日本を代表するフィギュアスケーターで、サウナをこよなく愛する友野一希さんの連載「スケートときどきサウナ」。
今回は富山サ旅第2弾、サウナ施設「The Hive」と、越中八尾を訪れました。(これまでの連載はこちら)
六角形は最高の形⁉ 自然を感じられる洗練さを備えた「The Hive」
――今回は立山にある「The Hive」を体験しましたが、施設の第一印象はどうでしたか?
「おしゃれな施設と聞いてはいましたが、もう入った瞬間に……いや、なんならその前の、外観を見たときから『これはなんかすごそうだぞ』って感じましたね。半地下に建っている六角形の建物が、おしゃれだし、存在感がすごかったです。『サウナ施設』だというのが、知らない人には分からないですよね。実際に外気浴をしているときに『ここ何なんですか?』ってたまたま通りがかった人に聞かれていましたよね(笑)」
――そうでした(笑)。サウナ施設です、って答えたら驚いていましたね。ところで、友野さんは「昔からあって大切にされている施設」が好きなのかなという印象だったのですが、見た目から新しいの「The Hive」……どうでしたか?
「それが、実は、ちょっと感動しちゃいました『こんな世界があるんだ』って。それくらい良かったんです。統一感ある洗練のされ方で、一度体験してみれば、ただ新しいだけなのではなく、サウナが好きな人が、サウナが好きな人ため作った『本物の施設』と分かります。考え抜かれたぜいたく。それを独り占めできる……」
――どのあたりが「本物の施設」と感じましたか?
「サウナの一連の動線もそうですけど、まず2つあるサウナ室。ちょっと温度が高めのサウナ室は入った瞬間に分かるアチアチ感。こんなに洗練されているのにサウナはスーパーパワー系なのもなんか良くて(笑)。室内は決して広くはないけれど、狭くもなくてちょうどいい広さで。ここも六角形になっているんですが、視覚的にもすごく落ち着くんですよね。セルフロウリュをしたときも、六角形って熱の対流が良い気がしました。ちゃんと考えられてるなー。六角形ってすごい。
もうひとつのサウナ室は、温度は少し低めでじっくりしっかり汗を出す感じの熱さ。座面がなく、土手のようになっていて、寝ころべるんです。こっちのサウナ室もセルフロウリュができるんですが、ロウリュのあとあえてタオルは振らず(蒸気をサウナ室全体に拡散せず)ジュワーって上がった蒸気が下りてくるのを待ち構えて、じっくり感じました。全身にゆっくり熱を浴びる感じが気持ち良かったですし、寝ころぶ背板の角度やカーブ具合もちょうど良かったです。フラットすぎず、角度がありすぎずで。窓も考えられていて、寝ころぶサウナ室のほうは小さめの窓で、あまり明るくならないようになっていましたし、寝ながら少しだけ外が見える感じで、見えすぎなくて、これもちょうどいいんです。
ロウリュの水は、天然ハーブのアロマ水を自分で選ぶことができました。添加物とかで合成されていない、自然にあるままの天然ハーブの香りが、サウナにぴったりで。アロマ水もちゃんと選び抜いて考えられているんですよね。手抜かりがない。僕、そういうところにちょっと心もっていかれちゃうんですよね(笑)」
――分かります。おもてなしの精神にも通じますよね。
「そうなんです。来た人に気持ち良くなってもらいたいっていうのを、こういうところから感じますよね。水風呂もそうなんです。一部分、深くなっているところがあるんですよ。横幅が広くて、泳げる水風呂だけでも十分なのに。
水はもう、ここも気持ち良くて……富山の水はすごいですね。気持ちいい。肌のなじみがすごくいいんですよね。肌にスーッと入っていく感じ」
――外気浴も、自然を大切にしている「The Hive」ならではでしたね。
「そうですね。目線から見えるものがすべて心地よかった。水風呂を出ですぐ目の前にもうととのい椅子があって、木製の椅子全部にオットマンがついているんです。足をのばせるので、全身だら~ん、って脱力してました。何セット目からかは、マンホールを抜けた上にある天然芝で横になっていました。これがほんとに最高で、すべてがファッてなくなっていくような感覚……自分を解放することができました。芝生の上に横になることって、大人になってからあまりないじゃないですか。だからか、太陽の光、鳥の鳴き声、風、そういうものに改めて気付ける場所でした。五感も刺激される仕組みがあったんです」
――洗練されているけれど遊び心もありますよね
「そうそう、マンホールとか(笑)。建物の中にリビングやキッチンもあるので、みんなで来て、サウナが好きな人はサウナに入ればいいし、入らない人は日向ぼっこをしたりBBQをしたり、リビングでのんびりしてもいいし、サウナを好きじゃない人とも楽しく過ごせる施設ですね。 家族で来てもいいし、友達や恋人と来ても、誰と来ても楽しめる施設。僕も次は友達と宿泊して、みんなでサウナを楽しんで、芝生に寝ころびながら星空を眺めたいです」
まるで映画の世界。ノスタルジーな景観に癒された「越中八尾」
――富山サ旅ですが、サウナ以外はどこが印象的でしたか?
「うーん、たくさんあるなぁ。移動のバスから見える立山連峰もきれいでしたし、富山駅前の路面電車が走っている感じもすごく良かったし、富山は「日常の普通の風景」がきれいでした。
撮影をした越中八尾は、街が統一された美しさがあり特に印象的でしたね。ちょっとした小路とかも画になりました。そのなかに、石階段がずーっと上まで続いているところがあって、その樹木の具合とか、雰囲気がすごく良かった。懐かしいんだけど、神々しい感じで。石階段で撮影をしていたら地元の小学生たちが『こんにちはー』って言いながら通り過ぎて行ったんです……なんか、その光景が、もう、映画の世界にいるようでした」
――見知らぬ大人たちに挨拶をしてくれたのもうれしかったですよね。
「ほんとそうですね。古き良き日本の姿というか。心があらわれました(笑)。古き良きといえば、八尾の街並みも良かったです。見渡す限り石畳の道が続いていて、その両側には日本家屋が並んでいて、町全体が美しい景観でした」
――富山県は「サウナ」も「旅」も大満足でしたか?
「『スパ・アルプス』は日常の中の最大のぜいたく、『The Hive』は非日常を味わえる最高のぜいたくでした。双極にあるふたつの施設を体験できてほんとに最高でした。ご飯もおいしいし、出会う人みんなあたたかい。いいサウナ、いいごはん、いい人、で心が健康になった旅でした! 大満足です!」
【友野一希(ともの・かずき)】
1998年5月15日生まれ。大阪府出身。4歳よりスケートを始め、ジュニア時代から表現力の豊かさには高い評価が。見ていて楽しくなるその演技で“氷上のエンターテイナー”“浪速のエンターテイナー”と称されることも。2022-23シーズンは、全日本選手権で3位。世界選手権6位。今シーズンもさらなる高みを目指す。
撮影協力
The Hive
■住所:富山県中新川郡立山町日中上野18
■営業時間:デイユース利用=前11:00~後1:30の1組限定 ※宿泊予約がない日のみ前7:00~9:30、前11:00~後1:30、後4:00~後6:30、後7:00~9:00の各回1組限定で利用可能
詳しくは公式サイト(https://the-hive.jp/)をご覧ください
撮影/佐藤佑一
ヘアメーク/住本彩