2019年2月、長野県野上水内郡信濃町野尻湖畔に誕生した完全予約制のアウトドア×サウナ施設「The Sauna」。サウナの質、サービスはもちろん、都会で忘れかけた“普遍的な”幸せを求めて、連日全国から大勢の人が訪れる「The Sauna」に、先ごろ待望の5号棟「ヴィーシ-Viisi-」が完成。これまで「The Sauna」には、1号棟「ユクシ -Yksi-」、2号棟「カクシ -Kaksi-」、3号棟「コルメ -Kolme- 」、4号棟「ネリャ -Neljä-」の4つのサウナがありました。今回は、5番目となるため、とことん”五角形”にこだわった新サウナ棟はいかにして作られたのでしょうか? 5号棟「ヴィーシ-Viisi-」を制作したサラマンダー小野さんにお話をお聞きしました。SAUNA BROS.vol.7では載せきれなかったエピソードをご紹介します!
「The Sauna」でサウナを作ることへの葛藤
――「The Sauna」のサウナといえば、これまでは支配人の野田クラクションべベーさんが手がけていました。5号棟は小野さんが制作を担当されることに。初めてのサウナ制作、ご苦労も多かったと思います。
「それはもう……ありましたね(笑)。まさか自分がサウナを作ることになるとは思わなかったですし、正直作りたいという欲求もなかったです。何しろ初めての経験だったので試行錯誤の連続でした」
――「The Sauna」のシンボルである1号棟「ユクシ-Yksi-」が1番目にして、ある程度の完成形でそこを超える難しさもありましたか?
「そうですね。ただ、『超える』というよりかは、『The Sauna』にある4棟のサウナとは同じものにはしないように、ということはを念頭においていました。その上で、まずはラフ画を描きました。描いていて思ったのは、意外と自分が作りたいサウナ像があったんだな~ということが分かりました(笑)。
制作を任された当初は正直、『なんで自分なんだろう。自分は、The Saunaにあるサウナをより良くしていきたい』という思いの方が強くて……。制作に対して葛藤していました。」
ーー葛藤の中で生まれた理想のサウナはどのようなものでしたか?
「ラフを描いていたらいろいろやりたいことがでてきたのですが、1番は『よりロウリュを楽しめるサウナ』でした。これをコンセプトに制作に取りかかりました。あれだけ作ることに葛藤して悩んでいたのに、やりたいことはどんどん出てくるし、とにかく早くサウナを作りたくて仕方なかったですね(笑)」
“5”だけではない随所にこだわりが散りばめられたサウナ
――はやく作りたくて仕方なかった5号棟『ヴィーシ』。オープンして周りの反応やお客さまの評判はいかがですか?
「ロウリュに関しては、他の棟に入られたお客さまも繊細な湿度の違いや酸素の量など感じていただいているようです。こだわってよかったな、と率直にうれしく思いました。
あとは水風呂ですね。ずっと憧れだった、水が湧き出てくるような……泉みたいな水風呂が欲しくて岩風呂風のものを作ったんですけど、おかげさまでそちらも好評をいただいています。実は水風呂のイメージはサウナよりも先に固まっていました」
――ロウリュの話で言うと、サウナ室内にはFresh Airダクトが設置されました。
「室内に新鮮な空気を送り込むこのダクトを設置したことによって、ロウリュの時も呼吸しやすくなっています。サウナストーンが熱せられた時の蒸気に酸素がたくさん含まれるので、息苦しさをあまり感じないんです。天井には、蒸気をより効率的に人に当てるための板(パチンコ板)も設置しました。
さらに、輻射熱を抑えるシステムも導入して、薪を炊き続けてもサウナ室が熱くなりすぎず、なおかつサウナストーンは熱々の状態を保てる工夫もしました。ほかにも二重煙突を設置して、煙突からの輻射熱を抑えています」
――サウナストーブは、フィンランド製の「NARVI NC 24を」導入。
「全体が遮熱板で覆われていて、ストーブ自体の輻射熱を抑えつつ、サウナストーンをしっかり温める構造になっています。これまでの『The Sauna』の4棟は煙突からの熱も効率良くサウナ室に広げていましたが、『ヴィ―ジ』そこをあえて抑えました。それも“よりロウリュを楽しめるサウナ”に近づけるためです」
――そしてお客様の評判も高かった水風呂。岩風呂風作りが特徴的です。
「渓流釣りが好きなので、再現したいなと思いました。僕の趣味も入っています(笑)。再現するために深さ130㎝の深水風呂と浅水風呂を2つ作ってみました。あと、ログサウナは木の印象が強いので、石や岩を置きたかったこともあります。使用した岩は千曲川自然石と諏訪鉄平石で、どちらも長野県産です」
――深い方の水風呂には滝に見立てた”打たせ湯”ならぬ”打たせ水”も。
「打たせ水、確かに(笑)。言葉を借りるならば、この”打たせ水”はどうしても欲しくて作りました。渓流の滝をイメージしていて、水はちょうど頭に当たるように計算しています。深い方の水風呂は飛び込むような、浅い方は寝転がれるようなイメージ。『The Sauna』にはそうした水風呂がなかったので、こちらも差別化できたかなと思っています」
――他との差別化というところでは、サウナ棟の形状が五角形というところも一線を画していますね。
「小中高とサッカーをやってきて、背番号がずっと5番だったので自然と“5”という数字が好きになって(※ちなみに結婚記念日は5月7日。7は奥さまの好きな数字なんだとか)。何の運命か5号棟の担当になって。差別化を図るためにも他と形を変えてみようと考えた時に、“じゃあ5番目だから五角形にしよう”と思いつきました」
次回の後編では、完成までの紆余曲折と今後の展望、そして「The Sauna」が掲げる“BRIGHT UP LIFE(人生を明るくする)”に込められた思いについてお伺いしました。
The Sauna
■住所: 長野県上水内郡信濃町野尻379-2 ゲストハウスLAMP野尻湖内
■営業時間:水曜日〜月曜日=前8:30〜11:30、後0:15〜3:15、後4:00〜7:00。※事前予約制、3時間貸切制
■定休日:火曜日
■料金:平日=35,000円、休日=38,000円
※その他詳細は公式HP(https://lampinc.co.jp/nojiriko/sauna/)からご確認ください
「SAUNA BROS.vol.7」
■発売日:2023年12月13日(水) ※一部、発売日が異なる地域がございます
■定価:1,137円
SAUNA BROS.STORE(https://saunabros.stores.jp)でも販売中! 全国の書店、ネット書店(honto:https://honto.jp/netstore/pd-book_32948979.html)などでも購入できます。
撮影/長谷繁郎
取材・文/橋本達典