東京の中央卸売市場が築地から豊洲に移って5年。ついにオープンした「豊洲 千客万来」。にぎわいを生み出す東京の新名所として華々しく開業し、食楽棟「豊洲場外 江戸前市場」は年間200万人、温浴棟「東京豊洲 万葉倶楽部」では年間60万人の来訪を見込んでいるのだとか。第1回、第2回でご紹介した温浴棟「東京豊洲 万葉倶楽部」について紹介しました。今回は、この「豊洲 千客万来」の開業に向けた豊洲プロジェクトを開発担当として主導してきた万葉倶楽部株式会社の高橋眞己取締役副社長(以下、高橋副社長)にインタビュー。オープンを迎えた今の気持ち、今だからこそ話せるエピソード、そして「東京豊洲 万葉倶楽部」でのおすすめの過ごし方を話していただきました。また、「東京豊洲 万葉倶楽部」の設備を取り仕切る施設管理部目黒森央部長(以下、目黒部長)に、施設の設備などについてお伺いしました。
<万葉倶楽部・高橋副社長にインタビュー>リピーターのための専用スペースも充実
――東京の新名所となる豊洲市場でサウナに入れるようになった、これは温浴棟「東京豊洲 万葉倶楽部」ができたからかと思います。豊洲のような都心部での施設運営は、以前から考えられていたことなのでしょうか。
「東京都心部で温浴施設をやりたい気持ちはもちろんありました。新しい施設の候補地として埼玉に土地を探しに行ったこともありましたが、できることなら、より人口が多い東京23区内で開業したいと考えていました」
――待望の施設として、この「東京豊洲 万葉倶楽部」で力を入れた点には、どのようなものがありますか。
「これまでの施設と違うアピールポイントとしては、より目に付きやすい場所で印象付けを行うために岩盤浴をフロントと同じフロアに設置しました。お客様に付加価値を提供する設備として、サウナだけでなく岩盤浴にもより力を入れてアピールしたいと思っております。サウナ、岩盤浴、天然温泉……それぞれの楽しみ方を見つけて、より多く方々に利用していただきたいと考えています」
――それが岩盤浴エリア「心石庵」なのですね。広々としたスペースで開放感が抜群。窓からの景色も最高でした。
「(岩盤浴とは別の)ヒーリングルームは、33~34℃と室温をちょっと高めにして、ぽかぽかした中でお休みいただけるゾーンを手前に設けています。そこから先に進むと、麦飯石が積み上げられたヒーターを囲んで座れるスペースがあります。そういった、他の施設でも評判が良い設備、サービスを、ここでも積極的に取り入れています」
――これまでの経験で蓄積されてきたノウハウが活かされ、“いいとこ取り”をしているといえそうですね。
「宿泊用の客室も、他の系列施設と比べてグレードアップしました。豊洲と同じ規模の横浜は割と小さめの部屋が多く、リーズナブルな路線できましたが今回の豊洲では、高級路線にスイッチしました。都心にいながらも、のんびりとしたぜいたくな時間を味わって欲しいと考えたからです」
――そうだったのですね。お客さまはどういった方をターゲットとしているのですか。
「国内、それも周辺地域の方です。もちろん、足を運んでいただければありがたく、どなたも歓迎ですが、特にこの近くが生活エリアの方にコアなファンになっていただきたいですね。お風呂とサウナに入って、のんびりとくつろぐために通っていただけるのが、一番うれしいことです。日常生活のすぐ近くにありながら、普段の暮らしから解き放たれる非日常の体験をしていただきたい、そう考えて、9Fは会員制のフロアにしました。このフロアには、リクライニングチェアーがあるプレミアムルームや宿泊できるラグジュアリールームがあります。こういった数多く足を運んでいただけるリピーターの方のための専用スペースも充実させています」
――どちらもものすごく豪華でした。特に会員制のラグジュアリールームは、秘密の社交場といった雰囲気で、思わずため息が漏れました。ラグジュアリールームがあるのは、「豊洲 万葉倶楽部」だけなのでしょうか。
「最初からきちんと設計してつくったのは、ここが初めてです。ビジネスとして考えると採算を取るのは難しいのですが、足を運んでリピーターとなってくださるお客様にご満足いただければなによりのことで、来てよかった、と思っていただけるように力を尽くしていきます」
<施設管理部・目黒部長にインタビュー>アウフグースイベントの開催も検討中!?
――ここからは目黒部長にサウナについて聞いていきたいと思います。まずはサウナの設定について教えてください。
「はい。最近は高温のドライサウナを好まれる方が増えている傾向が見られ、私たち万葉倶楽部の施設にも100℃近い温度設定にしているサウナがあります。しかし、高橋副社長からも話があったように、まずはこの地域周辺の方に何度も足を運んでいただける施設にしていきたいと考えているので、今は高い温度設定にしておらず、男女ともに85℃にしています。今後はお客様の声を聞き、ニーズを吸い上げながら、少しずつ調整していきたいと考えています」
――足を運んでいただけるお客様の好みに変更していくわけですね。では、サウナ室の特長はいかがでしょうか。仕様など、系列の他の施設と異なる点があれば、ぜひ教えていただきたいのです。
「天井を見ていただけば気付かれると思うのですが、黒くなっています。これは炭が入った塗料による炭塗装で、遠赤外線を発生し、実際の温度以上にからだが温まる効果があります。温度の設定が低めでも、体感ではそれ以上の熱さに感じるはずです」
――そうだったのですね。炭から発生した遠赤外線の熱でより体が温まるとは……。
「塩だけでなく、泥パックのボトルも置いて、好みで楽しんでいただけるようにしています。以前は水に溶けにくい泥パックが多くて、排水管が詰まりやすいリスクがあったのですが、今はさらっとしていて、水に流れやすい泥パックができましたので、最新式の商品を置いています。あくまでもメーンは塩サウナですが、泥パックにも興味を持っていただけたら、ぜひ使っていただきたいです」
――女性浴室には、ナノミストサウナ(※)が設置してありますね。
※ナノミストサウナ……ミストサウナ以上に水の粒子が細かく、毛穴よりも小さいナノサイズのミストが全身を包み込み、肌にうるおいを与えるといわれているサウナ室
「ナノミストサウナについても、お客様の声を聞き、ご要望があれば、香りを付けたりすることも考えています」
――アロマナノミストですか。気持ちよさそうです。前回ご紹介した現地直送の天然温泉に加えて、サウナ室も充実していることが分かりました。
「お客様のニーズが高いものは、しっかり取り入れていきます。ドライサウナにはオートロウリュを導入していますが、ゆくゆくはアウフグースのイベントを開催することも検討しています。人員の問題もあり、定期的には難しいかもしれませんが、機会を探って、ぜひ実現したいですね」
時間の許す限り満喫するのが正解
高橋副社長と目黒部長に話を聞き、お二人が実際に足を運ぶお客様に満足してもらえることを最優先に考えていることが、ひしひしと伝わってきました。
高層階の温泉付きスイートルームなど宿泊用の客室も超豪華。「東京豊洲 万葉倶楽部」は、温浴施設の枠を超えているように思えます。しかし、お二人に言わせると「万葉倶楽部はあくまでも温浴施設」なのだそう。
メーンに考えているのは、日帰り入浴での利用。だからこそ日帰り入浴「マル得セット」利用者のためのロッカーが1600個、リラックスルームは3フロアに4カ所あり、513台ものリクライニングチェアーが設置されているのです。
高橋副社長によると「お客さんが増える土曜日、日曜日でも、リラックスルームのリクライニングチェアーに空きがなく、座れないことはないはずです。年末年始や特別なイベントが開催される時は別として、どなたもゆっくり休めるように計算して設備をととのえてあります。」と。ならば、心置きなく時間を使い、施設を満喫したいもの。
「東京豊洲 万葉倶楽部」でのおすすめの過ごし方について、施設を運営する立場の人はどう考えているのでしょうか。高橋副社長と目黒部長に、もし自分が利用するなら? と聞いてみました。
「お風呂が先か食事が先か悩むところですが、まずは浴場に向かってお風呂とサウナ。あかすりも頼みます。さっぱりしたら食事。お酒も飲みたいところですが、あまり強くないのでノンアルコールビールにします。それからオイルマッサージをして、リラックスルームでゆっくり休む。しばらくしたらまたおなかが空いてくるので、再びお食事処へ。午前中から夜まで、ずっといるでしょうね」(高橋副社長)
「一日中過ごすのは副社長と同じですが、お風呂に入ったら、その後はリラックスルームへ。のんびり休憩しているうちに、おなかが空いてくると思うので、そのタイミングで食事をします。そしてまた休憩。その後、せっかくだからまたお風呂に入ろう、となるでしょう。個人的にもお風呂が好きで、いろんな温浴施設へ行きますが、混み具合を気にせず安心して休憩スペースへ行けることが、この施設の良いところだと思います」(目黒部長)
ちょっと一息というよりも、時間の許す限り楽しむのが正解。東京の新名所の一角を成す「東京豊洲 万葉倶楽部」は、話題のスポットながらも、しっかり休めて、くつろげる、包容力のある施設。サウナと天然温泉を満喫することはもちろん、丸一日、とことん味わい尽くすつもりで出掛けるのが◎です。
東京豊洲 万葉倶楽部
■住所:東京都江東区豊洲6丁目5
■営業時間:24時間営業
■料金:【マル得セット入館料(前10:00~深3:00)】大人(中学生以上)=3,850円、子ども(小学生)=2,000円、幼児(3才~未就学児)=1,400円。(深3:00以降は大人+3000円、子供+1500円、幼児+1500円が加算)
その他詳細は公式HP(https://tokyo-toyosu.manyo.co.jp/)からご確認ください。
撮影/佐藤佑一
取材・文/吉牟田祐司