一度は諦めた!? 曲折の先に見えた「ヴィーシ」誕生の光明とは

日本中のサウナ好きが「一度は行ってみたい」と憧れる「The Sauna」に2023年7月、待望の5号棟「ヴィーシ-Viisi-」が完成。前編では気になる「ヴィーシ-Viisi-」のスペックなどを制作者のサラマンダー小野さんに語っていただきました。後編では、引き続き、完成までの紆余曲折と今後の展望、そしてThe Sauna掲げる“BRIGHT UP LIFE(人生を明るくする)”に込められた意味をお聞きしました。SAUNA BROS.vol.7では載せきれなかったエピソードをご紹介します!

目次

五角形のサウナはできない⁉︎ それでも作り上げた奇跡のサウナ

――5番目のサウナ「ヴィーシ」をつくるにあたって、まずは「ロウリュが楽しめるサウナ」は前提にあって、その次に水風呂のイメージが固まって……とおっしゃっていました(※前編参照)。「五角形にしよう!」と思い浮かんだ時に、全体像が見えた感じですか?

「そうですね。五角形が決まって、そこからも、たくさんアイデアが浮かんできました。五角形のログサウナ自体は周りのスタッフや仲間に相談したり、いろんな建築物を見てはインプットをして、少しずつ生み出していった感じです。ただ、思いつきで五角形と言ったまではよかったのですが、その後めちゃくちゃ苦労しました(笑)」

――いざ設計、そして施工の段階に。どんな点が一番苦労をしましたか?

「五角形で作りたいと設計士の方にお願いをしたところ、『五角形は成り立ちません』と言われたんです。ログサウナは木と木を積み重ね上げて作っていくんですけど、奇数では最後に段数が合わなくなるようで、理論上は無理だと。工期もありましたし、予算のこともあったので、『わ~、形を変えなきゃ。ゼロからやり直しか~』って背筋が凍りましたね(笑)」

サウナ室裏側にある煙突。五角形の設計から1番複雑な作りになったそう

――その窮地をどうやって切り抜けたのでしょうか。

「これまでのThe Saunaのサウナを作っていただいている工務店さんに相談をしたら『職人技でなんとかなるよ』と言ってくれて、本当に助かりました。でも、ここからがまた苦労の連続で……。五角形は頂点の角度は108度になるのですが、いざ作業をする時に、この108度の壁にぶつかってしまったんです。特に内装は僕も完成したイメージが沸きずらくなってしまいました。職人さんも、四角形であれば90度でそのまま使える木材などをすべて108度という微妙な角度に調整しきゃいけなくて……。ベンチの形状もストーブを置く場所も悩みましたし、煙突は4棟あるサウナの中で一番複雑な構造になりました。五角形と言ったばかりに職人さんたちにはご迷惑をおかけしました」

苦楽を共にした職人さんから最後、「ウッドデッキも五角形にしては?」の提案が!

――そういえば、小野さんが学生の頃やっていたサッカーのボールも五角形の組み合わせですね。

「よくよく考えたらそうなんですよね。だから途中からは、これは”運命だ、もう五角形でやるしかない!”って。必ず五角形で完成させるという使命感のようなものに突き動かされていました。ちなみに、サウナ棟前のウッドデッキも五角形です。『せっかくここまでやったんだからこだわろうよ』と職人さんから言っていただいたので、そのアイデア採用させてもらいました」

”人生を明るくする”。誰もが楽しめるサウナをつくりたい

今までなかった雨よけのスペース! 天候関係なく楽しめるだけなく、没入感も味わえます

――小野さんがサウナをつくるにあたって“よりロウリュを楽しめるサウナ”、“泉みたいな水風呂”(前編参照)、“五角形のサウナ棟”をイメージされたとお伺いしていますが、そのほかに、こだわった部分はどこですか?

「雨よけスペースですね。タープを張っている棟もあるんですけど、もっと本格的な雨よけ、雪よけのスペースが欲しくて。C.W.二コルさんが開拓したアンファンの森(※長野県黒姫に荒れ果てた森を二コル氏自らが買取り森の再生を始めた)に行った際ヒントを得て、“サウンド・シェルター”と呼ばれる屋根付きのスペースを作りました。中に座ると、シェルターの構造によって鳥や虫の鳴き声、草木など森の音を全身で感じることができます。雨や雪をしのぐだけではなく、ここ信濃町ならではの自然を感じていただきたいと思って採用しました」

――完成して、今思うことは何でしょう?

「うれしいというより、まだまだこれからだな……という感じです。いろんな壁にブツかって、プランを変更しながら、みんなに助られながら何とか完成に漕ぎつけることができましたが、これからです」

――紆余曲折ありながらも完成した第5のサウナ棟「ヴィ―ジ」。ズバリ何点を付けますか?

「えー、そうですね……70点くらいですかね。水風呂にこだわりすぎて大幅に予算オーバーしたので低めに(笑)。やり切れなかったところもありますし。オープンしてから見えた課題もあります。これから少しずつ自分が思う理想形に近づけたいですね」

――修正したい部分はたくさんあると思いますが、最終的に目指したいところは?

「『ヴィーシ』の制作を任された際にまず思った“BRIGHT UP LIFE”……”人生を明るくする”ということですね。これはウチの会社の理念でもあって、今後はお子さまからお年寄り、身体の不自由な方、みなさんが楽しんでもらえるようにしていきたいと考えています。“どなたでも入れるサウナ=ロウリュを楽しむ”ということをフィンランドへ行った時に気づいて、そこは何とか近い形で実現できたと思います。でも、まだ実現できていないこともたくさんあります。」

自然の中にたたずむ5号棟「ヴィーシ-Viisi-」

ーー実現できていないところ……例えばどんなとこですか?

「車椅子のお客さまがいらっしゃった時に寄り添えていない部分が多々あると思います。みなさんが楽しめるサウナを目指すためにも、サウナ室の座面の高さ形、スロープの設置など改良を重ねたいです」

――みんなが楽しめるサウナ。The Saunaが目指すものにサウナファンも楽しみにされていると思います。最後に、読者にメッセージをお願いします。

「『The Sauna』はまだまだ進化します。ぜひ楽しみにしていてください! あと冬の『The Sauna』でしか見られない特別な景色があります。雪もふわふわで、空も星もこの季節が一番きれいです。ぜひ『The Sauna』を訪れて、そして5号棟『ヴィ―シ』を体験してください!」

後ろから見てもかわいいViisiのくまちゃん♪

The Sauna
■住所: 長野県上水内郡信濃町野尻379-2 ゲストハウスLAMP野尻湖内
■営業時間:水曜〜月曜=前8:30〜11:30、後0:15〜3:15、後4:00〜7:00。※事前予約制、3時間貸切制
■定休日:火曜
■料金:平日=35,000円、休日=38,000円
※その他詳細は公式HP(https://lampinc.co.jp/nojiriko/sauna/)からご確認ください

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