「おんせん県いいサウナ研究所」が「ふるさとづくり大賞」に選出

「ああ、サウナって、やっぱりいいなぁ……」

雑誌やこのウェブページなどで、全国各地のさまざまなサウナ施設や運営している方々を取材させていただくたびに思うことなんですが、今年の2月にある一報を聞いたときも、まさにそう思いました。

その一報とは、総務省が主催・実施している「ふるさとづくり大賞」で、令和4年度の表彰団体に、大分県豊後大野市の「おんせん県いいサウナ研究所」が選出されたというニュース。

「おんせん県いいサウナ研究所」は、日本一の源泉数、湧出量を誇る、全国屈指の“温泉県”である大分にありながら、温泉の出ない豊後大野市で発足した「アウトドアサウナ協議会」。それぞれアウトドアサウナ施設を運営されている方々がメンバーとして名を連ねていらっしゃいます。

もちろん、観光PRや、いわゆる「町おこし」も目的の1つではありますが、それよりも「大自然のなかで、サウナの良さを伝えたい」という思いを主要なテーマ=ミッションに掲げて設立。2021年の4月より、正式にさまざまな活動をスタートさせました。

私たち編集部も、以前からその存在は耳にしていたのですが、実際に昨年夏に発行した「SAUNA BROS.vol.4」で「REBUILD SAUNA」(LAMP豊後大野・内)、「稲積水中鍾乳洞」という2つの施設を取材、掲載させていただいた際に、この「おんせん県いいサウナ研究所」の主要メンバーである「REBUILD SAUNA」の高橋ケンさん、「稲積水中鍾乳洞」の青松善輔さんの両支配人にお会いし、「ほほう!」と、その趣旨や目指すものに強く共感させられました。

今回の受賞を受けて、あらためて高橋さん、青松さん、そして「Tuuli Tuuli」(カフェ パラムに併設)のオーナー、小野光治さん、「JOKI SAUNA」(里の旅リゾート ロッジきよかわ・内)を運営されている江副雄貴さんに「おんせん県いいサウナ研究所」の活動について、お話をうかがいました。

目次

きっかけは……「町おこし」「ビジネス」というより、“サウナを気持ち良く味わいたい”という単純な思い

――このたびは、「ふるさとづくり大賞」での表彰、おめでとうございます! 「おんせん県いいサウナ研究所」のアクションがあらためて認められたのは……私たちもうれしいです。

高橋「ありがとうございます。僕たちも、こんな賞をいただけるとは思っていなかったので、正直、少し驚いてはいるんですが(笑)」

――これまでにも、いろいろなメディアで語られているかもしれませんが、あらためて「おんせん県いいサウナ研究所」をつくった経緯などを聞かせていただければと思います。

高橋「はい。豊後大野市って、大分県の中でも熊本……阿蘇の国立公園に近いロケーションなんです。それで、北側には温泉地として名高い別府市や湯布院町がある。宿泊業をやっていたり、観光に携わる方が結構いて、自然も豊かなんですが、ただ『日本一のおんせん県』の大分にあって、温泉がないんです。なので、実のところ、皆さんが“通り過ぎて行く”町だったんですね。なかなか、宿泊してくださったり、滞在してもらったりすることが難しい状況ではあったんです」

――こういう言い方をしてしまうとアレですが、高齢化も進んでいて、人口も約3万4000人と……15年前に比べておよそ1万人ほど、減少されていますよね。

高橋「そうですね。これといって目玉になるような飛び道具が、うまく見つけられずに、高齢化や過疎も進んでしまってはいたんです。さっきも言いましたが、観光に携わる人も少なくはないのに……冬場は本当に集客に困ってはいたんです」

――そんな中、2020年の3月に「おんせん県いいサウナ研究所」を立ち上げられました。

高橋「はい。そのきっかけは、2019年に『カフェ パラム』と『ロッジきよかわ』、それと『LAMP豊後大野』で、サウナのイベントをやったことです。そのときは、単純に『この川(奥岳川)を水風呂にして、サウナをやったら気持ちいいだろうな』っていう発想だけだったんですが。僕がその数年前にサウナを好きになっていたこともあって、川のほとりにある『カフェ パラム』からエメラルドグリーンの清流を見て、『水風呂にしたら気持ちいいんじゃないですかね』って小野さんに言ったのが、そもそもの始まりで(笑)」

小野「それを言われたのが、僕もちょうどサウナに目覚めた頃だったんですね。で、『いいね。俺も今、サウナ好きなんだよ。イベントやろうか』となって。で、『それなら川の向かいにある「ロッジきよかわ」さんにも!』と、江副さんに声をかけさせてもらって」

江副「そうでしたね。僕はサウナについては当時まだ入ったことがなかったんですが、僕たちの施設にとっては川が一番の財産だなっていう思いはあったんですね。それと同時に、冬のシーズンの営業的な課題というのはずっとあった問題だったんです。そのときに(高橋)ケンさんから『テントサウナっていうものがあるんだ』って聞いて、教えてもらうと同時に体験させてもらった瞬間、『これは最高じゃないですか。絶対にイイ!』って言えるくらいにととのったんですね(笑)。『お客さんが来なくてもいいから、うちでもやりたい』と、当時まだ九州では4基目だったテントサウナをすぐに購入した次第です(笑)」

――では、今回、総務省から表彰された「おんせん県いいサウナ研究所」のはじまりは……結果としては「町おこし」とか「ビジネス」という側面にもつながりましたが、最初はあくまでも「気持ちいいだろうな」という思い付きだった、ということでしょうか?

高橋「きっかけは、たしかに……そうでした(笑)」

単純に「サウナをこの川で楽しみたい、楽しんでもらいたい」という思いからのイベント開催。

そして高橋さん、小野さんが同時進行的に、自らが運営する「LAMP豊後大野」と「カフェ パラム」にそれぞれサウナを造りあげたこと……それらが翌年に行政=豊後大野市とも手を携えた「おんせん県いいサウナ研究所」設立へとつながっていったそう。

鍾乳洞でサウナなんて前代未聞だけど……気持ち良さに「やるしかない」と決意を!

高橋「実際にイベントをやってみて、『ここ(豊後大野)の大自然でのサウナは、やっぱりすごくいいコンテンツだ』と思わされたというか。各々の施設でサウナを運営することに勢いがついたという感じはやっぱりありましたね」

江副「『ロッジきよかわ』も、最初のイベントの話が持ち上がった当時は、場所を提供するのかな、くらいに思っていたんですが……実際に自分で体験してみて、俄然、これを提供したいという思いになりました(笑)」

――確信になった、というか、使命感みたいな思いに?

高橋「はい。それに近い思いでしたね。そうやって少しずつ盛り上がっていくうちに、小野さんが『鍾乳洞を水風呂にしたら、めちゃくちゃ良くね?』と言い出しまして。『たしかに!』『それはたまらないわ!』となって、『稲積水中鍾乳洞』の青松さんにコンタクトをとったんです。『サウナ、やりませんか? 鍾乳洞で』って」

――青松さんは……その提案を最初に聞いた時の感想はいかがでしたか。

青松「私は、そのときまだサウナの知識があまりなかったんです。でも、お話をいただいて、『ロッジきよかわ』さんでサウナを体験させていただいたんですね。そこで、なんと1セット目でハマってしまったんです。サウナの気持ちよさに」

――ハマってしまった(笑)。

青松「はい。『これはもう、スゴいものだな』と。だけど、鍾乳洞でサウナをやるのは、ものすごく可能性はあるし、素晴らしいアイデアとは思ったんですが、実現可能なのかどうか、ちょっと自信がなかったんです。少し考えるというか、悩みました」

――たしかに。実際、鍾乳洞には一般の見学者の方もいらっしゃいますし、何より、鍾乳洞でサウナをするなんて聞いたことがないですもんね。前代未聞のアイデアではあります。

青松「はい。安全性も含めてのオペレーションだったり、本当にいろいろと悩みました」

――でも、やることにした。

青松「はい。最初は夕方からサウナを実施するという形にしました。鍾乳洞が午後5時までの営業なので、一般の見学の方とあまりかち合わないように。それと同時に、立ち合うスタッフの育成や調整なども綿密にシミュレーション、準備をしまして」

――なるほど。でも、いちサウナファンとしては、その決断に感謝しかないですね。ありがとうございます! 素晴らしい英断です!!

高橋「本当に、そう思います!(笑)」

――小野さんも、言い出しっぺとして嬉しかったのでは?

小野「いやぁ、そうですよね。僕も実際にサウナを営業してもらえたらうれしいけど、個人的には……難しいかもとは思っていました。ただ、もし無理だとしても1回はあの鍾乳洞でサウナ体験をしてみたかったので、試験的に入らせてもらったときが、実は1番、うれしかったかもしれません(笑)。『1回、記念に入れればいいや』って思っていました(笑)」

青松「(笑)。でも、年間を通じて、あの洞内の流水は水温が16℃ですし、何よりあの雰囲気も素晴らしいですしね。これは、是非ともやっていこう、と」

小野「入ってみたら、想像通りというか、予想していた以上に気持ちよかったですから。これは自分だけではもったいないって感じたし、そう青松さんを含め全員に伝えました(笑)」

高橋・江副「(笑)」

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