ととのえ親方を直撃! 「遊び心を大切に、とにかく面白いものを!!」
黒田さんに続いて、もう一人のキーパーソンにお話をうかがってみましょう。まさに前ページで名前があがった、ととのえ親方こと、サウナクリエイティブ集団「TTNE」の松尾大さんです。
――この「TOTOPA」。とくに男性フロアの3つのサウナ室は、これまでに経験したことのないような感覚が味わえてとても楽しいのですが……親方は今回のオファーを受けたとき、最初にどのような感想を持たれて、何から始めようと思われたんですか。
「率直に言えばワクワクしましたよね。面白いなぁ、って。そもそも公園の中に造られるサウナ施設ですからね。“遊び心”みたいな……ほら、公園って遊具なんかもあって、楽しいところじゃないですか。そういう気分みたいなものも盛り込めたらいいなっていうのは最初に思いました。
だから“気持ちよさ”や“癒し”などの、サウナにとって大事なものはきちんと尊重した上で、そういう“遊び心”みたいなものをどう出せるか。
めちゃくちゃ楽しみながら考えさせてもらいました(笑)」
――男性フロアの3つのサウナ室。「左(サ)室」「右(ウ)室」「ナ室」は、それぞれ趣きが異なります。この、ガラッと違うコンセプトはどこから生まれたんですか?
「実はね、最初から3つに分けて考えたわけではなくて、もともとは普通にデカい1つのサウナ室っていうところからスタートはしてるんです。ただ、新しい体験を提供したいという思いは東京建物さんにも僕の方にもあって、『だったら分割して、多様な体験ができる形にしてみようか』となったんですよね。
そのとき、その少し前に(クリエイティブディレクターの)秋山具義さんが僕とサウナに入ってる時に言っていた一言を思い出したんです。『左(サ)、右(ウ)、ナっていう3つのサウナ室があったら面白いよね。それで、“左”は左脳を、“右”は右脳を刺激する、みたいなサウナ室にしたりしてさ。出来ないかなぁ……』っていう。
僕もなんとなく『いいな』と思って、それが記憶に残っていて。それですぐに具義さんに連絡したんです。『あの時のアイデアをやりたいんですけど、一緒にやりませんか?』って」
サウナに新しい概念=デザインが加わり、楽しさだけでなく新感覚も生まれた
――それで秋山さんも「TOTOPA」プロジェクトにジョインしてもらったんですね。
「そう。それで実際にイメージをあらためて膨らませて、デザインに落とし込んだんですよね」
――そうやって親方は、常にご自分でもアイデアを考えたり、アンテナを張っていらっしゃるんですよね。そういう引き出しみたいなものは他にもたくさんあるんですか?
「引き出しっていうほどのものじゃないけど、日頃から面白いもの、カッコいいものをつくりたいって思いながらサウナに入ってはいるよね(笑)。だからそういう交流とか積み重ねはいろいろあります。
この『TOTOPA』は、(キックオフから)だいたい2年くらいかな。それだけ時間をかけたんだけど、新しいものができたと思ってます。本当に楽しかったですよ(笑)」
――新しいもの。
「そう。日本にはいいサウナがたくさんあって素晴らしいんだけど、“デザイン”の概念が反映されているところって、実はまだまだ少ないと思うんですよ。その点で、ここ(TOTOPA)は、すごく面白くつくれたなと。完全にデザイン(の概念)を色濃く入れられましたから。
僕だけじゃなく、いろいろな人がいろんなサウナをつくっているけど、ここが出来たことで、またさらに“その先”みたく、広がりが出てきたら素晴らしいよね」
――おっしゃるように「デザイン」によって、どこか不思議な新しい感覚が味わえるということに気づかせてもらいました。
「そうでしょう? なんてね(笑)」
――親方の中でも手応えがあると思うのですが、たとえば今回の3つのサウナ室の中で最もオススメというか、体験してほしいサウナ室はどれになりますか?
「もちろん全部ですよ(笑)。全部なんだけど……あえて言えば『左室』は世界的にもあまりないデザインと感覚のサウナ室だと思いますね。
サウナってやっぱり赤というか暖色系の照明にしたくなるんですけど、『左脳を刺激する』っていうコンセプトから、真逆の青の光にしてみた。そこに直線というかグリッド(格子状の線)を効果的に添えるかたちでね。
3つの中でも一番アツい部屋なのに、寒色系でクールだから……本当に不思議な感覚に陥りますよね」
――はい。どこかバグります。鳴っている音楽や座面の背の部分が鏡張りに鳴っているのも含めて。
「エッジが効いているこの『TOTOPA』でも、象徴的な空間になったよね」