神戸クアハウスの軌跡と魅力②水風呂、サウナの秘話と気になる今後

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毎分50リットルの水が降り注ぐ「クアハウスの滝」は、こうして生まれた

――あの男性浴室の水風呂の、水が勢いよく降り注ぐ「クアハウスの滝」とでも呼びたくなる仕掛けも本当に気持ち良いです。あれも昔から……創業当時からのものなんでしょうか。

「滝というには、少々、小ぶりですけれど(笑)。実はあれは、今から7〜8年前くらいに設置したものなんです。創業当時はありませんでした。こんなことを言うのはお恥ずかしいんですが、実は……あの打たせ水の仕掛けには、ちょっとした『苦肉の策』みたいな経緯もあるんです」

――と、言いますと? なにがあったんでしょう?

「創業したときは、実はチラーを入れていて、循環させながら水温も管理していたんです。だから現在の水温(※年間を通じて、18〜20℃ほど)よりも、もう少し低い水温ではあったんです。

でも、そのチラーが壊れてしまったんですね。2010年代の半ばくらいだったと思うんですが。

ちょうどその頃は、世の中全体の景気も少しずつ悪くなっていて、創業時代から増えていたお客さまが、一転、少しずつ減り始めていたんです。ご存じかもしれませんが、チラーは私どもからすればかなり高額な機械なんですが、完全に壊れてしまって、どうにも直せない、と」

――地下水を使っていらっしゃると、自然の成分がそのままなので(上水道を使っているところより)チラーに不調をきたすケースだったり、配管のトラブルも比較的多くなってしまいがちだと聞いたことがあります。

「そうなんですよね。それで『どうしよう』ということになったんですが、ある方からずっと『ここの水質なら、水温が1〜2℃上がってしまったとしても、チラーで循環させるよりも、むしろ完全な掛け流しのほうが気持ち良いかもしれません』とアドバイスをいただいていまして。

そして『その上で、天井から降り注ぐようにすれば、見た目の満足度も上がるし、やわらかさも増すと思う。よりお客さんに喜んでもらえるかもしれない』と」

――うわぁ〜。素晴らしい!

水風呂とサウナ室のパワーアップ。仕掛け人は“あの人”だった!?

――ちなみに、もし差し支えなければ、その方ってどんな人だったんでしょう?

「ご存じかしら、太田さんという方です。温浴のコンサルタントをされている」

――太田広さん? 「サウナ王」ですね(笑)! 

「はい。そのご助言を思い出しまして、いつもお世話になっている地元の方にお願いして造っていただきました。太田さんからは『何本あってもいい。たくさんあると、もっと良くなる』と言われていたので、とりあえず4本のパイプを用意したんですが、今は2本を稼働させています」

――サウナ王、さすがですね……。

「太田さん……サウナ王さんには、ほかにもいろいろアドバイスをいただきました。『ここの水は天下一品ですし、水風呂の存在も素晴らしい。でも、生かし切れていない』って。太田さんがおっしゃるには『サウナのグレードを上げると、もっともっと集客できるはずですよ』って」

――同じ相槌を繰り返して恐縮ですが……さすがサウナ王(笑)。

「もうね、ずっとずっと……ずう〜っと、その言葉をおっしゃっていて(笑)。『サウナ室が追いついていないんだ』って。

創業からサウナ室や水風呂はありましたが、たしかに、それまではどちらかといえば、温泉をメインにした温浴施設というスタンスでしたからね。

ただ、先ほども申し上げましたが、’10年代に入って以降は、お客様の年齢層が上がると同時に、入館数も少しずつ減り始めてはいて。『このままではいけない』と、太田さんにも熱いアドバイス(笑)をいただいていたこともあって、サウナ室をパワーアップすることにしたんです」

“コロナ禍”という危機。乗り越えられたのは、サウナのおかげ

――先ほどもうかがいましたが(※前回記事参照)、サウナ室は男性も女性も創業時から今と同様の、あの水風呂まで見えるガラス張りの構造ですよね。

「はい。ただ、男湯のサウナ室には寝転べるエリアを2011年に増設したんですが。現在は皆さん……特に若い世代の方は熱い温度のサウナ室がお好きですが、当時はまだ、もう少し上の世代のお客様がほとんどだったこともあって、緩やかな温度でゆったりと休んでいただけるサウナ室もいいのではないか、って」

――いや、“先見の明”だと思います。もちろん熱いサウナ室も人気はありますが、あの熱いサウナ室で、ちょっと奥の角を入って寝転びエリアに足を踏み入れたときの、あのまた違う心地よさ。好きな人にはたまりません。

「そうなんですよね。サウナもいろんな好みの方がいらっしゃって(笑)。実は私自身はサウナにあまり入らないものですから、お客様をはじめ、いろいろな方にお話を聞いたりしていました。

その後、サウナブームもあって、若い世代の方も以前より少しずつ増えるようになりまして。その頃になると、もっと湿度がある熱さのサウナが気持ちいいんだとおっしゃられる方も……」

――それで、男性サウナ室のストーブを。

「はい、2021年に遠赤外線のヒーターから、オートロウリュのストーブに入れ替えたんです。と言っても、これも実はお客様のご協力もあってのことなんですが」

――クラウドファンディングを実施されましたよね。

「そうなんです。見積もりをとって、いざと考えていた時に、コロナ禍になってしまって……。行政機関のご指導にしたがって、休業や短縮営業の日々が続き、お客様の足も遠のかれてしまって。こういう言い方をするのは恥ずかしいですが、どちらかというと『もうジリ貧』というところまで追い込まれてしまったというか。それで、クラウドファンディングに挑戦したんですよね。そうしたら、本当に全国のたくさんの方から、最終的には目標額の1.5倍ほどの支援をいただくことができました」

――実は私たちの編集部の者も、本当に僅かですが応援させていただきました。回数券とTシャツが欲しかったというのもあるんですが(笑)。

「そうなんですか? ありがとうございます(笑)。でも、本当に皆さんのお力もあってあのストーブを入れ替えてから、びっくりするほどサウナ利用のお客様が見えられるようになって……『息を吹き返した』と言っても過言ではないほどに。

年齢層も本当に60代、70代、80代の方がメインだったのが、20代、30代の方が一気に増えられまして。サウナブームとともに活気がまた戻りました」

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