大人気の薪サウナも復活!湯屋FUROBAKKA②快適さの秘密

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薪をくべるサウナキーパーの“ひと手間”も、FUROBAKKAのコンテンツの一つ

――水越さんが思う「薪ストーブの魅力」をお聞きしてもいいですか?

「そうですね……やっぱり“癒し”じゃないかと思います。先ほども言いましたが、薪ストーブの熱って、本当にやわらかいですし。あたたかさだけでなく、炎の揺らめきなども、見ているうちに静かに心を落ち着かせてくれますし。

耳をすませば、炎の燃える音や、薪がパチパチっていう音も聴こえて、やさしい気持ちになれますしね。心身ともに癒してくれる、そんな力があると思うんです」

――ただ、やはり先ほどおっしゃったように、良好なセッティングをキープするためには、さまざまなケアや作業が必要になりますよね。

「そうですね。薪のくべる量やタイミングで温度は大きく変わってしまうので、サウナキーパーのスタッフが常に様子を見て回っています。

そういったスタッフの“ひと手間”も毎日のルーティーンになりますし、薪の調達もこれだけの数(※「FUROBAKKA」には薪ストーブは13基あります)になると、たしかに容易じゃないのは事実です」

――どのサウナ室も、それぞれサウナキーパーさんが近くにスタンバイ。というか……10数分おきには顔を見せてくれます。

「そうですね。スイッチを入れれば、それでOKというわけにはいきませんから。湿度とのバランスも含めて、炎の状態の確認や調整はやっぱりスタッフの“人力”。もちろん日によって外気温は異なるし、お客さんの表情なども見たり、コミュニケーションも大切なので経験値も重要です。大変と言えば大変ですね。

ただ、それらの作業こそが『FUROBAKKA』の大事なパーツの一つなんです。薪ストーブにはさまざまな手間も必要ですけど、本当にそれだけの力があると思うんですよ。とにかくお客さんに喜んでもらいたいから、それをやるだけで。

私を含めたスタッフも、スタッフとのやり取りなどもすべて、この施設のコンテンツの一つとして楽しんでいただけたらなと思っています」 ――おっしゃること、すごく分かります。「少し温度下がってきたなぁ」と思ったタイミングで、絶妙にサウナの中に入って来られるスタッフさん。薪を足してもらったりして……めちゃくちゃ心の中でニッコリしてます(笑)」

どんな施設にも負けない(!?) 特別な体験へのあくなきこだわり

――サウナ室の構造などにも、さまざまな特徴が。とくに、大浴場にある「やまごやサウナ」「あなぐらサウナ」では、それぞれ異なる趣きの気持ちよさとアイデアを感じてます。

「せっかく(2棟を)つくるなら、違うタイプのサウナ棟にしたいなと思ったんですよね。まず『やまごやサウナ』は、ゆっくりとアツさや心地よさを感じてもらえるサウナにしたくて。窓を設けて、昼間は外光が入る明るい空間にしたので……炎のゆらめきやセルフロウリュによって立ち上る蒸気を、耳でも目でも愉しんでいただけます。

また、蒸気が静かにじわじわと降りてくる気持ちよさを体感してもらえるよう、天井をあえて高くしたりもしました。

室内は85〜90℃ほどの、熱すぎないけれどしっかり汗の出る温度を、常時キープできたらと思っています」

――やわらかい熱と蒸気に、まさに身体全体をやさしく包んでもらえるサウナ室ですよね。長い時間、座っていられますし、ずっと居続けたくなるほど。一方の「あなぐらサウナ」は、より強めのアツさと“没入感”を体感できる空間です。

「温度じたいは75〜80℃くらいで、『やまごや〜』よりも低いんですが、湿度を高めにすることで、トータルでの“アツさ”をより強く感じてもらえるサウナ室にしたくて。壁も天井もコンクリートにして、湿度がより保たれるように。また、天井の高さも低くしています。

ストーブの下に水を流したり、10分ごとのオートロウリュも350ミリの水が一気にサウナストーブにかかるようにしたり。室内の暗さも含めて、聴覚や視覚、嗅覚……やはり五感すべてで愉しんでもらえるように、と」

――たしかに! 「あなぐら〜」のオートロウリュ装置は、パワフルさもさることながら、“鹿おどし”スタイルのあの見た目も本当にインパクト絶大です。

「あの仕掛けも、こだわったポイントの一つですね。ロウリュ用の水を貯めた筒が傾く時の角度などは、調整が本当に大変でした。水量が多過ぎたり少な過ぎると、いい感じに石の上にヒットしないので、数ミリリットル単位で試したり、傾く勢いが速くても遅くてもダメなんですよね(笑)。かなり苦労して、ようやく現在のカタチで落ち着きました」

――そんなに細かな微調整も……こだわり、愛情が深いです!

「僕たちとしては、ここで感じていただくものが、特別な体験だったり記憶になればいいな、という思いが強くあるんですよね。

北陸だけではないと思いますが、やはり地方のサウナ施設って、東京や大阪などの施設で体験できるものが、どうしても少し遅れたタイミングで到来するんです。

でも、そんなタイムラグがなく、北陸に居ながらにして東京や大阪と同じものが体験できたり、なんなら東京にもまだないユニークな体験やスペシャルなものを味わえたら最高じゃないですか。

地元の人が誇りに思えたり、逆に東京や大阪からきた人が面白がってくれる……そんなものが出来たらいいなっていう思いが強くありました。実現できているかどうかは分かりませんが(笑)」

厳しくも素晴らしい自然と、あたたかな薪ストーブ。快適さの追求の日々

――いやいや。「やまごや〜」も「あなぐら〜」も。そして黒部の名水の水風呂も、本当に「FUROBAKKA」でしか味わえない素晴らしさで、唯一無二の存在だと思います。
あっ、そう言えば、スタッフの皆さんは……いくつもある水風呂も、水温計などをこまめに見て回っていらっしゃいますよね。

「そうですね。特に冬場に入ってからは、水温計を見ながら、バルブの開閉を細かく調整したりもしていますね。

『FUROBAKKA』では、地下130メートルから汲み上げた水を使っているので(そこまでの深さがあると)、年間を通じて、水温じたいはほぼ変わらずに15〜16℃くらいなんですね。まぁ、配管を通ってくる間に、プラスマイナス1〜2℃くらいは上下しますけど。

でも、その水が配管から浴槽に入って外気に触れると……冬はその日の気温次第でたちまち水温が下がるんです。なので、給水バルブを大きく開き、オーバーフローの量を増やす=汲み上げたばかりの水をたっぷり補給し続けると、冷たくなり過ぎるのを抑えられるんです」

――自然の中の施設ならではですね。そういった、ネイチャー系サウナならではの工夫や知られざるご苦労は他にもたくさんありそうですね。

「そうですね。一応、さまざまなデータに基づいて細かなところまで設計していただいたんですが、それでも、自然環境によるいろんな“想定外”に直面してはいますね。

たとえば、『FUROBAKKA』は富山湾に面したエリアにあるんですが、冬になると北西の方角、朝鮮半島方面から、ものすごく強い風が吹いてくる日があるんです。

その事象についても、かなり綿密に計算をしていたんですが……数字のデータや計算以上に、風の影響を受ける日があって。煙突から風が逆流してしまうかもしれないな、と。自然、やっぱりスゴいです(笑)。12月に、急遽、煙突を長くする改修工事を行いました」

――はい。

「大浴場の『やまごやサウナ』も、フレッシュなエアを取り込みやすくする意味もあって、壁をあえて1枚にしていたんです。もちろん、十分な断熱材を入れた上でですけど。でも本格的な冬に入る前にいろいろ確認・検討したところ、『やっぱりこれでは、保たないかもしれない……』と、壁を二重にしました。換気機能に支障のないよう、念のためにさらにもう1セット、断熱材と新たな壁材でさらにカバーしたんです。

でも、早めにその断熱性能を高める工事をしておいて良かったです。実際に厳冬期を迎えたら、サウナ内の温度の維持が想定以上に大変だったと思います。以前のままだったら、おそらく目指す室温のキープは……到底、不可能だったと思います」

――オープン前から。そして今も続けられる、快適さのための試行錯誤とアップデート。それにより、地元の方はもちろんのこと、全国からの注目度や支持も上昇してきた「FUROBAKKA」ですが、2024年の年始早々、あの大きな出来事がーー。
(次ページへ続きます)


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