成功の秘訣――行政や町の人を動かせたのは、「まずサウナがある」状況を先につくれたから
――皆さんを巻き込むというか、共に信じるというか。なんか、いいですね。めちゃくちゃ。
高橋「そうなんです。だから、たまに『大変だったんじゃないですか?』と言われるんですが、それほど苦労みたく感じた記憶はなくて。ほんと、関係していた人すべてが、同じように可能性を感じて、一緒に進んできた感じですね」
――自治体や、いわゆる「サウナめし」を提供してくれる飲食店などとも協力体制を構築されましたが。
高橋「それも、かなりスムーズだったというか。そもそも、僕らのほうで、まずコンテンツである『サウナ施設』を準備できていたのが大きかったとは思うんですが、そういうベースがきちんと先に整っていたので、市も県も『こういうことも出来ますよ』といろいろと提案もしてくださいましたし。これが、もしそうではなくて、アイデアだけの机上の空論みたいな感じだったら、もちろん難しかったとは思いますけど」
――あぁ、なるほど。
高橋「僕らの成功事例を見て、さまざまな自治体だったり、志のある人が話を聞かせてほしいなんて言って来てくださるんですが、僕らが上手くいった理由って、ずばりそこのところだと思うんです」
――順番、大事ですね。たしかに。先に行動しないと……。サウナがすでにあるという事実は、デカいですよね。
高橋「はい。実際にお客さんも来始めているとなれば、見通しも立ちますし。民間の僕らが先に動いていた……サウナが『もうあった』のは、重要なことだったとは思いますね」
――「サウナめし」を提供してくれた飲食店さんたちも、同様ですよね、きっと。
高橋「そうですね。もともと自分たちもよく食べに行っているお店に、一軒一軒声をかけてご協力をお願いしたんですが、それも、とくに大げさではなく『サウナで人がこの町に来てくれたら、って思ってる』『とくに新メニューをつくってほしいんじゃなくて、どれかおススメのメニュー、自慢のメニューを1品、「サウナめし」として冊子に載せさせてほしい』ってお願いしただけですから」
――そもそも顔見知りで関係性も出来ていて、無理のない範囲で一緒にwin-winを狙いに行く……。
高橋「はい。だから、その部分でも行政も『それも素晴らしい』『一緒にやります』って市役所でも募集してくれたりして。僕らのほうで20軒くらい動いたんですが、市のほうのラインからも集まってくださいました」
――いやぁ、聞けば聞くほど、なんていうか……自然体で、かつピースフルなプロジェクトですね。
高橋「タイミングとして、コロナ禍と時期が重なってしまったんですが、それも逆に……いま考えると、追い風だった気もするんですよね。緊急事態宣言などもあって、お客さんがますます来なくなっていた時期でもあるので、僕らも時間に余裕もありましたから(笑)」
さらなる理想を求めて……「おんせん県いいサウナ研究所」がこれから目指すもの
――稲積水中鍾乳洞さんはその後、サウナの営業時間枠を拡大。
青松「オープンしてから1年半が経って、世間的にもサウナが以前より受け入れられやすくなってきましたし、鍾乳洞でのサウナ体験というのも、おかげさまで認知度が上がったので、今は一般の見学者の方もまったく悪い反応はなくなりました。現在は朝・昼・夕方と1日3枠の時間を設けさせていただいています。また、稲積水中鍾乳洞自体の知名度も上がったので、見学客も増えてきています」
――「ロッジきよかわ」さんも、「カフェ パラム」さんも、利用客は順調に?
江副「そうですね。おかげさまで(笑)」
高橋「小野さんのところは、サウナ(Tuuli Tuuli)もそうですし、カフェ自体も……」
小野「そうですね。冬の間は、サウナを回ってきたお客さんが、うちにも回って来てサめしを食べてくれるっていうお客さんだけです」
――それは、以前は……。
小野「はい。以前はそんなお客さん、いませんでしたから(笑)」
――素晴らしい! ほかにも飲食店さんや、小売り店さんに好影響も?
高橋「そうですね、道の駅や、そのそばの飲食店さんから『来る人、増えたよ』なんていう声があるとは聞いていますね」
――現在は5施設が「おんせん県いいサウナ研究所」に名を連ねていらっしゃいますが(ここまでで記した4施設と、「犬飼リバーパーク」)、「次なる一手」みたいなものはあるんですか?
高橋「5施設のほかにも市内にサウナに入れる施設があるんですが、それらで共通に使える『サウナンバーカード』というカードを発行します」
――それは、どういう使い方ができるんですか?
高橋「豊後大野市内で展開されているサウナのうち、3施設を、このカード1枚で格安に回れることができるカードですね。いわゆるパスポートみたいなものです。購入した日から1年間が有効期限になるんですが」
――いいですね。進化がまだまだ続きます。
高橋「基本的には大自然の中で入れるサウナが多いんですが、町の中でサウナを提供するホテルなどもできてきたので、従来の『自然×サウナ』とか『アウトドアサウナ』という文脈からは少し離れる施設もありますが」
――でも、町のサウナが増えるというのも、利用者にとっては選択肢が増えるということですよね。
高橋「はい。そう思います。いろんなサウナがあって、それぞれ好きに選んでいただくというスタンスです」
小野「たとえば“アウトドアサウナを楽しんでいただいたあとに、町の中で食事をしていただいたり、移動により便利なところに泊まっていただく”のように、相互にいい影響を与え合うのかな、という気はしていますね」
高橋「これも小野さんが言い出したんですが……“多様性”みたいなものを豊後大野では大事にしたいと思っていまして」
――多様性。
小野「サウナって、よく『サウナ室に入って、そのあと水風呂に入って、それから外気浴を愉しむ』と言われているじゃないですか。ネットとかで調べても、そういう風に“定義”みたくされていて」
――はい。
小野「“定義”によっては、それぞれ何分、とかまで。でも、それって人それぞれだと思うんですよね。水風呂が冷たい場合は苦手な人もいるだろうし、それなら水風呂は飛ばしてもいいだろうし……」
――そう思います。
小野「だから、豊後大野では、人それぞれ、おのおのの愉しみ方で、というのを提唱してるんです」
高橋「記者発表までしたんですが、まぁ、言葉遊びで『豊後大野の、豊後おのおの式』って名付けています。ちなみに小野さんが名付けたんですが(笑)」
――あはは。オノさん提唱の、ブンゴオオノのオノオノ式。いいですね。ゆるさがなんとも(笑)。
小野「そう言っていただけると(笑)」
高橋「あとは、施設それぞれが、それこそオノオノ、自分たちのやりたいことをやって、お客さんにサウナの愉しさ、気持ちよさを提供したいと進化はしていますね。たとえば『ロッジきよかわさん』も……」
江副「うち(ロッジきよかわの「JOKI SAUNA」)だったら、熱波師がいる、とかですかね」
――常に良いサウナを求めていく。
高橋「そうですね。うち(REBUILD SAUNA)は、どこよりも山の奥なので、雄大な大自然=めちゃくちゃうまい空気と外気浴を、というところに徹底するという。本当に自然のサウナは、毎日、天候やさまざまな条件が異なるので、その中で、それを味わいつつ、いかに快適に過ごしていただけるかに心を砕く感じですね」
青松「『稲積水中鍾乳洞』も、いろいろなアップデートはその都度行っていますが、今思っているのは、遠くから来ていただける方はもちろんなんですが、豊後大野の人にも、もっとサウナの素晴らしさを知っていただきたいということですね」
小野「町の人も含めて、すべての人がサウナを好きになるきっかけに、我々がなれたらいいなと」
――たしかに。高橋さんがおっしゃるように、サウナ……とくに自然のサウナは「一期一会」なところはありますし、他のお3方がおっしゃるように、施設さんごとにさまざまな違いも愉しみ方もある。そこをくみながら、いかにいい状況を整えるかと考えていただけるのはありがたいです。
高橋「はい。頑張ります(笑)。あとは……フィンランドの都市と姉妹友好都市の協定を結びたいと考えています。これは、単に『サウナの町』つながりということだけじゃなくて、あの……フィンランドって教育や福祉が町や暮らしに浸透しているんですね。そのマインドみたいなものも含めて、豊後大野もそういう町になれたらいいなと思ってるんです」
――素晴らしいですね! 気持ち良いサウナで、いろんな人に来てもらって。結果として、町も潤って元気になって……その利益で福祉や経済も充実する。まさに理想的というか。
高橋「まぁ、そうなってくれたらな、と思っています……という段階ではあるんですが(笑)。まだまだこれからです!」
――最初にきっかけとなったイベントも、「サウナ万博」という九州、いや全国有数のアウトドアサウナイベントとして回を重ねています。
江副「これまでに3回。すこしずつ規模も大きくなってきました」
高橋「今年も秋に、2日間の日程で予定していますので、ぜひそのイベントも含めて、皆さんに豊後大野でサウナをたっぷり味わっていただければと思っています」
――いいですね。本当に皆さんに、各施設を回っていただきたいと私たちも思っています。それぞれ唯一無二の体験ができますからね。「サウナめし」も本当に美味しいですしね。
高橋「はい。僕はいろんなサウナめしを、その方のお好みに合わせておススメしていますが、『大衆食堂 駅前大五郎』の『大五郎定食』はいいですよ。普通のメンチカツなんですが、ちょっと昔懐かしいデミグラスソースがかかっていて、絶品なんですよ」
――それ、一番うまいやつですね。
江副「僕は、『カフェ パラム』の石焼きですかね」
青松「いいですよね。『ロウリュカレー』といって、石焼きの器に入ったライスにカレーをかけるんです」
――あぁ~、「ジュワーッ」って、カレーがロウリュみたいに音をたてるんですね?
江副「そうですそうです」
青松「これも絶品なので。外さないです」
小野「僕は……僕もどのサウナめしも好きなんですが、あえて挙げるとするなら『くんぷう』さんっていう蕎麦屋さんの『牛肉辛麺』ですね。サイコーです」
――うわっ、どれもヤバイですね。今すぐに、また豊後大野を再訪したくなってきました。サウナ好きを代表して言わせていただきますが……ぜひ今後も、いろいろなチャレンジをよろしくお願いします! チャンスを逃さずお邪魔したいと思いますので!!
REBUILD SAUNA
■住所:大分県豊後大野市緒方町尾平鉱山57
■営業時間:後1:00〜9:00
■定休日:月、火
※詳細は公式HPからご確認ください
※REBUILD SAUNA(LAMP豊後大野)支配人・高橋ケンさんへのインタビューはこちらから!
稲積水中鍾乳洞
■住所:大分県豊後大野市三重町中津留300
■営業時間:前9:00〜11:30、後12:15〜2:15、後3:00〜5:00
詳細は公式HPからご確認ください
ロッジきよかわ-JOKI SAUNA-
■住所:大分県豊後大野市清川町宇田枝158
■営業時間:前8:00〜後8:00
詳細は公式HPからご確認ください
カフェ パラム-TuuliTuuli-
■住所:大分県豊後大野市清川町砂田三玉1699-2
■営業時間:前11:00〜後5 :00
■定休日:水曜日
詳細は【公式Instagram/@cafeparam】 からご確認ください