが廃材を、解体する家の施主から買って、古材でデザインして建物を作ったり、改装したり、古材を売ったり、古物商をやっていたりするんです。2018年にその人たちのトークショーをLAMP豊後大野でやったんですよ。そのリビセンのカルチャーに影響も受けて、自然豊かなところで環境に優しいものを作っていきたいと考えていました。ここでサウナをやろうと考えた時に、まだ古い材木で作ったサウナって他にないなと思ったんです。
それをコンセプトにしてサウナを作るとべべに言ったら、初めはめっちゃ詰められました(笑)。「なんでサウナやるんですか」って。当時、べべのところには「サウナ作りたいんですけど」って言うのが、めちゃくちゃ来て、すごかったらしいんです。サウナ作ってください、プロデュースしてくださいとか。話していくと、やっぱりどうやって集客するのかとか、考えられていないことが多かったみたいで。そんな時に、俺がやりたいって言いだしたから、ふざけんなよってなった、と(笑)。お前もかよ、熱量ないのにやるなよみたいな(笑)。どういう風になりたいかってビジョンもないのに、やる意味あるんですかみたいな感じだったんですね。めちゃくちゃバチバチやり合いましたよ。「なんでそんなことお前に言われなきゃいけないんだ」って。それでもその後、俺の熱量を感じてくれて、「その熱量だったら、やってもいいんじゃないですか」と納得してくれて。
――実際入らせてもらって、めちゃくちゃ気持ち良くて、サウナ室もゆとりのある広さでした。
中にあるちょっとした座るボックスを置いたことで天井が低く感じるんですけど、あのボックスがないと、結構、天井が高いサウナ室ではあるんです。
――作る時はどこから考え始めるんですか?
職人さんとまずストーブの位置と煙突をどこから出すかっていうのからスタートした感じです。最初は扉を真ん中に作る予定だったんです。そうなると何か変だなってなって、今の形になったんです。ストーブの位置と煙突の位置がどうしても決まってしまうから、そこが先に決まった感じですかね。ストーブを決めて、入り口を決めて、椅子をどういう風にして……という感じですかね。
――壁面の木のタイルだったりと、窓とか、デザインも個性的ですよね。
窓も捨てられていたもので、ほぼ廃材で作ってるんです。工務店がたくさん廃材を持っていて。使ってないものとか、多めに材料を入れたものとか、使われないまま置いてあったりして。「いらないですか?」と聞いたら、「もういらないよ、持ってっていいよ」って。じゃあ……って感じで使わせてもらって。とにかく廃材で作るっていうところをメーンに考えました。床板は職人さんが長屋を持っていて、もう取り壊すと言うので、「じゃあその全部廃材でください」と言ったら、「剥ぎに来てくれたらいいよ」って。みんなで剥ぎに行って持って帰ってきました。
――実際、ストーブ入れて小屋が完成して、その後(ストーブに)火を入れて、すぐ良い感じになったんですか?
温度もちゃんと上がって、割と良い感じでしたね。でも常に改良はしています。例えばストーンを置く高さとか。前までは煙突巻いてたりとかしてたけど、それをやめたり。今は幅を広げてロウリュもだいぶんかけやすくなったけど、前は煙突に巻いていて、サウナストーン上部の幅が狭くてかけづらかったので。そういう調整をちょこちょこやっていますね。それに実はサウナ用のストーブではなくて、普通の家庭用の国産のストーブなんです。
――そうなんですね。完成してから野田(クラクションべべー)さんはいらっしゃったんですか。
一応、サウナのクオリティーチェックには来ました。火入れてロウリュして、それを鋭い眼光で見ていましたね(笑)。「水めちゃくちゃいいっすね」って言ってくれて「そうだよね、よかったー」って(笑)。
――野田さんに以前The Saunaのお話を聞いた時は、はじめは温度上がらなかった、と聞きました。
本当にそうでした。「泣いた、すごく悔しかった」って言ってましたね。なんかあいつ、すごく綺麗な心を持ってるんです。ああいう見た目でふざけたりするんですけど、めちゃくちゃ根は真面目で、めちゃくちゃストレートで。だから人に好かれると思うし、俺もめっちゃ好きなんです。
6 これからのこと
――サウナのまち構想はまだまだ道の途中ですね。
こばやしあやなさん(フィンランド在住の文筆家、コーディネーター)と湯らっくすで一緒にイベントに出させてもらった時にお話ししたのですが、フィンランドはコロナ禍が明けたら日本人がめっちゃ来るっていうのがもう分かっていたので、姉妹都市協定を結びたいと言っているらしく。どれくらいの規模で、どういうものを求めているかって言ってくれたら繋ぐよって言ってくれて。となれば、市長連れてフィンランドへ行きたいなと。
「どのぐらいの人口規模の街求めている?」と言われたので「豊後大野市は35000人ぐらいなんです。そのぐらいの町とかあります?」って言ったら、「首都レベルだ」と言われて(笑)。うちの町って首都レベルの人口なのか……いや、ちょっと考えます……って(笑)。全然勉強不足でした。ですが、やはり環境が似ている田舎の方がいいですよね。フィンランドは川よりもどっちかっていうと湖がほとんどなので、いろいろと調べて、いざとなったときに相談させていただこうと。タイミングを見ている感じですかね。
――これからのサウナのまちの発展楽しみにしています。ありがとうございました!
会社を辞めた後輩と久々に再会して、今地域の人のために頑張っている話を聞き、素晴らしい施設を作ったことに刺激と喜びをもらって、なんとも幸せな気持ちになりました。次は宿泊して星降る夜を体験したい。
撮影/長谷繁郎
文/西啓亮
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