ただ者ではないアウフギーサーと出会う
――次はどちらのサウナ室へ?
「 座席や壁まで黒一色に統一されて、音もない中で無心でセルフロウリュが味わえるMUSTA(ムスタ)もよかったですし、木のベッドで寝転がれるBED SAUNA(ベッドサウナ)もリラックスできました。BED SAUNAのベッドがは足を上げられる造りになっていて、上半身だけでなく足元もしっかりと温まる。足元に熱を感じて、それが徐々に全身を巡ってきて心拍数も上がっていく……自分の体の中で何が起こっているのかがちゃんとわかる、今までにないアプローチのサウナでした」
――4つめは、本場フィンランドから輸入した希少性の高いケロ材を使用したウィスキング専用サウナ室KELO(ケロ)。
「WOODSにもあるKELO(ケロ)では、前回と同じくセルフロウリュを楽しませてもらいました。そこから夜の9時半、いよいよアウフグースが始まるということで、“やった、あの素晴らしい音質でアウフグースが味わえるんだ!”って、3人勇んで『SOUND』へ向かって。柴田健太郎さんという方がアウフグースを担当されたんですけど、『よろしくお願いします』という最初のあいさつからして“この人はできる!”って。どんな分野でも普段の佇まいから“ただ者ではない”ことがわかる時ってあると思うんですけど、柴田さんも“この人はアウフグースに誇りをもっている人だ”って直感しました」
――柴田さんは日本各地で熱波を起こすアウフギーサーであり、「渋谷SAUNAS」のマネジャーでもあります。いかがでしたか? その道の達人のアウフグースは。
「心地いいのはもちろんですが、柴田さんのアウフグースが衝撃的すぎて感動すら覚えました。『柴田と申します。今、桜が満開ですので、桜にまつわる曲を3曲選びました』、『アロマもそれにちなんだものを用意しました』という心配りから始まり。“お客さんに楽しんでほしい”という思いはアウフグースをされる方みなさんに共通するところなんでしょうけど、すべてがひと味違うと思いました」
卒業式なら泣いてた⁉ 超絶技巧とは?
――アウフグースとは、蒸気を発生させ、室内をタオルでかくはんすることで、体感温度の上昇とともにアロマの香りと風を楽しむドイツサウナ発祥のプログラムですが、どのあたりが他のアウフギーサーと“ひと味”違ったのでしょう?
「派手さはないけれど、確実に心地いい風を届けてくれる職人系と、タオルを回したりするパフォーマンス系、お客さんとコール&レスポンスしたりするエンターテインメント系があるとすれば、“もう一つ存在するんだ”と思いました。何がすごいって、その美しさ! 芸術派とでも言いますか……音とかも全部気を配っているんでしょうね。柴田さんはロウリュするでも姿勢とか手の角度とか、あらゆる所作が美しいんです。音楽に合わせて舞う。パッと見た時、“これってフィギュアじゃん!”ってシンパシーを覚えるような」
――どのあたりがすごかったですか?
「サウナストーンにかけた水しぶきが、桜の花びらが散っているような錯覚を起こさせるんですよ。冗談抜きで、卒業式でやってもらったら泣くな~と思ったくらい。そこから音楽に合わせてアウフグースが進むんですけど、単に風を送るだけではなく、確実に演技もしていると感じました。常に見られていることを意識されていて、手の指の先から足先まで抜いた動きがまったくない。他の方とは一線を画す素晴らしい表現力だと思いました」
――かつてXで、柴田さんは「アウフグースは多感覚芸術です! 音楽や言葉で聴覚を、アロマで嗅覚を、技や世界観で視覚を、蒸気や風で触覚を 沢山の人にこの感動を伝えるため、一杯尽くしていこうと思います」と自己紹介。巷では「技巧派魅惑系」と呼ばれているそう。
「タオルさばきにしても、所作が美しくて。クルクルと自身が回るところ、ジャンプして着地するところなんかも、フィギュアと同じだなと。後半調子が上がって、どんどん技が決まっていくところもスケーターのようでした」
――一つの物事に向き合い極めたプロ同士、通じるものがあるんですね。
「アウフグースが終わって、僕ら3人、思わずスタンディングオベーションしましたから。同じ演者側だから、終演後にはいい雰囲気を作りたい。これだけこの人が本気で挑んでいるのだから、座ったままパチパチパチ(拍手)くらいじゃ申し訳ないなと。かと言って“ワーッ!”って(拳を振り上げて)盛り上げるのも違うなと思ったので、感謝の念を込めて見送る感じ。大げさではなく、桜のはかなさ、春の訪れを感じる風を送っていただけた。“魅せる”アウフグースに初めて出会いました」
――2023-24シーズン終了直後に訪れた「SAUNAS」。1年のいい締めくくりになったのでは?
「卒業式の思い出がよみがえってくる、いい夜でした。最高のサウナの熱さ、水風呂の冷たさ、音質と香り、そして演技、演舞。柴田さんのおかげで『SAUNAS』が完成しました、どうもありがとうございました!」
終盤は、柴田さんの魅力をとめどなく語ってくれた友野さん。2026年のオリンピックを見据え、さらなる飛躍を誓うエンターテイナーにとって「SAUNAS」は、大きな刺激となったようです。
【友野一希(ともの・かずき)】
1998年5月15日生まれ。大阪府出身。
4歳よりスケートを始め、ジュニア時代から表現力の豊かさには高い評価が。見ていて楽しくなるその演技で“氷上のエンターテイナー”“浪速のエンターテイナー”と称されることも。2023-24シーズンはシリーズ第4戦中国杯第4位。1月に行われた「国民スポーツ大会」ではショート・フリーで逆転優勝を。オフシーズン中は、さまさまなアイスショーに出演。エンターテイナーぶりを発揮する。上野芝スケートクラブ所属。
取材・文/橋本達典
写真はすべて友野さん提供
お話にでてきた施設
渋谷SAUNAS
■住所:東京都渋谷区桜丘町18-9
■営業時間:前8:00~深0:00 休=不定
■料金:入場料150分 平日=3,080円 土日祝・特定日=3,850円、朝割(平日80分)=1,980円、夜割(平日60分)=1,980円、延長:1時間+880円、2時間+1,760円、3時間+2,420円、フリー延長+3,080円
※18歳未満入館不可
そのほか詳しくは公式HP(https://saunas-saunas.com/guide)をご確認ください。