“お風呂屋さん”の思いは……きっと同じだと思いますよ
――浴後の広いロビーや休憩スペースも、同じ発想ですか?
「そうですね。お風呂やサウナから出たあと、のんびり出来る場所があるっていいじゃないか、って。小上がりの掘りごたつ式になったスペースだったり、ソファをいくつか置いたりして、あのロビーも、気兼ねなくリラックスして過ごしてもらえる場所として兄にアイデアを出してもらって、設計してもらいました」
――壁の飾り棚も雰囲気が良くて……。リビングみたいに、ほどよくくつろげる空間です。
「気持ち良くなって、そのまま寝ちゃっている人も結構いますよ。実際に閉店作業をしようと、上(の階)に上がって行ったら、若いお兄ちゃんが7〜8人、ズラ〜っと並んで寝入っちゃってて、びっくりしたこともあったな。
近くに住んでる子たちだから良かったけど、夜、寝過ごしちゃったら大変だからね。それ以来、気をつけなくちゃ、って(笑)」
――(笑)。分かる気がするというか、その光景、目に浮かびます。常連さん、地元のお客さんたちにとっては“我が家”的な感覚なんですよ、きっと。
「友人同士なんかで来てくれた人が、お風呂から上がったあとも少しおしゃべりしたり、お互い一人で来たけどココで顔を合わせた知り合い同士が、そのまましばらく話をしたり。そういうふうに気のおけない感じで使ってもらえているのは嬉しいですよね。
あとは、よく来てくれる地元の子が『部活のミーティングで使わせてほしい』なんて言ってきたこともあリましたね」
――へぇ〜。どうされたんですか?
「まぁ、喜んでOKしましたけど(笑)。お風呂やお客さんにぜんぜん関係ない使い方はお断りというか、ただのイベントスペースみたいにはするつもりはないんですけど、お客さんというか、地元の人たちにとってお役に立てるなら……ね(笑)」
――ここ数年、「サウナブーム」と言われる中で、サウナ室をはじめ、外気浴ができるスペースや浴後の休憩エリアを設ける銭湯も増えてきました。岡田湯さんは、その先駆けだったような気もします。
「そうかもしれないですね、ウチは現在の形にしてからもう10年以上経ってますから。でも、たまたま早かっただけで、お風呂屋さんが考えることって、やっぱりどこも同じだと思いますよ。
要は、“心も体も気持ち良くなってもらいたい”。そして“また気持ち良くなりに来てほしい”っていうこと。それが街の銭湯の良さだと思うし、それを提供し続けたいから、リニューアルや改装もしたりするんですよね。
まぁ、以前からのお客さんだけだとどうしても先細りしてしまうから、新しいお客さんだったり、若い世代の人にももっと銭湯に来てほしい。そう考えると、サウナ室や休憩スペースを充実させておいて良かったな、正解だったなって思います。
でも、ここまでサウナが世の中で人気になるとは正直思っていなかったからね(笑)。もし今のタイミングで改装するなら、もっとデカいサウナ室……10何人が入れるサウナ室をつくったかもしれないですね(笑)」
ユーモアたっぷりにそう話してくれた博樹さん。
そのコメントの端々からも、なんだかほっこりしてしまいます。
街の銭湯サウナの良さを、今回の取材でもあらためて感じさせてもらった……実にそんな気がしています。
【岡田湯】
■住所:東京都足立区関原3-43-2
■営業時間:後2:00~11:45 、定休=毎週月曜
■料金:入浴料=520円(大人)+サウナ料金200円
撮影/長谷繁郎