【GO!銭湯サウナ #11】不思議な安らぎ 東京・岡田湯〈1〉

毎年、3月7日は「サウナの日」です。そして、10月10日は「銭湯の日」でしたね。

ちなみに10月10日は「お片付けの日」でもあるそうです。なんでも、10を「と」と読んで、「と(10)と(10)のう」と語呂を掛けているんだそうで。なるほど〜。でも、「ととのう」というワードとも掛けられて「1010」(せんとう)なのでもあれば、もはや「銭湯サウナの日」でもあると言ってもいいんじゃないですか!?

さて、そんなどうでもいいことをぼんやり考えながら日々都内や近県の銭湯サウナに出向いているSAUNA BROS.編集部。いやぁ、毎日ワクワクしっぱなしです。それぞれの施設によって、さまざまな個性やサービスが……まさに“百花繚乱”ならぬ“百サ繚乱”なのですから!

そうした魅力を雑誌「SAUNA BROS.」、そしてこのサイト「SAUNA BROS.WEB」の両方で横断的に掲載している特集シリーズ「GO!_1010-37(GO! 銭湯サウナ)」。今月、2回に分けてご紹介させていただく、東京は足立区の西新井にある「岡田湯」は、なんとも不思議な安らぎとくつろぎ、そしてあらためて銭湯サウナの良さを体感してしまう施設です。

では、おじゃましてみましょう!!

目次

一歩中に入ると面喰らってしまうほど天井も高く開けた、開放感のある異空間

東武スカイツリーライン(伊勢崎線)の西新井駅から歩くこと約10分ちょっと。4階建てのビルの上部に大きな赤い「ゆ」の文字が見えてきます。

ビル型の銭湯って、入ってみて外観からは思いもよらないその空間の広さに「えっ!? スゴい」って驚かされること、ありませんか? 実は、この岡田湯もまさにそんな銭湯だったりします。

「IN」の文字をくぐって建物の中へと進み、エレベーター、もしくは階段で2階へ。少しこじんまりとしたエントランスを一歩入ると……。

目の前には、銭湯好きにはよく見慣れた松竹錠(※抜き差しする木札がカギになっているアレです)の下足箱が。使い込まれ、ところどころ薄くなった木札を見ると、この岡田湯も長い間、人々に愛され続けてきたお風呂屋さんなのだということがあらためてわかります。

ですが、履き物を入れてフロントの方に体を向けた瞬間、ちょっと不思議な感覚になります。初めて来訪した人は、ちょっと戸惑うかもしれません。

けっして横幅は広くない通路。ですが、その先の天井が高く取られた吹き抜けの空間が視界に飛び込んできます。思わず「ほぉ〜っ!?」という声が漏れそうになるくらい、外からは想像出来ない意外性。
訪れる時間によってはやわらかな自然光が明るく降り注ぎ、モンステラの揺れる葉も……実にいい感じ。

フロントのカウンターに対面する壁にも飾り棚がしつらえられ、小物や写真などが並んでいるさまは、ちょっと洒落た書斎やカフェのような造りなんです。

う〜ん、なんだか“ちょっと心地いい”違和感です。そして、この不思議なワクワク感とともに浴室へと進んでいくと、そこには、さらなる“異空間”が広がっています。

ほどよい味わいとボタニカルの癒し。不思議な居心地の良さがある浴室

脱衣所で支度をすませ、いざ浴室へ。目に入ってくるのは……。

先ほどフロントで感じた以上に、高さと奥行きを感じる空間と、何より目にやさしい、植物のグリーンです。

今回の取材・撮影は日中に行わせてもらったので、一面の壁に大きくとられた、すりガラスの窓から入る明るい日差しが写真のように浴室中に満ちあふれています。

こちらは男湯の写真。中央に鎮座するのは「ビカクシダ」――漢字では「麋角羊歯」と書くんですが、この「麋」とは大きなシカのこと。
シカの角のような緑の葉が光に向かって伸びる、いわゆるビザールプランツで、その珍奇で不思議なフォルムに惹きつけられて見上げているうちに、なんだか心が安らいできた気がします。
アルファ波なのか、マイナスイオンなのかとにかく心身リラックスモード♪

女湯にもポトスやフィカス、シェフレラなどに混じって、珍しい葉の植物もちらほら。目にも脳にもやさしいといわれる緑色ですが、同じ緑にも実にいろんな色があるんですね。

ちなみに、夜は絶妙な明るさ(暗さ)の照明が灯るので、昼間とはまた違う表情を見せてくれます。湯船に浸かったり、浴槽の横のイスに腰掛けながらこの垂れ下がるツルや葉を見上げると、ちょっと幻想的で……。やはり異界感たっぷり。

このグリーンが置かれているキャットウォークがピカピカの真新しいものじゃないのもなんだかイイんですよね。ほど良い味わいと年季が感じられるからか、ちょっとインダストリアルというかアンティークな趣きすら漂っていて。

この、(個人的な感覚ではありますが)よそ行きの作られた感じがしない、どこか“ユーズドな感じ”もまた、居心地の良さにつながっているのかもしれません。

実はこの浴室がつくられたのは2011年3月のこと(※)。それ以降の、お客さんたちに愛され続けた約12〜13年という時間によって、他ではあまり感じられない、ここだけの独特な空間、雰囲気が醸成されてきた――そんな気がします。

(※ 岡田湯の創業じたいは昭和初期。当初の店舗は立派な瓦屋根と煙突がそびえる宮造りの建物でしたが、西新井地区の再開発に伴う道路拡張工事の影響でこの年にビル型の店舗に建て替えられました。そういった歴史や詳細なエピソードは後日アップ予定の後編=(2)で記させていただきたいと思います)

“空間”……見た目の心地よさだけじゃない! 2種のサウナ室のアツさ……“機能”も絶妙!!

さて、心をほぐす「空間」の魅力に続いて、体のあちこちを気持ち良くしてくれる、装置=「機能」としての岡田湯の実力や今回ご紹介したいと思った理由とポイントについても、ここから触れたいと思います。

まずはその水やお湯のやわらかさ。銭湯やサウナへ行くと、皆さんまずは体や頭を洗うためにシャワーやカランの蛇口をひねると思いますが、この、最初に感じる水やお湯が……実にまろやか。

実は、岡田湯ではもともと地下水をくみ上げて使用しているのですが、それをさらに軟水にしているのです。

シャンプーやボディソープの泡立ちが良いうえに、なにより肌にあたる感覚がなめらかでやわらか。湯上り後もしばらくその“潤い”が肌に残っている気がするときってあるじゃないですか。あのタイプの水なんです。

続いてサウナ室ですが……これもまた個人的にめちゃくちゃ好みのタイプなんですよね。

男女ともにドライサウナ(有料)とスチームサウナ(無料=入浴料のみでも利用可)の2つのサウナ室があるのですが、まずはドライサウナの方から。

扉を開いた瞬間に、頭の中で「おぉぉ、いいなぁ……」と自分の心の声が聞こえます。

このサウナ室も2011年につくられたもの。2段のベンチや天井、壁に使われている木材の色が、実に味わい深いのです。

ストーブも銭湯などでよく見かける遠赤外線ガスヒーターですが、“昭和ストロング”のカラカラさとは全く無縁で、温度と湿度のバランス=いわゆるセッティングがなんとも絶妙!

ストーブの温度設定は男女とも同じく90℃台中盤〜後半とややマイルドにしているそうですが、湿度がしっかり保たれているから、入ってものの数分で、気持ちよく汗がコロコロと噴き出してきます。そのようにご店主・岡田博樹さんに伝えてみると「そうなんですよね。浴室内にあるんですけど、換気口の設け方、位置などもあって高湿気味なんです」とのこと。座面で伝わってくる空気の循環、対流の感じも良いので、おそらくその言葉通りなんでしょうね。

ほかにも、左右の壁や天井に使われている木の板が調湿効果があり、背面の壁が石張りでそこからの輻射熱もあるのかな、なんて素人ながらこのサウナ室の気持ちよさの秘密を推理&分析しています。

ともあれ、しっかり発汗はするのに熱過ぎないから、かなり長い時間、気持ち良く座っていられます。そのため気づけばいつも、足先から体の芯まで無理なくアッツアツにしてもらえちゃうのです! 

なお、こちらの遠赤外線ガスヒーターですが、本体の上に白いアロマ蒸気発生装置が付設されたタイプのオリンピア製のもの。

この装置、今は稼働させていないそうなのですが、ここまでリポートしたとおり、十二分なほどに室内は潤っています。う〜ん、やっぱり不思議な魅力を持つ銭湯サウナなんですよね、岡田湯は。

続いて、スチームサウナです。
サウナ好きの中には「ミストやスチームのサウナにはあまり入らない」という方も少なくないですよね。かくいう私も、どちらかと言えば、そっち側に近い感覚の持ち主なのですが……ここのスチームサウナは、食わず嫌いはしない方がいいです。

おススメする理由は、ここも「アツ過ぎないけれど、ほど良く熱い」から。
ご店主・博樹さんによると、このスチームサウナ室の温度設定は男湯、女湯ともに40℃台の後半。人の出入りにもよりますが、50℃をちょっと下回る温度を大体キープされているとのこと。

写真は男湯のスチームサウナ室。このときは撮影ということで、稼働させる前のタイミングでシャッターを切っていますが、営業中はこのイスがほんのぼんやり見える程度と、スチームの量も絶妙です。

こちらは洗い場から階段を上がった中空のロフト部分(3階、にあたるんでしょうね)にある女湯のスチームサウナ室です。壁のタイルもちょっと品があって、なんだかいいですねぇ。シャワーノズルのところに置いてある砂時計もかわいい!

2つずつある水風呂や浴槽。そして見上げる視界が実に広い、休憩スペースも最高!!

水風呂は、男湯、女湯ともになんと2つずつスタンバイ! まずは壺型のタイプが男女ともドライサウナ室を出てすぐのところにレイアウトされています。

先ほども記したように岡田湯では地下から汲み上げたやわらかな井水を、さらに軟水にしているので、肌触りがとてもなめらか。温度管理ができるチラーは使用されていないので、水温じたいは季節によって変動。夏を中心にあたたかい春〜秋のシーズンは20℃前後のこともありますが、フレッシュな地下水ですから温度はマイルドでもしっかり清冽。アツアツの体をしっかりクールダウンしてくれます。

逆に冬場はちょっとキンキンめに……。そう聞けば、サウナ好きにはたまらない水風呂だとお分かりいただけるのでは!?

さて、“2つずつ”と記しましたが、もう一つはどこにあるかというと――男湯は、屋外のガーデンエリアに!!

そして女湯は、階段を上がったロフトフロアのスチームサウナ室を出てすぐのところに。

写真を見て、皆さん「おぉっ!?」って思いませんか? ハイ、その通り。どちらも最高の入り心地です。

男湯のガーデンエリアは言うまでもないですよね。見上げれば青空が。もちろん夜には月や星を望むことができる上に、自然の風が水風呂に入りながら味わえちゃいます。

なお、くみ上げた地下水をそのまま使っているので冬場はキンキンと先ほど記しましたが、本当に文字通り、めっちゃ冷たくなります。いちばん寒い2月頃には、薄氷が張るなんてことも。(そんなときは、危険なので一時的に使用不可にするそうです!)

女湯の“空中エリア”も、スチームサウナ室を出てすぐという心遣いに加えて、そのすぐ横に、いわゆる薬湯=“変わり湯”の壺風呂が設けられているので(夏場はミント湯だったり、それ以外にはこの写真のように“ヒアルロン酸風呂(!)”だったりと、そのチョイスも◎!! 美容にうれしいフロアです)、この浴槽との交代浴も気持ちいいのでは!?

男湯も女湯も、ととのい用のイスがしっかり設置されているのでボタニカルのグリーンを眺め、包まれながらの休憩もスムーズです。

ほかのお風呂の種類も、広いノーマルな浴槽はもちろんのこと、ジェットなどのアクション風呂だったり、女湯にはでかくて丸いシルキーバス(お肌、うるスベです!)と多彩。 やはり“空間”と“機能”の両方の気持ちよさをしっかり担保されているんですよね……。

浴後のステキな時間&こだわりに込めた思いは次回の後編記事で掲載します!!

浴室やサウナ室についてご紹介してきましたが、実はその後=浴後を過ごす空間についても、この岡田湯では触れたいと思っています。今回は文字数もそこそこのボリュームになりましたので、そのあたりは次回記事にて。写真だけ数カットほど、チラリとお見せしましょうか。

この不思議な魅力にあふれた空間に込めた思いなどもご店主の博樹さんにうかがいましたので、しばしお待ちください!

いやぁ、それにしても、やっぱり銭湯のサウナは面白いですね。
個性やサービスーー独自の世界がお店ごとにいろいろある。
まさに“百サ繚乱”。

街で見かけた「ゆ」と書かれた暖簾や看板、くぐってみたくなっちゃうのも仕方ないですよね。

【岡田湯】
■住所:東京都足立区関原3-43-2 
■営業時間:後2:00~11:45 、定休=毎週月曜 
■料金:入浴料=520円(大人)+サウナ料金200円

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