【GO!銭湯サウナ #11】シンプルな矜恃〜東京・岡田湯(2)

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ここでしか味わえない気持ちよさ、リラクゼーションを提供したい

――本日はありがとうございます。夜に訪れる岡田湯も好きなんですが、昼の陽光が射す時間帯はやっぱり気持ちいいですね。

「そうですね。この現在の店舗に改装したときに、2フロア分を吹き抜けにして天井の高いつくりにしたのが良かったんじゃないかと思います。浴室ってどうしても湯気がこもってしまうというのも理由の一つですがやっぱり天井が高いと開放感がぜんぜん違いますからね」(岡田博樹さん。以下同)

――こちらは、創業はかなり古いとうかがっていますが。

「戦前です。東京の銭湯は北陸の出身者が創業したところが多いんですが、ウチもそう。昭和初期に私の祖父が……石川県出身なんですが、次男だったので家を継ぐのではなく、弟とともに上京して。

一生懸命働いて、その後、独立して。ここに『岡田湯』を作ったのが昭和18年(1943)かな。そして弟もまた、近くに『第二岡田湯』っていう銭湯を開いたんですね。そちらは後になって閉業しましたが、どちらの銭湯もかなり繁盛したそうです」

――ロビーというか、浴後の休憩スペースに、宮造りの銭湯のモノクロの写真が飾ってありますよね。あれが当時の岡田湯さんでしょうか。

「そうですね。いわゆる昔ながらの瓦屋根に煙突のある銭湯でした。その後、父が後を継いだんですが、その建物を今のビル型にフル改装したのは、父が体を悪くして僕と兄が経営を引き継いだ後の、平成23年(2011)のことです」

――今から12〜13年くらい前ですね。

「はい。その数年前に、駅前を含め街全体が再整備されることになって、ウチの前の道路が広く拡張されることになったんです。2009年だったかな。それで店舗が立ち退きというか、取り壊さざるを得なくなって……。親は『もう閉めてしまってもいいよ。しょうがない』と言っていたし、兄貴と2人で相談もしたんだけど、僕たちには閉業するっていう選択肢はなかったんです」

――壊すことになっても、銭湯をまた建て直そう、と?

「そうです。僕ら兄弟が子供の頃を含めて、本当に街の皆さんには、よく銭湯に来てもらいましたから。それによって僕らも成長できた。だからこの街で家業として引き続き銭湯をやっていくのは当然だろう、ってね」

――とはいえ、その頃(=平成20年代)はもう、どの家にもお風呂はある時代になっていましたよね?

「そうですね。だから、決して昔のようには大繁盛はしないとは分かっていたけど……でも、赤字にさえならなければやっていこうよ、っていう気持ちでした」

――使命感、みたいな?

「いや、そこまでのものではないですけどね。ただ、今おっしゃったように、もうどの家にもお風呂はあるわけなので、『生活必需品=ただ体を洗ったり入浴するだけの銭湯ではなくて、それ以上の場所にしよう』って。それで、箱根の温泉旅館なども手掛けた方に設計・デザインをお願いすることにしました。

基本的なアイデアというかコンセプトは兄が考えたんです。『ゆったりとくつろげて、ほかにはない銭湯に』っていう思いから、家庭では味わえない気持ち良さというか“リラクゼーション”を提供しよう、みたいに。

そこから具体的にいろいろと詰めていきました。ドライのサウナ室を新設したり、水質や浴槽の種類にこだわったり。男湯には外気浴ができるように露天のガーデンも作ったり……」

――今いろいろ挙げられた設備の中でも、まずはお水やお湯の柔らかさを強く感じます。

「風呂屋の根本ですからね。もともと肌触りのやわらかい地下水を、その後、いろいろ試行錯誤してさらに軟水にすることにもしました。浴室の床が少し滑るというか、ヌルッとして感じるなんていう人もいたけど(笑)」

――あれは軟水ならではの特徴でもありますよね。浴室のグリーン=植物なども、その思いから配置されたんですか?

「そうですね。やっぱり緑というか自然を感じられるものがあればくつろいだ気持ちになってもらえるのでは、っていうことで、キャットウォークや浴室全体に置くことにしました」

――グリーンって、夏は目に入ると涼しげに感じますし、冬は冬で、どこか豊かな気持ちになるというか。不思議に安らぎます。

「でもね、始めてはみたけど、あれもなかなか大変で(笑)。浴室の環境……高い湿度や温度に強いものを植物の専門店さんに相談して選んでもらってはいるけど、突然具合が悪くなって枯れてきちゃったりすることもあって。
月に2回はその専門業者さんに来てもらっている上で、僕も週に1〜2回、水をやったり手入れをしますし、葉も生え替わって落ちたりするので、それもケアしなきゃいけなくて」

――生き物ですもんね。でもフェイクではなく、やっぱりあの生の緑だからこそ、なんかイイんですよ。

「そう言ってくれる人がほかにもいるから……なんとか頑張れているんですけどね(笑)」

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