京都銭湯特集/希少鉱石、岩盤浴、軽食…魅力過多な五香湯②

最新号SAUNA BROS.vol.7の「京都銭湯サウナ特集」で紹介している「五香湯」をクローズアップ。今回は「五香湯」さんの充実した施設と、店主である松林さんについて紹介していきます。

「五香湯」さんは2024年に90周年を迎える老舗銭湯ながら、新しいことを果敢に取り入れており「五香湯」さんにしかない魅力がたくさんあります。

私の勝手なイメージなんですが、もし銭湯のデータを数値化してカードにして戦ったら、「五香湯」さんは相当強いと思います。チート級(反則級にあまりにも能力や技術が高いこと)と言えるかもしれません……。というのも、「五香湯」さんには必殺の武器がたくさんあるんですよね! まずは、そんな魅力をご紹介していきます。

目次

希少鉱石「バドガシュタイン」が止まらない!

まずご紹介したいのが、「バドガシュタイン鉱石」についてです! バドガシュタイン鉱石とは低線量のラジウムを放出する世界トップクラスの鉱石で、ラジウムやラドンガス、そしてマイナスイオンや遠赤外線まで放出してくれるという、まぁ簡単にいうとミラクルストーンです。免疫力や自然治癒力も高めてくれ(ホルミシス効果という)、バドガシュタイン鉱石が産出するオーストリアには、世界中から多くの人が病気治療に訪れるほど、世界的に効能が認められているすごい石なんです。そんなバドガシュタイン鉱石、「五香湯」さんにめっちゃあります。

上の写真は、岩盤浴の風景。紹介が後になりましたが、まず「五香湯」さんは銭湯ながら「岩盤浴」があります(こちらは別料金)。銭湯に広い岩盤浴があるだけでも驚きなのですが、バドガシュタイン鉱石がこれだけの量、銭湯に置いてあるって、もはや異常事態なんです(時間のある方はネットで「バドガシュタイン」と検索をしてみると効果と希少さが分かると思います……)。とても希少で、こんなにたくさん置いてある施設めったにありません。少なくとも筆者は見たことがありません。

「ミスト岩盤浴なんですけど、ミストに使う水のタンクにも石(バドガシュタイン鉱石)が入ってて、その水使って蒸気出してます。ほんで部屋の中が真っ白になるんですよ」と松林さん。

この岩盤浴は基本的には予約制ですが、空いて入れば当日でも入れることもあるようです。サウナの前に岩盤浴を行うと血行が良くなりいつも以上に気持ちのいい汗をかくことができますよ!

岩盤浴エリアに敷きつめられたバドガシュタイン鉱石
岩盤浴室内に「隠れ猫」の遊び心も

「五香湯」さんのバドガシュタインは、岩盤浴だけにあらずなんです。バドガシュタイン……露天風呂にもたくさんあります! 

手前の石も向こう側の石も、お湯の中の石は全部バドガシュタイン鉱石

距離を取って座れる感覚で湯船に置かれたバドガシュタイン鉱石。常連の皆さんは当然効能を知っており、露天風呂で湯治している姿を見かけます。露天スペースで外気浴をしながら、バドガシュタイン鉱石の上に座る年配の方を見ていると、有名な湯治場に来たかのような感覚になります。もちろん、外気浴のあとにバドガシュタイン露天風呂に入るのも最高です。

露天風呂以外に1階浴場でも入れます

しかし、これだけのバドガシュタインと、前回ご紹介した「1室で2つのサウナが楽しめるサウナ室」利用込みで490円って、ちょっと信じられません(前回の記事はこちらから)。

飲食エリアでサウナあがりの1杯も!

「五香湯」さんではサウナあがりの一杯をゆっくり楽しむことができます。入り口の暖簾をくぐり中へ入ると、まず奥に飲食スペースがあることに気づきます。軽食も食べられ、もちろんお酒も飲むことができるので、サウナのあとに喉を潤す1杯! なんてことも叶えられてしまうのです。家族や友人と訪れた際の待ち合わせ場所としても有難いです。

エントランス風景 2023年11月初旬取材当時の内観
店の奥にテーブル席とカウンター席が用意されている

店主の松林さんが21歳の頃、「五香湯」で働くようになってから、お父様である2代目が体調を崩されるまでのおよそ10年以上、こちらの厨房を担当していたそうです。

「昔はいろいろとメニューもあったんですよ。うどんなんかは出汁もイチから取って作って、おあげも炊いて〜って手間かけてね。支店出しぃやってよう周りに言われっとった(笑)。今はこっち(風呂場)が忙しくなってでけへんくなったけどね」

お話を聞いていると、かなり凝って料理を作り、味も相当評判だったようです。お店を出せと言われる程のクオリティーはかなり気になりますが、飲食スペースの稼働にはそれだけ人件費もかかりますし、物価高騰で続けられなくなっている施設も少なくありません。銭湯が次々と廃業している昨今、軽食が食べられるだけでも本当にありがたいことです。 関西圏ではよく見かける「ひやしあめ」(溶いた水飴に生姜を加えて冷やしたドリンク)もあり、そのひやしあめ1つあるだけでも、東京からの取材陣は「聞いたことない!」とはしゃぎ、ありがたくいただいたのでした。

ひやしあめ

お湯はすべて薪で沸かす! 手間と真心がいっぱい

「五香湯」さんの魅力はまだまだ続きます。店内やホームページでも全く宣伝していないんですが、実は「五香湯」さん、お湯を薪で沸かしているんです! 冒頭で紹介したチート級(反則級)の魅力の意味が伝わってきましたでしょうか?

家を解体した時の廃材などを使っているため、釘がついたままの木材

“お湯を全て薪で沸かしている”と言葉でいうのは簡単ですが、「五香湯」さんは湯舟が多い。1階部分が男女全て湯船なのに加えて、2階の露天風呂も。それだけ温めるお湯の量も多く沸かすにはかなり大変なはずです。

1階に6種類の風呂があり、男女合わせ12以上の浴槽がある

そんな大変な作業を、大きく宣伝をするわけでもなく、行っている薪沸かしの作業。松林さんに詳しく伺ってみました。

――薪の量ってどれくらい使うんでしょうか?
「今はちょっと増えてきて(季節が寒くなってきて)一週間で軽トラ3台分やね。2週間でだいたい7台分」
――かなり大変そうですよね。
「軽トラがダンプ(荷台前方が持ち上がり、積荷を滑り落とす)出来るやつで来てくれるんやけど、バーンと降ろして帰らはるでしょ? その薪を並べて整理するだけで夏は汗ボタボタやね」
――うわ大変そう! 木のカットも自分でするんでしょうか?
「カットは業者がしてくれるんよ。なんぼチェーンソーで切れる言うても、ちょっと大変やわ。まぁその分高いんやけどね(苦笑い)」
――それを全部お1人で?
「うん。朝6時ぐらいからね。一通り組み上げたらもうぐったりやね(笑)」

1人で行っているボイラー全般作業
釜を開いた途端、猛烈な熱気が押し寄せた

お話を伺いながら薪の山を見上げると、筆者の身長(175cm)よりずっと高くまで積み上がり、仮に自分がやるとしたら……と考えただけでめまいがしました。夏場は多分(間違いなく)倒れます。

この作業をお1人でずっと続けられているなんて……ちょっと信じられないくらいすごいです。だって一週間だけで軽トラ3台分以上ですよ!? 松林さんの「五香湯」の店主として、プロとしての姿勢に尊敬の念を抱きました。

90周年、100周年を見据えて

「五香湯」さんのバドガシュタインの導入や、他に類のない2種類のサウナ室を作られたのは、松林さんの先代であるお父様とのことで、その先代が今の「五香湯」さんの基盤の多くを作り上げました。

そんな先代が体調を崩され、松林さんが表に立つようになったのは比較的最近のことですが、それからの数年だけでも変化があり、さまざまなことに取り組まれています。

グッズの販売や改修工事。集客の面で大きく変わったのは、ドラマの出演もそうですが、コロナ後に「五香湯」さんの向かいのホテルと提携し、風呂付きプランの販売を始め、多くの外国のお客さんが来るようになったことです。

「ホテルへの問い合わせ電話の半分がお風呂についてのことらしいわ。向かいのホテルからだけで月200人位来るしね。アジアも欧米も国籍関係なく、たくさんのお客さんに来てもらって、サウナやお風呂を楽しんでもらっています」

明るく話す松林さんを見て、店を起こした初代、そして今の「五香湯」さんを作った2代目の、新しいことにチャレンジしていく「五香湯」イズムが受け継がれ、これからも「五香湯」さんは変化していくのだろうと感じました。

今後のことを伺うと、「90年はすぐだから分からんけど、100年の時は『なんかやれ』て周りにも言われてるんで、やろかな思ってます」とちょっと面倒そうに笑って返す松林さん。

めっちゃ楽しみにしてますからね! きっとその時は京都サウナの歴史としても、ひとつの節目となる大事な日となることでしょう。その日が来るのを心から楽しみに待たさせていただきます。

現在、発売中のSAUNA BROS. vol.7では、美しい写真とともに「五香湯」の魅力を特集しています。是非そちらも併せてご覧ください。

五香湯
■住所:京都府京都市下京区黒門通り五条上ル柿本町590-12
■営業日:平日=後2:30~深0:30 日曜=前7:00~深0:00 祝日=前11:00~深0:00
■定休日:毎週月曜、第3火曜
■料金:490円(サウナ込み)

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