こんなところにサウナがあったのか! 大相撲で19年ぶりの日本人出身横綱となり、2019年初場所で引退した元稀勢の里の二所ノ関親方。小細工なしの真っ向勝負の取り口で人気を博した第72代横綱は現役引退後、大学院で学び、サッカークラブを参考にした地域密着の部屋経営や栄養指導など、「親方」として角界に新しい風を吹き込んでいます。そんな親方が率いる二所ノ関部屋にはサウナ完備の宿舎がありました。その宿舎とは……愛知県安城市にある名古屋場所宿舎。聞いたところ、どうやら角界初……!? 所属する力士たちは、どういった楽しみ方をしているのでしょうか。二所ノ関部屋の力士にお伺いしました。
サウナ好き親方のまな弟子もサウナ好き!?
いよいよ始まる大相撲の初場所。1月の初場所、3月の春場所、5月の夏場所、7月の名古屋場所、9月の秋場所、11月の九州場所と、年6回開催される本場所は、力士の地位や給金を決める番付を作成する基準となる正式な場所。15日間連続での部屋別総当たり制で力士が対戦します。2024年は1月14日に初日を迎え、幕を開ける激闘のドラマを心待ちにしている好角家も多いはず!
現役時代からサウナをよく利用していたという二所ノ関親方。今もイベント出席などのために地方のホテルに宿泊する際には、大浴場を完備したビジネスホテルに宿泊するそうです。
そんな親方が大きな期待を寄せるまな弟子が、初場所で新入幕を果たした大の里関。日本体育大学時代に2年連続でアマチュア横綱に輝いた逸材で、身長192cm、体重175kgと恵まれた体格。2023年の夏場所に幕下10枚目格付け出しで初土俵を踏み、わずか4場所で幕内に進しました。これは昭和以降3位タイのスピード記録だそう。師匠が二所ノ関部屋を立ち上げて、初めて誕生した幕内力士です。
そしてもう一人の成長株が十両の白熊関。身長184cm、体重143kg。大の里関と同じく日体大出身。一昨年の名古屋場所で序の口としてデビューして、7場所連続で勝ち越し。大の里関と同じタイミングで十両に昇進しています。この快挙は年6場所制となった1958年以降、幕下付け出しを除く初土俵では7位のなのだとか! 2023年の九州場所千秋楽に師匠の二所ノ関親方から話があり、しこ名を本名の高橋から白熊に。さらなる飛躍が見込まれ、注目を集めています。
初場所でも活躍が期待される2人が、どのようなサウナの楽しみ方をしているのか。宿舎を訪ねて聞いてみました。
溜まった疲れが取れて「はぁー」ってなるのが最高!
大の里関に聞きました!
――以前からサウナがお好きだったのですか?
「もともとお湯に浸かることが好きです。なのでスパ施設へ行くこともあって、その時にはサウナに一緒に入りますね。ただ、マゲを結っていてたっぷり汗をかくと、鬢つけ油が落ちて床などが汚れてしまうので、あまり長く入れないんですけど、自分は入門したのが去年の春で、まだマゲを結えるほど髪が伸びていない、いわゆる『ざんばら髪』なので長く入れるんですよね」
――名古屋宿舎に滞在している時は、一日に何度もサウナに入るのですか?
「それほどではないですけど……。3度か4度入ったら、もう気持ち良くて『あぁ』ってなりますから」
――場所中の15日と、その前後の2週間くらい、あわせて1カ月半くらいは宿舎に滞在されると聞きました。その間は毎日入っていますか?
「お風呂はたくさん入りますけど、場所中はサウナには入らないですね」
――なぜですか?
「なんででしょうね(笑)。勝負に集中しなければならない場所中にサウナに入るとリラックスしてしまうので、気を抜かないため、かもしれないですね。でも好きなので、場所が終わったら、ご褒美がてらこの宿舎だけじゃなくて、外のお風呂へ行くこともあります」
――外の施設はどちらへ行かれるんですか?
「友だちが遊びにきた時があって、その時は確か『天然温泉コロナの湯 安城店』へ行きました」
――周りにいた人に注目されたのではないですか?
「名古屋場所があったばかりだったので、力士を見慣れていて違和感がなかったのかな。それほどではなかったですね」
――入っている時は、どういうことを考えているのでしょう。やっぱり相撲のこととか?
「あんまり考えないです。日頃溜まった疲れが取れて『はぁー』ってなるのが最高ですから」
息抜きしたくなった時はサウナでゆっくり
白熊関に聞きました!
――この宿舎に滞在している間、サウナにはどのくらいのペースで入っていますか?
「週3~4日ですかね。親方は毎日入っていますね」
――親方と一緒にサウナに入ることもあるのですか?
「ありますよ。でも、僕がご一緒するのはまだ早いような気がして……。ちょっと申し訳なさもあって時間をずらしたりすることもあります」
――サウナで一緒になった時は、どんな話をするのでしょう。
「うーん、あまり話はしません(笑)。それよりも『ロウリュやれや』みたいな、そんな感じで。だからサウナストーンに水をかけて、タオル回したり、うちわであおいだりして……」
――サウナを満喫していますね。
「そうですね。私もサウナは好きですから。あと岩盤浴も好きです」
――岩盤浴は外の施設で楽しまれるんですか?
「そうですね。どこが一番とかは特にないですけど。岩盤浴でめちゃくちゃ熱いの、香りが良いの、涼める程度、施設にある岩盤浴すべてに入ることもあります。もちろん、からだを冷ますクールルームにも。そもそも温冷交代浴が好きなので。サウナも長い時は、飽きるまで入っていますね」
――何セットくらいするのでしょう。
「その時の体調次第ですけど、多ければサウナを5~6回、それに岩盤浴を2~3時間とか。息抜きしたくなった時には、サウナでゆっくりというのが良いですね」
元稀勢の里・二所ノ関親方から受け継がれるサウナ愛
現役時代からよくサウナを利用していたという親方のこだわりから、名古屋宿舎にサウナが設置された二所ノ関部屋。まな弟子の大の里関と白熊関にも、親方のサウナ愛はしっかりと受け継がれているようです。
サウナを完備した宿舎について、角界にいる大学の先輩・後輩、同級生から「うらやましい」と言われることも多いという大の里関は「ぜいたくすぎるくらいの施設をつくっていただいて、ありがたいです」と。
いよいよ始まる初場所。幕内として、しこ名を改めて、それぞれ初めての場所を迎える大の里関と白熊関。
大の里関は「自分はからだが大きいですけど、スピードを活かした相撲が取れるので、そこを見てほしいですね」。白熊関は「右四つで組んで寄り切る。自分はそういう相撲を取ります。派手さはなく、あまり歓声が沸くようなこともありませんが、どっしり構えた安定した相撲を取っていきますので、そこを見ていただければ」と話してくれました。二人の活躍が楽しみ! ぜひ勝ち越して、さらに番付が上がることを期待しています。
今回は初場所での活躍が期待される有望力士にサウナについて語っていただきました。次回は角界初といわれるサウナを完備した二所ノ関部屋の名古屋場所宿舎について詳しくご紹介します。
大の里 泰輝
西前頭十五枚目
本名・中村泰輝(なかむら・だいき)
’00年6月7日、石川県河北郡津幡町出身。得意技は突き・押し・右四つ・寄り
※写真左
白熊 優太
西十両六枚目
本名・高橋優太(たかはし・ゆうた)
’99年5月25日、福島県須賀川市出身。得意技は右四つ・寄り
※写真右
二所ノ関部屋
1935年、第32代横綱・玉錦によって起こされた相撲部屋で「昭和の大横綱」と呼ばれた第48代横綱・大鵬も所属した。第45代横綱・若乃花、第59代横綱・隆の里、そして第72代横綱・稀勢の里を輩出した名門です。角界にある5つの一門のうち、二所ノ関一門には最も多い15部屋が所属し、その総帥が元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方です。
公式サイトはこちらからhttps://nishonosekibeya.com/
撮影/長谷繁郎
取材・文/吉牟田祐司