南葛SCプロモ部長・天野春果/南葛サウナクラブ第一期生選手の卒業⑳

モイ~。

本日も祖師ヶ谷大蔵駅前にあるマイホームサウナ「自問自答」の休憩椅子にに横たわりながらこの原稿をスマホでポチポチ書いています。

早いものでもう12月。今年もあとジングルベルと除夜の鐘を聞いておしまいです。この時期ってサッカー界にとっては気がめちゃくちゃ重いんですよ。なぜかって? それは、今シーズン一緒に戦ってきた選手たちとお別れの季節だからです。現状、春秋制の試合日程で進んでいるJリーグや、僕がプロモーション部長を務める関東サッカーリーグ所属の南葛SCは、例年、この11~12月に来季クラブと契約をしない選手の発表を行います。

今季の選手が一人も辞めず翌年もそのままの編成で戦うといったことは100%ありません。学生の時だってサッカー部の最上級生が卒業で抜ければ翌年違うメンバーになることは当たり前でしたが、学生時のお別れは最初から誰が卒業するか分かっているため気持ち的には覚悟ができています。ただ、Jリーグや関東リーグの選手たちはクラブとの「契約」関係にあり、クラブから翌年契約しないと言われれば、そこでクラブを離れなければなりません。俗に言う「0提示」ってやつですね。そこら辺の厳しさは、年末にTBSで放送されている「プロ野球戦力外通告・クビを宣告された男達」っていう番組で見た人も多いのではないでしょうか。

クラブから「0提示」を受けなくても、他のクラブからオファーがきて「移籍」する選手、0提示を受けなくても本人自ら「引退」を選択してセカンドキャリアに進む選手もいます。

どんな理由であれ1年間共にしてきた選手たちとの別れは寂しいものです。特に南葛SCは今年2月にプロモーション部長として加入して最初に触れた選手たちですからね。いきなり現れたオジさんアマノが「遊び心をもった新しい地域活動の一環として選手が熱波師をやる企画をオレやりたいんだ!」と訴えて、それに「やろうやろう!」「おもしろそう!」「それが地域密着の1つになるんなら」と乗っかってきてくれた選手たちですからね。想い入れのある選手たちとの別れはホントつらいです。

今号では今年立ち上げた南葛サウナクラブの活動振り返りと選手メンバーへの想い、今後の展望についてお話ししたいと思います。

南葛サウナクラブがあったから南葛SCでの活動にスムーズに入れました。サウナの存在が全てをととのえてくれる。言い過ぎか(笑)
会って間もない選手でもサウナハットさえ被ってれば「サウナ好きなプロモ部長」としてすぐ認識してもらえる。選手との距離も縮めることのできる魔法の帽子
目次

サウナとスポーツの親和性

何度かこのSAUNA BROS.WEB連載の中でも南葛サウナクラブのことは触れてきましたが、あらためて、なぜ選手が熱波師を行う活動をしようと思ったのか詳しく話したいと思います。

一番のきっかけは、2022年にサウナ大国・フィンランドを訪れたことにあります。僕のポジティブクレイジーアミーゴ・フィンランド政府観光局の沼田晃一さんに先導してもらって体感したフィンランドでのサウナにその答えがあります。フィンランドのサウナには僕がスポーツと地域の関係に一番求めている”核”があったんですよ。その核って何かというと「サウナが人と人を温かく柔らかく繋ぐコミュニティー形成のハブ」になっているということです。性別も年齢も役職も関係なく、人間の心が穏やかな状態で触れ合い深められる場っていうんですかね。スポーツもサウナと同じように同じ競技が好きだったり、応援しているチームが一緒というだけで知らない人同士でも一瞬で肩を組んだり抱き合ったりして喜怒哀楽を共有できるじゃないですか。SAUNAとSPORTSは頭文字が「S」で一緒というだけでなく親和性や共通項がホントあると思ってます。

そんな、スポーツと親和性のあるサウナならサウナの持つコミュニティー形成に役立つ部分を、スポーツと掛け合わせたらとてつもない効果があるんではないか、と思ったことがこの企画の原点です。

この企画アイデア自体は、南葛SCに加入する前に既に僕の頭の中にはありました。当初展開する場所として考えていたのは、2023年末まで活動していた川崎フロンターレでした。川崎市には大人気サウナ施設として川崎南部に「朝日湯源泉 ゆいる」があります。ゆいるは、僕も大大大好きサウナ施設のためプライベートで何回も利用しています。熱波にも力を入れていて1時間おきに多種多様な熱波師が楽しい熱波パフォーマンスで盛り上げています。ゆいる支配人とはフロンターレのホームゲームイベント「Finlandランド」を実施する際、広報PRで協力してもらっていて繋がりもあったので、実はなんとこの企画の提案書を書きあげており、相談にいこうかと思っていたぐらいです。

また、川崎の場合、川崎浴場組合とも仲良くしていたので銭湯サウナでの展開も面白いなあと考えていました。ただ、2023年頭にはあと1シーズン活動して川崎を退職することを決めていたので、残された1年間で選手による熱波活動をオーソライズするのは超困難だなと。もし仮にカタチにできてもその後発展させていくところまで自分が関わることはできないから中途半端になってしまう。あーこの企画はとりあえずお蔵入りかな、と考えていました。

そんな中、フロンターレ退職後色んな縁もあって南葛SCプロモーション部長に就任。自分の中でお蔵入りと考えていたアイデアをカタチにする機会が巡ってきました! 南葛SCに参画すると決まってまず最初にネットで検索したのが選手プロフィールとかではなく「葛飾区」「サウナ」でしたね(笑)。

すると出てきたサウナ施設が2店舗あり、その内の一つが「サウナ&カプセルホテル レインボー新小岩店」でした。

レインボー本八幡店は「サウナ室が激熱」とテレビで見たことがあって知っていたんですが、新小岩店は知らなかったんですね。そこで川崎フロンターレに在籍経験があり現在南葛SCで選手をしている楠神順平(今季で引退)に連絡をして新小岩エリアを案内してもらいました。この時、まだ南葛SCに正式に加わる前でしたけど(笑)。スーパーラッキーだったのは、レインボー新小岩店が南葛SCのスポンサーをしているため、アマノがダイレクトにレインボーのスタッフを紹介してもらえたことですね。

選手の熱波活動の企画を実現するためには、まず活動拠点がなければ実現できない。南葛SCに正式加入してもいないし、南葛SCの選手たちとも顔を合わせていないにも関わらず、いきなり勝手に正念場(笑)!

ここを突破できなければ先に進まない。結構な緊張感をもって順平にレインボーの副支配人・タケさんこと竹内さんを紹介してもらいましたね。

「2月から南葛SCのプロモーション部長に就任するサウナ大好き野郎・アマノと言います。会っていきなりなのですが、どうしても南葛SCとレインボーでやりたいことがありまして話聞いてもらっていいですか?」と対面して10秒のタケさんにすぐ企画提案しました(笑)。

正直、非常識と言えば非常識。無礼者と言えば無礼者。タケさんがどんな人かサウナレインボーの熱波師事情もちゃんと把握せずにいきなり提案ですからね。でも何でしょう、サウナ業界の人たちってホント心が広いというか温かいというか好奇心の塊というか、こんな僕の提案さえも動揺することなくちゃんと聞いてくれる度量があります(自分本位にそう思ってます)。タケさんはニヤッと不敵な笑みを浮かべて「面白いですねえ、やりましょう」と即返答快諾してくれました。

新小岩の駅近くにサウナの名店ながらチャレンジングな活動を拒まないレインボー新小岩店があったのも大きいです
南葛SCのスポンサーを地元サウナ施設がやっている奇跡。いや、運命!
前列中央の黒い服を着ているのがレインボー副支配人のタケさん。こんなオモロイ人がサウナ施設にいて面白くならない訳がない(笑)。出会いこそ人生の全てですねホント

南葛サウナクラブに手を挙げた愛すべき13人の選手

所属選手たちにまだ対面もしていないのに選手が熱波活動をする了承をとってしまったアマノ。活動施設を確保しても選手たちが乗ってこなければこの企画はカタチにできません。

僕自身も今までカタチにしたことのない企画なので前例がないため、その企画がちゃんと成立するかどんな効果をもたらすかなどを選手たちに実例をもって示すことができないわけです。

でも僕が今まで実現してきた前例のない企画にはすべて共通点があるんです。

それは、実現前でもその実施している風景やその場での会話、音楽、空気感が事細かく頭の中でイメージできる、ということです。川崎時代、南極とスタジアムを繋いで交信した時も、陸上トラックをフォーミュラカーが爆走する時も選手がバナナを販促する時も、川崎の子供たちがフロンターレの算数ドリル教材を使って勉強する時も。これが面白くて前例がなくてもその「実施画」が事前にハッキリ頭にイメージできるものは周りから「無理」「不可能」「無謀」と言われても実現できるという!

今年で言えば、6月に川崎市制100周年の際に実施したブルーインパルスの展示飛行に合わせて地元川崎生まれの3ピースバンド「SHISHAMO」の名曲「明日も」を演奏する企画ですね。これも事前にその瞬間の「画」が頭に浮かんでいました。

南葛SCの企画で言えば9月に実施したホームゲームイベント「なんかつ寅さんランド」。これも事前にイベント会場の空気感みたいなものはイメージできていたので、そのイメージに近づけるため「逆算」して準備を進めるといったかんじです。

12月14日に実施される中村憲剛の引退試合は僕が代表を務める会社TWSで企画・演出・プロモーションしていますが、こちらも既に当日のイメージはハッキリ浮かんでいるので、その「画」にむけて細かい詰めを現在しています。

前置きが長くなりましたが、この南葛サウナクラブの活動もアマノの頭の中には「実施画」がハッキリ浮かんでいたので、南葛SCの選手たちに自信をもって企画説明をしました。ただ、この企画に乗ってくるかこないかは選手たちの感じ方次第なので「いったい何人の選手がのってきてくれるか」は正直不安でした。

でもそんな不安をかき消すように「13人」の選手が「南葛熱波やります」と手を挙げてくれました。これはホント嬉しかった。今年イチ嬉しかった出来事ですね。

プロ熱波師・大森熱狼さん、安寺沢茜さんの指導を受けた話は既に以前お伝えしたので割愛しますが、熱波トレーニングや実際に熱波師としてレインボーでデビューするまで、この13人の選手たちとはホント多くの時間を共有しました。

今年7月にデビューして最初は緊張もあり全然ととのう風を送れなかった選手たちが、利用者の皆さんとコミュニケーションをとりながら最高な熱波を送る姿は、僕がイメージした「画」を大きく上回るものでした。自分のイメージ以上の「画」が実際に見れたときの感動は本当に大きいです。すげえな、南葛SCの選手たち、すげえな南葛サウナクラブの13人!

最初のトレーニングは実際にレインボーの熱波を浴びるところからスタート。最初は「こんな熱い中で扇ぐの無理!」なんて声もありました
プロ熱波師の安寺沢茜さんから熱波指導を受ける選手たち。「遊びではなく遊び心をもった地域活動にしたいのでビシビシ指導してください!」と伝え、ホントにビシビシしてくれました(笑)
プロ熱波師の大森熱狼さんに練習グランドまで来ていただき練習後の選手たちに熱血指導
今季で退団する宮澤選手(左)と新井選手(右)
実践デビュー当初は「クソ風」と揶揄されていましたが、回数を重ねるごとに腕をあげてサウナ室内を盛り上げていました。2人がいなくなるのは寂しいね
今季で現役引退をする楠神選手。本来、サウナは苦手。でも「南葛SCが盛り上がることならやります」と熱さに負けず過酷な熱波トレーニングもやり遂げました。引退してサウナクラブも退団……と思いきや、クラブスタッフとして残るため、サウナクラブ活動も来季継続!

またどこかのサウナで

2024シーズン、南葛SCは大所帯で所属選手は計43人もいたんですね。その内、南葛サウナクラブに参加してくれた選手は13人。そしてその13人の内、実に9人の選手が今季でクラブを去ります。約半年間のトレーニングを経て、4カ月間の熱波師活動。ここからもっともっと熱波やトークに磨きをかけてサウナ×サッカーの2大「サ界」コラボで旋風ならぬ熱風を巻き起こそうと思っていたのに……。でもこの別ればかりはスポーツチームの宿命なのでしょうがないです。

南葛SC加入初年度の僕がスムーズにクラブに馴染めたのはこの選手たちのおかげでもあるので心から感謝してます。普段は熱波を「受ける」立場でサウナへ行くのが大好きなメンバーなので、またどこかのサウナでこの選手たちと一緒に入れたらなと思ってます。

残るメンバーは4人だけになってしまいましたけど、既に「第二期生」のサウナクラブ加入選手のリクルートを実施中。

チーム作りと一緒で南葛サウナクラブもまた新たなメンバーと最高なととのい風を提供できるように来季準備をしていきます。実は新しい企画展開の「画」も既に浮かんでいるのでお楽しみに!

それではモイモイ~!

第一期生のサウナクラブメンバーと記念撮影。クラブの発展のためどんな良い企画を考えついても、それを一緒に活動してくれる選手たちがいなければ机上の空論。選手たちには最大の感謝と愛情を持って「ありがとう」と言いたいですね

天野春果(あまのはるか)
東京都出身。1993年からワシントン大学でスポーツマネジメントを学ぶ。帰国後は富士通川崎フットボール(現川崎フロンターレ)に就職。以降、”J最強企画屋”としてサポーターに愛されてきた。27年間勤めた川崎フロンターレを退社後、新会社Two Wheel Sports(略してTWS)を設立。代表取締役社長に就任した。
※天野春果連載「企画屋アマノ〜アイデアのととのえ方〜」はこちらから

自問自答 祖師ヶ谷大蔵店
■住所:東京都世田谷区祖師谷3丁目32−14 YAMATOYA BLD 1F
■営業時間:24時間営業
※男性専用、会員制のサウナ施設
※その他詳細はこちらから

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