【GO! 銭湯サウナ #10】東京の最新リニューアル3施設へ

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江戸時代から続く銭湯文化を、さまざまな魅力を付加して未来へ継承
~江東区「深川温泉 常盤湯」~

実に見事な宮造りの屋根。のれんをくぐってみると、伝統的な梁や碁盤の目のような格天井(ごうてんじょう)も何ともいえず美しく……思わずうっとりしてしまいます。
この建物ができたのは昭和30年(1955)だそうなのですが、歴史をたどると、どうやら今この「深川温泉 常盤湯」がある地で銭湯が営まれ始めたのはなんと江戸時代のことなんだそう。

「記録がないので、正確なところは不明ですが……400年くらいは経っていると聞いたことがありますね」

そう話してくれたのは、弟さん、妹さんとともに、現在この「常盤湯」を切り盛りする山本寛太郎さん。祖父が戦後すぐに、この地での銭湯経営に就いたのだそうです。

若い世代にもっと来てもらうために……サウナや新たな魅力をプラス

さて、東京でも指折りの歴史を持つ銭湯を祖父や父の代から継ぐにあたり、「常盤湯」は半年かけて設備を一新。今年3月にリニューアルオープンを果たしました。

「歴史と趣きのある建物は変えたくはなかったんですが、銭湯を残していくためには、もっと若い世代の方にもたくさん来てもらいたい、と。サウナを含めて、時代にあった“新しい魅力”を、思い切っていろいろと導入することにしたんです」(山本さん。以下同)

浴室に入ると、その充実ぶりにきっと誰もが驚いてしまうのでは? お風呂の湯船だけでも、うるつや肌になれるシルキー湯、ずっと浸かっていられる炭酸泉に、新たに掘ったというなめらかな天然温泉。いやぁ、コレはスゴいです……!

以前が本当にシンプルな「江戸前の熱湯(あつゆ)」がデーンとある銭湯だったこともあるし(若輩者には入れないほど、本当にアッチアチでした)、外観の“クラシックさ”とのギャップもあって、「ひぇ〜っ」と、うれしい悲鳴をあげてしまったのでした。

そして、何より、サウナ好きにとってうれしいのが、やはり新設されたサウナ室や水風呂&休憩ができる広い外気浴スペース(※外気浴スペースは男湯側のみ)。

まずは男湯側から見ていきましょう。

リニューアル以前には鯉が泳ぐ大きな池があったところが、ど〜んと広い露天のデッキエリアに。奥から天然温泉の露天風呂、外気浴用のイスがずらりと並ぶ休憩スペース、水風呂、そしてサウナ室とレイアウトされています。

サウナ室に入ってみましょうか。屋外にあるので、二重扉になっているのがまずうれしいですね。

おお、いいですねぇ。

中には体に熱が直接届く、ガス遠赤外線ヒーターとオートロウリュ機能の2台のストーブが並んでいます。コレ、都内でも採用している銭湯さんが増加中のシステムですね。「三ノ輪 改栄湯」とか、「アクア東中野」とか。

温度設定は95℃ほどだそうですが、このオートロウリュのおかげで体感温度はもっと高いというか、もっとしっかりとした熱を感じて、たちまち発汗が始まります。う〜ん、気持ちイイ!

ちなみに女湯のサウナ室は(サイズが少し小ぶりのためか)遠赤外線ヒーターのみなんですが……すぐ外に水風呂や温泉の浴槽があるせいでしょうか。湿度は十分! 温度設定もだいたい97℃くらいを目指しているそうで男湯のサ室と熱のパンチ力は全く遜色ない心地よさです。

肌触りがとてもやさしい、まろやかな地下水を使った水風呂もめちゃくちゃ快適です。ほどよい水温で、これまた丁度よいバイブラが肌をくすぐりつつ、たちまち体表から熱を取り去ってくれます。

気づけば満足そうに「ふぅ〜」と、大きく深呼吸している自分がいました。
いやぁ、ここまでのものを新設されるのは大変だったんじゃないでしょうか。

どこまでもやさしい! 「ありがたい」は、こっちのセリフです!!

「サウナは口コミもすごくて、本当にたくさんの方に遠くからも来ていただいています。もちろん、その狙いで父や弟もものすごく研究して導入、新設したんですが……正直、やや想定以上ですね(笑)。男湯はどうしても来店されるタイミングによってはお待ちいただくこともあるので今は本当にそこは申し訳ないなと。いろいろと勉強して、さらに工夫・改善していきたいと思っています。
でも『気持ちよかった』とか『また来ます』なんて言っていただく方が多くて、励みになりますし、ありがたいですね。本当に造って良かったなと思っています」

いやいや、山本さん。
サウナ好きの銭湯ファンの一人として言わせてもらえるのであれば……「ありがたい」は、こちらのセリフです!
風情のある建物や、やさしい笑顔や接客をしっかりと残していただいている上で、こんなにもサイコーな設備・環境を整えていただいたのですから。

時代に応じた新たな“武器”を加えることで、古き良きもの、心地よいものを伝え続けてくれようとするその心意気に、胸の奥がグッと熱くなります。

「そう言っていただけると、こちらもあらためて背筋が伸びる気がしますね。これからもがんばります。
あ、昔からのお客さんからよく心配そうに聞かれるんですけど……『鯉はどうしちまったんだ』って。あの、ご安心ください。横浜のほうの信頼できる方に預かってもらってます。鯉たちも元気に、ちゃんと引き継いでいきますので」

どこまでもやさしい、昔ながらの銭湯。心の底からほっこりできる空間。みなさんもぜひ、味わいに出かけてみてください!


【深川温泉 常盤湯】
住所:東京都江東区常盤2-3-8 営業時間:後0:00~深0:30 ※サウナ+入浴は2時間制 毎週木曜=休 料金:入浴料=520円(大人)+サウナ料金=500円

撮影=長谷繁郎

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