癒されつつ、進化に驚きも! 水戸のサウナ「ゆるうむ」の魅力②

2023年11月にオープンした、茨城県水戸市の「SPA&ごはん ゆるうむ」。

12月に発売した「SAUNA BROS.vol.7」でも巻頭の特集として掲載させていただきましたが、この「ゆるうむ」、地元の方はもちろんのこと、都内や近県在住のサウナ好きからの注目度、支持が急上昇しているのを感じます。

たしかに、サウナ室だけでも、神々しいまでの8段もある巨大なタワーサウナ室をはじめ、瞑想感に浸れる静かな中高温サウナ室、塩サウナ、ハーブミストサウナと、アプローチの異なる4種がズラリ。やはり数種類が設けられた水風呂であったり、広くてイスの数も豊富な外気浴&内気浴スペースなど、「設備」面はサウナ好きにとってみたら驚喜の仕様。(※サウナや浴室のスペックは先日公開した前回記事←で詳しく紹介していますので、是非、お読みください!)。

男性は8段、女性は7段の座面がある巨大タワーサウナ室を含め、男女各4種のサウナ室が!
水風呂や「ととのいスペース」も多種多様!

さらに、浴室を出たあとも、広い館内にはさまざまな、心がゆるむ空間が広がっています。

今回は支配人の小河原利之さんにご案内いただきながら、施設全体をぐるっと回ってみましょう!

目次

コロナなんかに負けない! 閉館した温浴施設を再生させた背景がアツい!!

まずは改めて、この「ゆるうむ」がオープンした経緯についてお聞きしてみましょう。

「以前にこの場所で『御老公の湯』というスーパー銭湯さんが営業をされていたんです。水戸店として。でも、コロナ禍などの影響もあって2021年の夏に閉店されたんですね。

実は私ども(=ゆるうむ)は、茨城日産グループの会社なんですが、もともとこの土地を茨城日産が所有していて、それを『御老公の湯』さんにお貸ししていたんです。閉店後には建物をすべて取り壊して更地にして返していただく契約ではあったんですが、『いや、ちょっと待ってください』と……」(小河原さん。以下同)

建物の躯体や、この美しい影が出来る「ゆ」の看板などは前施設のまま。実に味があります

長年(約15年ほど)にわたり、この地で愛されてきた温浴施設。それがなくなることを寂しがっている地域の人も多く、そのまま取り壊してしまうのは忍びない……。ということで、いっそ自分たちで引き取って経営してみよう。なので、壊さないでほしいと逆に申し入れたんだとか。

なんともやさしくて、胸アツなエピソードじゃないですか! 

サウナ好きとして、温浴施設ファンとして。施設がなくなってしまった地元の皆さんの気持ちを想像すると、思わず「ぐっ」ときてしまいます。

「まだコロナの影響がどの程度あるかなど、不安な点もなかったわけではないんです。さらに、温浴事業は未知の分野でもありました。

ただ、茨城日産グループとしては本業の自動車関連だけでなく、さまざまな事業を展開しているんです。レストランなどの、この地域に根差した飲食事業であったり、サービスや接客といった分野でも仕事はさせていただいていて。

それらの実績や考え方の延長で、地域の皆さんにとって必要なものならば、やっていこうじゃないか、と」

そうした経緯から、建物は取り壊しの憂き目には遭わずに済み……。あの巨大な浴室やサウナ室がいったんそのまま残されることになったそう。

サウナと植物の持つ“癒し”の力で……心身ともに安らぐ施設にしたい

さて。その閉店から1年あまり。コロナ禍から社会全体が「日常」を取り戻しつつある中で、施設再始動に向け、いよいよ「ゆるうむ」も本格的に動き始めます。

まずは施設としての「方向性」の策定。いわゆる「コンセプト」を考えられたんだそう。

「当然、事業として考えなければならないので、いろいろな案や意見も出ましたし、本当に悩みました。その上で……最終的に『ボタニカル(植物)』な空間、それと『サウナ』に力を入れていこうと決まったんです。

実は私自身も、温浴施設もサウナももともと好きだったんですが、実際にこの施設に携わることが決まってから、さらに全国のいろいろなサウナ施設や温浴施設を勉強も兼ねて訪ねて回りました。100施設くらいは行ったと思います」

そんな中で、「いいなぁ」と思ったところには共通点があったそう。

「“気持ちが安らぐ”というんでしょうか。心の底からのんびりできて、もちろん身体の疲れもとれる。そういった施設さんに、やはり心惹かれたんですね。

そのなかでも印象に残ったのが岐阜・各務原の『恵みの湯』さんです。地域に根差した温浴施設さんなんですが、ご自分たちで育てられたハーブをサウナ室内や館内のあちこちで活用されていて、全国にファンも多い施設さんで。私自身も『あぁ、素敵だなぁ。いいなぁ……』と」

なるほど。岐阜は薬草の宝庫と呼ばれる伊吹山などを擁し、古くから「薬草文化」が伝承されている地。「恵みの湯」もそうですし、「田辺温熱保養所」(大垣市)などの温浴施設の名を聞いたことがある人もたくさんいらっしゃるのでは? 

でも、実は水戸も、岐阜同様に薬草の研究や文化が古くから続けられてきた地でもあります。

「そうなんですよ! 江戸時代の、それこそ御老公(=水戸光圀)の頃から水戸藩では薬草・植物の研究や生産が盛んに行われてきた土地柄ではあるんです。

それもあって、心身を癒される気持ちよさだけではなく、ちょっとした運命的なものも感じたと言いますか(笑)。

もう、『コレ(薬草やハーブ=植物)だ。コレを私たちの新しい施設でやっていきたい』と直感的に、強く思ったんです」

そんな言葉通り、4種あるサウナ室のうち、2つのサウナ室でハーブの香りに包まれることができます。

中高温の「ハーブサウナ」では、ロウリュの蒸気とともにハーブの香りが立ち上る
露天エリアの「ハーブスチームサウナ」にも植物の芳香が満ちています

室内にただよう、ほどよい熱さと蒸気。そして自然の香りに全身を包まれる幸せたるや。日々の仕事や雑事で凝り固まった心身が、ゆっくりとほぐれていくのを体感できます。


さらに、館内のあちこちに散りばめられたグリーンの装飾や植物にまつわる掲示なども、なんだか心をほっこりさせてくれます。

館内の壁面にはこんなポスターがちらりほらり
館内のあらゆる場所で、“緑”が目に入ります

「食堂のメニューやイベントの宣伝ポスターなんかをもっと貼ってもいいのに」なんて思ったりしないこともないのですが。いやいや、このなんとも穏やかで、ガツガツしていない空気感も、心を穏やかにしてくれるんですよね。


浴室がある1階から2階へと上がると、「ボタニカルに力を入れていきたい」というコンセプトをさらに強く感じることができます。サンダルが並んだ引き戸の向こうには広々としたガーデンテラスが! そこにもいくつものチェアが並び、軽い運動や散策などもできるようになっています。

陽光を浴びながら、ふと植栽に目をやると……灌木や花などに混じって数種のハーブも植えられています。

おぉ!これは……ローズマリーですね

「そうですね。浴後に緑を見て癒されていただければいいなと思ってガーデンを作ったんですが、ゆくゆくはここで育てたハーブや薬草をサウナ室やハーブ湯の浴槽で使ったりしたいなとも思っているんです。種類も数も今はまだわずかですが、いろいろと勉強しながら、もっともっと増やしていきたいんです」

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